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コロタイプギャラリー通常展示「便利堂コロタイプの現在地」本日より開催

Posted by takumi suzuki on 26.2021 【コロタイプギャラリー】   0 comments   0 trackback
国宝に新指定の「蒙古襲来絵詞」の複製も展示!
2021年7月26日(月)~9月3日(金)@便利堂コロタイプギャラリー

コロタイプの現在地


みなさんこんにちは。お待たせしました。コロタイプギャラリーでは本日より新しい展示がスタートしました! 今回は「コロタイプの現在地」と題して、便利堂のコロタイプがたどってきた道をじっくりとご紹介いたします。展示を担当した清さんに見どころをお聞きしました。


コロタイプの現在地1


―――便利堂は今年の7月で創立135年を迎えました。コロタイプの工房を構えてからはどのくらいになりますか?
1905(明治38)年に開設したので116年目になります。そもそもコロタイプは19世紀中ごろにフランスで生まれ、ドイツで確立された写真の古典印画技法のひとつです。その後、精緻な印刷技法として普及しますが、他の技術の台頭とともに姿を消していきました。そうした中で便利堂はコロタイプの特徴を活かして今に至ります。ただ、当時の技術をそのまま使い続けているかというとそうではありません。116年の間にはいくつもの大きな進化や変化がありました。


コロタイプ 昭和2年1
平台印刷機が並ぶ工房(昭和2年)


―――それはどんな変化でしょう?
大きなところでいうと「動力印刷機の導入」「コロタイプのカラー化」「デジタルへの取り組み」「環境への配慮」、この4つです。振り返ってわかったのは、便利堂は時代の流れを見て、いろんなことにチャレンジしてきたということでした。しかし、どれ一つとして簡単なものはなかったでしょう。日々の実験を繰り返し、技術を時代にあった形に進化させようとする人々の努力なくしては取り入れられなかったはずです。今回の展示では便利堂のコロタイプがどのように変化してきたのかをわかりやすくご紹介したいと思います。


竹さん1
円圧式動力機が並ぶ現在の工房


動力印刷機の導入

―――円圧式の「動力印刷機」はギャラリーからもその姿をご覧いただけますね。
ずらりと並んだ様子は圧巻です。ぜひ、動いているところをご覧いただきたいですね。ただ、この動力印刷機は初めから使用されていたわけではありません。明治期に使われていたのは「手刷り平台印刷機」でした。版にインキを入れ、紙をセットし、プレスする。印刷の工程すべてを人の手でおこなう、アナログのプリント方法です。1936(昭和11)年には《法隆寺金堂壁画》の原寸大複製がこの印刷機で制作されました。このプリントのもとになった写真原板は平成27年に国の重要文化財に指定されました。現在、便利堂が所蔵する原板の一部が京都国立博物館で開催されている「京の国宝」展で展示されています。


法壁2
昭和12年頃(1937)、特設工房(於 大雲院)にて法隆寺金堂壁画原寸大複製の作業風景


―――平台印刷機はいわば原点ですね。そこから動力機への変化は大きかったでしょうね。
そうですね。しかしすべてを一気に入れ替えたわけではなく、しばらくは平台と動力機を平行して使用していました。当時はコロタイプが全盛期でしたから、動力機を作る工場もたくさんあったと思います。昭和30年以降には動力機がメインの印刷機になりました。1995(平成7)年に導入された大判コロタイプ印刷機「Dax」では24×48インチサイズを刷ることができます。工房がスタートした頃からすると、印刷はスピードも精度も大きな進化を遂げてきました。


コロタイプの現在地3
展示1:《法隆寺金堂壁画》原寸大コロタイプ複製(6号壁部分 釈迦如来〔左〕、勢至菩薩〔左〕)、1938年制作


コロタイプのカラー化

―――「コロタイプのカラー化」の研究も進んでいたのでしょうか?
コロタイプにはほかの技法にはない再現性や耐久性があり、便利堂ではそれを存分に活かして美術品のプリントをしていました。しかし、コロタイプは基本的に1色でしか刷れません。原本を精巧に再現する複製を制作するためには、コロタイプによるカラー表現の実現は必須でした。その研究が始まったのは昭和30年以降のことです。


コロタイプの現在地2
展示2:《蒙古襲来絵詞》コロタイプ複製、1994年制作


―――どうやってカラーでの表現ができるようになったんですか?
1色ずつ重ね刷りする木版画を思い浮かべてください。このやり方を参考に、撮影した写真から、色ごとに分解した版を作り、原本の色彩に合わせて調合したインキを1色1色刷り重ねてひとつの絵をプリントしていきます。職人による勘と経験が必要な作業ですが、長い研究期間を経てようやく実用化に至りました。初めて複製で実用化されたのは1966(昭和41)年、《女史箴図巻》(原本 大英博物館蔵)の原寸大完全複製です。この「多色刷コロタイプ」は、現在商業ベースでは世界中で便利堂にしかできない独自の技術です。今回は、先日今年度の国宝新指定に答申がなされた《蒙古襲来絵詞》(原本 宮内庁三の丸尚蔵館)のコロタイプ複製を展示します。作品をご覧いただくとき、「もしこれがモノクロだったら」と想像してみてください。きっと印象はまったく異なるはずです。そう考えると当時、コロタイプのカラー化がどれだけすごい技術開発だったかおわかりいただけると思います。


