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コロタイプとインクジェット(アーカイバルピグメントプリント)の写真作品の比較展示

Posted by takumi suzuki on 16.2013 【古典印画技法 Altanative Process】   0 comments   0 trackback
KG+ KYOTOGRAPHIEサテライト展
荻野NAO之写真展「太秦」
2013.4.25-5.7 3F PROJECT ROOM

タイトル

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 「京都グラフィー KYOTOGRAPHIE」サテライト展「KG+」での便利堂関連の報告です。柳馬場御池下ルにある3F PROJECT ROOMで開催された「荻野NAO之写真展『太秦』」において、コロタイプとアーカイバルピグメントプリントで制作されたプリントが比較展示がされました。⇒展覧会記事(yahooニュース)

2荻野さん展示風景
会場風景

 荻野さんは1975年生まれの写真家で、国内外で幅広く活躍されています⇒荻野NAO之公式サイト。今回の展覧会では、京都・太秦の東映京都撮影所を舞台に撮影を敢行し、そこに漂う「地霊の気(ケ)」を留めた写真を、荻野さん自らの手でアーカイバルピグメントプリントとして24点展示されました。その作品群から2点を選び、まったくおなじデータからおなじサイズに、便利堂がコロタイププリントを、荻野さんがアーカイバルピグメントプリントを制作し、並べて展示しました。

荻野さん会場風景
中央の4点がコロタイプとアーカイバルピグメントプリントの比較展示

 また、4月29日には荻野さんと便利堂コロタイプ工房長・山本修のトークイベントをおこないました。 ふたりのトーク・テーマは「コロタイプとアーカイバルピグメントプリントそれぞれの表現力」でしたが、終始コロタイプの話題で展開。コロタイプの技法説明から、ドキュメント風のビデオをもちいて荻野作品のコロタイププリントをめぐる完成までの失敗や葛藤のプロセス(刷り重ねの限界、雁皮紙という選択、薬品による調整の効果など)披露まで、ご説明の時間をいただいて充実の内容となりました。

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トークイベント風景。荻野さん(左)と山本

 会場からは「荻野さんには失礼ながら、コロタイプのほうに強くひかれた。これまでは、コロタイプに対して精緻な写真プリントとしてのやや機械的なイメージをもっていたが、じっさい目にして、また話を聞いて認識は逆転し、絵画的な要素を非常に強く感じた」との声もあがりました。オーディエンスは15~20人ほど。画家やキュレイター、漆職人、撮影所の美術部員、教科書編集者など多彩な方々が集まり、イベント終了後も、それぞれの関心をもって作品や持参したコロタイプの刷本を興味深く鑑賞し、工房長への質問・意見交換も相次ぎ、盛況のうちに散会しました。

比較展示1
比較展示(この画像ではわかりませんねw) 「桜」(仮題)
左がアーカイバルピグメントプリント、右がコロタイプ。いずれも和紙にプリントされており、前者はきら引きのような光沢のある局紙、後者は黄色味のある越前の手漉き雁皮紙


 コロタイプは、古い絵画や文書、歴史的資料の精緻な「複製」として認識されてきましたし、じっさいほとんどはそうした関連のお仕事です。が、そもそもは写真プリントのために生まれた技術。便利堂では、現代に生きる技術として、従来の表現には飽き足らないアーティストに、もっとコロタイプを利用してもらいたいと思っています。今回の試みもその一環です。荻野さんに今回の比較展示プロジェクトを振り返ってのコメントをいただきましたので、ご紹介します。(藤岡)

比較展示
「部屋」(仮題)

                  

「比較展示プロジェクトを振り返って」荻野NAO之

【背景】
 鈴木社長、山本工房長にはじめてお会いしたのは、京都ではなく、東京のAPIS 2012 Tokyo会場ででした。有り難いご縁でした。それからすぐ京都に戻ってきて、工房見学をさせていただきました。コロタイプの独特の存在感をヒシヒシと感じ、ぜひどこかでご一緒させていただきたいと願っておりました。

 今回、KYOTOGRAPHIEのサテライトで写真展をさせていただくことになった際、これはぜひコロタイプとアーカイバルピグメントプリントの比較展示が実現できないかと思い立ち、ご一緒させていただけることになりました。
 本当にありがとうございました。

 比較展示を思いたった背景には以下の二点がありました。
 一つには、出来上がったものを見るのではなく、自分の写真を通じて工房の職人さんたちと一緒に作り上げてゆく過程をご一緒させていただくことで、より一層コロタイプの良さや特徴が身にしみて分かるだろうということでした。

 そしてもう一つは、同じ写真での比較をすることでこそ、それぞれの技法の特徴が浮き彫りにされて分かるだろうという思いがありました。これは、普段アーカイバルピグメントプリントのための用紙テストを同じ写真で比較していて実感したことでした。

