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サイモン・ベーカー氏特別インタビュー

Posted by takumi suzuki on 18.2013 【古典印画技法 Altanative Process】   0 comments   0 trackback
「写真界で起こっている変化によりコロタイプに新たな重要性が生まれたのです」
於 便利堂コロタイプギャラリー 2013/9/24

サイモン インタビュー

 東京フォト(9/27-30)で開催された特別展示「車窓からの眺め」のキュレーションで来日中のテート・モダン、写真キュレーターのサイモン・ベーカー氏が、便利堂コロタイプ工房を訪ねてくれました。2011年の来社に続き、2回目の訪問となります。前回はあいにく台風の来襲に遭い、翌日の工房見学がキャンセルとなってしまって残念な思いをしました。今年も台風が多く、二の舞になるのを心配していましたが、うまい具合に前の週に台風18号が通り過ぎてくれ、おかげで快晴にも恵まれました。

 ベーカー氏は、それまで写真部門がなかったテート・モダンに2009年に招かれ、一躍同館の写真部門の評判を高めたことで有名です。日本の写真にも造詣が深く、コロタイプについても高く評価してくれています。ベーカー氏は『写真は物質だということを忘れてはいけない』といいます。プリントや印刷物としての最終的に物質化された状態にクオリティがなければいけないというのが彼の持論です。その彼がコロタイプをどのように見ているのか、この機会にインタビューをお願いしたところ快諾いただきました。

 これに先立つ8月にロンドンでもベーカー氏にお会いしていたのですが、その時彼に提案されたのがコロタイプのコンペティションを開催することでした。私も同様の企画をずいぶん以前より思い描いていたので、意気投合し、「審査員、やってくれます?」「もちろん」ということで、具体的に企画が進むこととなりました。今回のインタビュー映像は、このコンペティションのプロモーションにも活用する予定です。コンペの詳細については、またあらためてアップしたいと思います。



お名前と職業を教えてください。

サイモン・ベーカーSimon Bakerです。ロンドンにある英国国立美術館テートモダンTete Modern、フォトグラフィー・国際美術部門キュレーターです。

歴史的な写真印画技法という観点から見たコロタイプの重要性は何ですか?

コロタイプは主に19世紀末に関連づけられている歴史的な印画技法です。当時は、質の高い美術品の複製画像を印刷する革命的な技法として現在よりも広く普及していました。現在でも非常に美しく魅力的な複製を印刷できますが、あまり一般的ではなくなり、専門的な技術と捉えられています。

コロタイプ独特の魅力や美しさとは何ですか?

コロタイプには非常に特別な美しさがあります。光と陰のグラデーションが非常に繊細に表現され、優れた職人であれば深い黒やハイライトの見え方をコントロールすることができるのです。このことから美術品の複製画像の印刷に使われてきました。発明された当初は非常に忠実に複製できる印刷技法として注目を浴びました。

サイモン 工房


昨今のデジタル社会にコロタイプはどのように溶け込んでいますか?

現在、写真界全体に非常に興味深い現象が起こっています。デジタル技術の発展とアナログ印画に使われる材料の減少により、写真プリントの均一化が進んでいるのです。昔に比べると印画紙の種類が遥かに少なくなっており、プリントの際に昔ほど繊細な変化を与えられなくなってきました。先端を行く写真家の多くは、お気に入りの印画紙や薬品を蓄えていますが、その他の写真家は皆同じ印画紙を使用する他なく、プリントスタイルが一様になってきているのです。

また、コロタイプやフォトグラビア技法が、現在普及している印刷複製技法に比べて希少になりました。これは19世紀末とは正反対の事態です。当時は多種類の印画紙や現像の方法はありましたが、写真印刷技術は数種しか存在しませんでした。それに比べ現在では写真プリントに使われる材料は減少しましたが、コロタイプのようにとても珍しい技法が残っています。写真界で起こっている変化によりコロタイプに新たな重要性が生まれたのです。

サイモン WS
工房見学だけでなく、今年よりはじめたワークショップも体験していただきました。

便利堂の工房を見学なさり実際にコロタイププリントに挑戦されましたがその経験はいかがでしたか?