デジタルへの取り組みと環境への配慮

―――そうするうちに、今度はデジタルの波が押し寄せてきます。
2000年頃からコロタイプでもデジタル技術の導入の取り組みが始まりました。コロタイプの技術はもともとすべての工程が職人の手による、いわばアナログの極みとも呼べるようなものでしたが、一方でデジタル技術でしか実現できない優れた点もたくさんありますよね。アナログとデジタルはどちらも便利堂の未来にとって不可欠なものです。どちらもお互いの不足したところを補いあうものととらえて、時代とともに進んでいく必要性を感じています。


コロタイプの現在地4
展示3:Stephen Gill 《Night Procession》 HARIBAN AWARD 2017最終優秀賞受賞作品(コロタイプ多色刷)、2017年制作


展示1,2はアナログでのコロタイププリントですが、展示3と4はデジタルでのコロタイププリントですね。
―――繊細なアナログレタッチ(製版)による職人技をどのようにデジタル作業に置き換えるのか、便利堂は4半世紀にわたって研究を進めてきました。その間、世の中のデジタル化の流れの中で供給される最前線のデジタルエクイップメントを取り入れながら便利堂コロタイプのデジタル化の方程式を模索してきました。そしてひとつの完成形として自負しているのが、現在の方式です。製版はこのデジタル方式ですが、プリントの工程自体は160年前と変わらない職人のアナログ技術です。「古くて新しい」この表現力は、世界中のアーティストからも注目されています。今回は展示3として、弊社が主催している写真コンペティション「ハリバンアワード」の2017年最優秀賞受賞者、スティーブン・ギル氏の写真作品を展示しています。


コロタイプの現在地5
展示4:魯山人書簡《仏手柑》コロタイプ復元複製(右)、2021制作


展示4は、魯山人の作品ですが、原本と複製が並べて展示されています。
―――デジタルとアナログの良さは別物であり、補い合うものと考えていますが、やはりデジタルがアナログを凌駕する部分の一つが機械的な画像処理の部分です。今年の春の展示では、デジタル画像処理で原寸大に複製した《高松塚古墳壁画》が展示されましたが(くわしくはこちら)、今回はデジタル画像処理によって原本の再現複製を試みたサンプルを展示しました。左側の表装されている方が原本ですが、ご覧のとおり長年の展示によって退色してしまっています。これを本来の色彩に再現したのが右の複製です。


コロタイプの現在地9


―――新しいものの良いところを見極め、恐れずに取り入れる姿勢が今の便利堂をつくったのかもしれません。この魯山人の複製は、近年取り組んでいる環境に配慮した無害薬品のレシピによってでも作られているそうですね。
これまでコロタイプの刷版をご覧になったことがある方は、黄色い色が印象に残っているかもしれません。それは感光材の「重クロム酸塩」という薬品によるものでしたが、環境への負荷がある物質でした。そこで弊社が近年研究を進め独自開発を行ってきたのが、環境に優しい「DAS Photosensitizer(DAS感光材)」です。このレシピで作った板は透明なんです。便利堂は現在、「便利堂エコプロジェクト」を立ち上げ、地球環境と事業活動の調和を目指し、商品の開発・生産・販売を通じて、環境負荷の低減および環境保護のための様々な活動を積極的に推進しています。コロタイプにおいてもこの観点で課題に取り組んでおり、その一つが無害な薬品への転換です。


benrido_eco_project1.jpg


―――DASの開発には大変な苦労があったと聞きました。
そうですね。2012(平成24)年から研究が始まり、近年ようやく実用に至りました。何度も実験を繰り返したと聞いています。しかし、DAS感光材が開発されたことで、この技術を未来へつなげていくことができるようになりました。しかも、安心安全な感光材を使うことで、一般の方に気軽にコロタイプをお楽しみいただくこともでき、近日中に弊社のウェブ上でDASレシピのコロタイプの家庭用キットを発売する予定です。これもまた、時代に合わせた進化であり変化だと思います。現在、コロタイプ制作物をこのレシピにシフトしており、現時点で8割以上をDAS使用した版で制作しています。

コロタイプの現在地6


―――伝統や技術を守ること、それと同じくらい進化も大切だとよくわかりました。
また、ギャラリーの一角では、コロタイプ研究所所長 山本 修による、コロタイプの制作過程がじっくりご覧いただける影像をご用意しています。長い歴史の中で、変化を恐れず進化しつづけ、確かな技術を確立し、次の世代へと継承する。もしどれかひとつでも欠けていたらコロタイプの技術はもちろん、今の便利堂はなかったかもしれません。未来へ伝える技術は日々、更新されています。便利堂の挑戦をぜひごらんいただき、コロタイプの現在地をわたしたちと一緒に確かめていただければうれしいです。


【開催概要】
便利堂コロタイプギャラリー「コロタイプの現在地」展
2021年7月26日(月)~9月3日(金)
時間:10:00-17:00(平日12:00-13:00、土日祝日はお休み)
入場:無料
場所:便利堂コロタイプギャラリー
(京都市中京区新町通竹屋町下ル弁財天町 302)


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Author:takumi suzuki
【コロタイプの過去・現在・未来。創業明治20年の京都 便利堂が100年以上にわたって続けているコロタイプ工房より最新の情報をお届けします】
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English:www.benrido-collotype.today

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