【コロタイプ制作を経ての感想】
 全体を通して感じたことは沢山あって短くは記せないのですが、ごくわずかに絞ってお伝えしますと・・・
 まず制作プロセスの部分では、とにかく何を置いても職人さんの広大な範囲に渡るこだわりに接し、想像以上の表現の可能性について視野が開けたこと、これが大きな歓びでした。

 写真のラボやプリンターにプリントを頼む場合でも、現像液や印画紙の種類についての豊富な知識と経験値によるアドバイスはいただけますが、ここでは、和紙ひとつにしてもそれぞれ異なった産地からそれぞれの紙の特徴を理解された上で、紙をすくところから依頼されています。

 そして、インキ一つとっても市販のものは存在せず、どれも便利堂さんのためだけに調合されたインキを依頼のもと用意されています。紙にしろインキにしろ、ありものの取捨選択をされているのではなく、一つ一つ意図を持って、過去からの経験の蓄積を持って、用意されているわけなのです。

 その分だけ素材に対する理解は深く、途中の試し刷りを拝見しながら素材のお話を伺いつつ、こちらの表現意図を組んでいただき、最終的なコロタイプの作品へと結像して下さいました。頭の中にあったイメージが、職人さんたちと素材の性質が絡み合って、蜃気楼が定着させるようにして現れていった感触は、今まで他で感じたことの無い表現に向かう不思議な感覚でした。

 そしてついに出来上がったコロタイプは、想像を超えて深みを持ち、異様なものの存在感を漂わせていました。
驚いたことに、刷り上がりから1週間、2週間と時を経て、深みはいよいよ増していきました。あるお坊さんが、納品されたコロタイプ複製を毎年見られて、「一年一年深みが増してゆく」と仰ったと伺ったことがありましたが、そのことを目の前で実感いたしました。

 デジタルカメラの時代になっても、アナログのコロタイプという表現方法が可能性の中にあるということは、本当にありがたいことだと改めて今回実感させていただきました。
どうもありがとうございました。

【比較展示での反応】
 多くの方々が、熱心に比較されているコロタイプとアーカイバルピグメントプリントとキョロキョロしながら見比べていかれました。これは思った以上にみなさんがみなさん同じ仕草で見ていかれました。あまりに似た仕草えで、ユーモラスでもあるほどでした。

 そして聞いたわけでもないのに、それぞれ口々にここが違うとか、それぞれの特徴を口にされていました。
一般的に多かった反応としては、コロタイプの方が柔らかく、アーカイバルピグメントプリントの方が硬めの表現だという感想でした。はじめは、なぜ同じものを二枚並べて掛けてあるのかと聞いてこられた方も、途中から「ああ、違う違う」と頷かれながら見ていかれました。

 コロタイプの存在感を気に入って下さる方が多くいらっしゃいました。そして、その後、これはどういう技法なのか?と必ず聞いてこられました。横に置いてあった便利堂さんのミニパンフレットをお渡しするのですが、やはりトークイベントほどの理解はなかなか紙面から得るのは難しいようで、トークイベントの受け売りの説明でなんとかお茶を濁す程度しか私にはできず、そこが残念なところでもありました。


【トークイベントの感想】
 今回のトークイベントは本当に盛りだくさんで、実際に刷るのに使っていただいた版を持ってきていただいたり、普段は見せることの無いであろう、途中過程で紙の表面が剥離してしまった失敗作や、和紙ごとの特徴が分かるサンプル、そして実際に刷っていただいていた際の、ドキュメンタリー映像まで上映していただきました。

 山本工房長の映像に合わせたトークは、本当に素敵で、時々独特のユーモアが混ざり、来場者を笑いの渦に巻き込みつつ、コロタイプの制作現場とそのプロセスが現場を見ているかのように伝わって参りました。

 コロタイプは恐らく版を作った後、唯一、刷の段階で諧調などをコントロールできる手法だというお話でしたが、実際の重たいガラス上のゼラチン版をもとに、どこの部分のゼラチンの硬さ柔らかさを、薬品を使いつつどう微調整して、最終的な写真の部分部分の諧調を出したのかなどご説明いただいたところは、特に貴重なお話だったと思います。

 職人さんが指先でゼラチンの状態を感じ取り、身体でその時々の天候による温度湿度を感じ取り、いかにして刷りに導いているのかが伝わってくる素晴らしいトークイベントでした。実際に刷られて展示されているコロタイプを横に、トークを伺うことで、より一層コロタイプの深さと面白さ、可能性の大きさを実感させていただくことができたと感じています。
 本当にありがとうございました。

                  

 今回制作した荻野NAO之「太秦」よりコロタイププリント2点(仮題「桜」・「部屋」)は、各エディション20部、注文販売しております(すこしお時間はいただきます)。本紙(ブックマット装)65,000円、額入80,000円(各税別)です。

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takumi suzuki

Author:takumi suzuki
【コロタイプの過去・現在・未来。創業明治20年の京都 便利堂が100年以上にわたって続けているコロタイプ工房より最新の情報をお届けします】
Japanese:www.benrido.co.jp
English:www.benrido-collotype.today

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