非常に素晴らしい経験でした。まるで100年前の工房にいるかのようでした。手作業の巧妙さと設備のバランスには目も見張るものがあり、それが非常に正確な作業を可能にしていました。すべてを目で判断し、細部に細心の注意を払い、画像の様々な濃淡のバランスを得るために何度もプリントを機械に通すなど驚く程の技術を必要とし、フォトショップのように1つの設定を作ると全てが同じように出てくるのとは大変違います。今回、熟練技師の監督のもとコロタイププリントに挑戦することができ非常にラッキーでした。

この経験からも、現代にコロタイプのような印刷技法の居場所があることが分かりました。コロタイプの持つ不動の美しさや複雑さ、様々な奥行きや色彩に反応できる力は現在でも重要です。現代の写真作品と、プリント過程に熟達している技法との融合は非常に独特なものであり、それが未だに可能な場所は世界中を見てもほんのわずかにしか存在していません。

サイモン A.Takizawa
今年あらたに作成した瀧澤明子氏の「Najima」シリーズのコロタイププリントを見るベーカー氏

この度便利堂と提携して行われるコンペティションでは入賞者の作品は便利堂でコロタイプとしてプリントされますね。この古典的な印画技法を用いてプリントすることになる現代の写真家には何を求めていますか?

便利堂を見学した際、非常に有名な日本人写真家(植田正治や細江英公など)の作品やアメリカ人写真家の作品を見ました。とても古典的、歴史的あるいは存命の有名な写真家の作品で、それぞれの作品からまた違ったコロタイプを発見できます。また便利堂には瀧澤明子などの若手の写真家の作品もありました。まだ若手である彼女の作品を見ると、また違ったコロタイプの感性を発見できます。

このように、便利堂のような伝統や歴史的技法に深く関わっている工房では、自分のスタイルを模索している彼女の作品にも、熟練技師の目をもって何かを与えられるということは非常に興味深いと思います。これが、過去にも現在にもマスタープリンターと一緒に写真のプリントをする、特にカラー写真のプリントをする写真家が多い理由だと思います。マスタープリンターと共同作業することによって作品について様々なアドバイスがもらえるからです。

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ロンドン・大和ファウンデーションで開催された瀧澤明子氏の個展 2012/1/18-3/1
展示作品には「Osorezan, Goshogwara」シリーズのコロタイププリント8点も展示された(写真左の壁面)。⇒作品詳細はこちら


このコンペの受賞者は提出した画像のみで選ばれるのですか? それともコロタイプ技法との相性も考慮されるのですか?

若手の写真家を便利堂に招待し便利堂のスタッフの方々と作業する利点は、彼らエキスパート達とアイデアや専門知識を交換できることです。自分の作品をまだ模索していて、印画技法に興味があり、もしかするとすでに様々なモノクロプリント技法やカラープリント技法を試行錯誤しているような人には素晴らしい経験となることと思います。また、この経験の最大の利点は、通常ではあり得ない便利堂の熟練技師と経験を共にできることです。このコンペに入選するとコロタイプで素晴らしい作品を作るだけでなく、自分の作品の制作を新たな視点で見る機会も与えられると思います。

写真の世界も競争率の高い分野となってきていますが、若手の写真家に何かアドバイスをお願いします。

私からのアドバイスは、まさに便利堂で行われていることをすることです。過去に何が起こったのかを知り、それと同時に今自分たちの周りで何が起こっているのかを注意深く考えること、プロセスや材料に興味を持つことです。写真を、ただ写真を撮るだけのこととして捉えるのではなく、カメラを使い写真を撮りそれをプリントする、あるいは印刷物として出版もしくは興味をそそる方法で展示するという一連のプロセスとして捉えていただきたい。すでにそう捉えているのであれば正しい方向へ向かっているということです。



インタビューでも言及されていた瀧澤明子氏のコロタイププリントとして、現在3シリーズが完成しています。

「Osorezan, Goshogawara」8点 エディション10
「Najima」7点 エディション15 作品詳細
「Headland」5点 エディション15 作品詳細

「Najima」と「Headlnd」は、今月末からパリで開催されるフォトフェア、Fourth images(10/31-11/5)で 初めてお披露目されます。

Najima Box
「Najima」コロタイプ・ポートフォリオ

■そのほかのベーカー氏のインタビュー記事
「サイモン・ベーカー、日本のフォトグラフィーやフォトブックスについて語る」(BLOUIN ARTINFO)
「入場者数世界一を誇る美術館のキュレーターが語る写真のこれから──サイモン・ベーカー(キュレーター)」(GQ MEN)


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【コロタイプの過去・現在・未来。創業明治20年の京都 便利堂が100年以上にわたって続けているコロタイプ工房より最新の情報をお届けします】
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English:www.benrido-collotype.today

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