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寄稿:写真家・瀧澤明子さん「パリで展示したコロタイプの反響について」

Posted by takumi suzuki on 04.2013 【今日のコロタイプ】    0 comments   0 trackback
「時間を託す事のできる手法なのね。
人が何かを感じた余情を崩さずに表現できる手法なのではないかしら?」

(フランス人老婦人の感想)

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La Quatrieme Image Photo Fair Paris
October 30th- 5th November 2013

 先のブログにアップしたサイモン・ベーカーさんのインタビュー詳しくはこちらでも名前が挙がっていた新進の写真家・瀧澤明子さんのコロタイププリント新シリーズ2種が、先日パリで開催されたLa Quatrieme Image Photo Fair Paris(英語タイトルはThe Fourth Images)で出品されました。

 瀧澤さんとは、2005年イギリスで開催された第2回国際コロタイプ会議に参加した際に知り合って以来のおつきあいです。会議でスピーカーをした時に通訳をしていただいたのが滝澤さんでした。⇒詳しくはこちら「第2回国際コロタイプ会議」。当時、いつか瀧澤さんの作品をコロタイプでプリントしたいですね、と夢を語っていましたが、10年近くたってようやく実現しました。

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2005年 左が通訳をしてくれている瀧澤さん。二人とも若いです!

 瀧澤さんの最初のコロタイププリントとしては昨年ロンドンで開催された瀧澤さんの個展に合わせて制作した「Osorezan, Goshogawara」シリーズ(2011年撮影)の8点があります。今回はそれに続き、「Najima」(2005年)7点、「Headland」(2007年)5点を制作しました。彼女にとって初めてのパリでの展示でしたが、作品に対する評判もとてもよく、大いに手ごたえを感じたようです。

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ロンドン・大和ファウンデーションで開催された瀧澤明子氏の個展 2012/1/18-3/1
展示作品の一部に「Osorezan, Goshogwara」シリーズのコロタイププリント8点が展示された(写真左の壁面)。


 コロタイププリントによる作品発表という珍しいスタイルでしたので、どのような反応になるか心配な部分もありましたが、幸いみなさん興味を持っていただいたようでよかったです。そのあたりについて、瀧澤さんから文を寄せていただきましたので、紹介させていただきます。

パリ明子
瀧澤明子さん

瀧澤さんのHP http://www.akikotakizawa.com/index.html





Headland #1+
Headland #1 コロタイプ 雁皮紙

 この秋、10月30日-11月5日の期間パリの写真市 La Quatrieme Image に、便利堂さんで制作して頂いたコロタイプ作品を展示しました。La Quatrieme Image の写真市は、フランス・パリ在住、パレスチナ出身の写真家ラエド•バワヤ氏(Raed Bawayah)をダイレクターとするフランスのNPO法人 Images Hummaines の主催です。

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Headland #5とラエド・バワヤ氏

 バワヤ氏は、自身の作家活動も精力的に続けながらも、ギャラリーに所属していない世界中に点在しているのであろう多くの写真家に、それぞれのキャリアのレヴェル、作品のジャンルを超えて、作品を発表する機会を与え大いに交流できる環境を提供してゆきたいと、“La Quatrieme Image”を立ち上げました。

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子供が好きな写真を鑑賞して、それが何処の国で、どんな生活をしているかを教えてもらい、会場で写真を見た記憶から絵を描くというワークショップも開催されました。

 バワヤ氏は、フランス政府からパリでの活動の機会を与えられて、作家としての今現在の自分が在るので、パリで作品を発表する素晴らしさを一人でも多くの作家に体験して欲しいという指針から、写真家を募り選出した結果、24ヵ国から43人の写真家による作品展示という実に国際色に富む写真展となりました。

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 パリの中心部4区(マレー地区)の市民ホールが会場となり、入場無料、そしてファインアート系の写真とフォトジャーナリズム系の写真両方の同時展示を試みた事から、入場者は6日間で、20,768人にも登り、会場には、一般の他の写真市に比べると、写真愛好家に限らず、家族連れ、観光客、老若男女様々な鑑賞者が見受けられました。

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 その写真市に、私はこの夏に便利堂さんに刷り上げて頂いたばかりのコロタイプ作品、『Najima』7点 と『Hedaland 』5点、計12点を出品致しました。

Najima #4+
Najima #4 コロタイプ 鳥の子2号紙

 この度一番驚き、光栄に感じた事は、写真や版画の技法に知識のない一般の鑑賞者の方々からも、展示作品の手法=コロタイプについて数多く質問を受けた事です。

 鑑賞者が、私の作品に近寄ったり離れたりして、しげしげと作品を鑑賞し、一緒に訪れている友人や家族に、「これは手法何かなあ、銀塩写真ではないよね、だって紙に焼いているみたいだし」、といった内容の事を耳元でささやき合っている光景に幾度か遭遇しました。

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会場展示風景。Najima 7点。下のボックスには、昨年制作したOsorezan, Goshogawaraシリーズ8点のコロタイプポートフォリオ

 コロタイプについて質問され、その時、実際のプロセスを説明するに一番の手助けになったのは、便利堂創業125周年を記念して出版された『明治の京都 手のひら逍遥-便利堂美術絵はがきことはじめ-』でありました。6日間の展示期間中、何度この本を開いてコロタイプについて説明した事でしょう。

 フランス人のお客さんに、「コロタイプは、フランスで今から約150年前に最初で生み出された印刷技法で、今現在、写真印刷のビジネスとして継続している工房はもはや日本の京都の工房だけになってしまいました。」と説明始めると、とても興味をもってもらえました。

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同 Headlandのうち3点

 「日本では、この様に今や稀少となった和紙職人の生み出した手漉き和紙に、コロタイプ専用のインキで刷るなどして独特の風合いを生み出しているのです。カラーでの制作も可能なのですよ。」と説明すると、和紙の色や質、名称についても質問する人が多くいらっしゃいました。

 何度か説明を繰り返してしているうちに、フランスで発明されたこの技術を、私が日本で撮影し、それを日本、京都の便利堂で制作して頂き、初めてこの作品群を発表する場が偶然にしてもそのフランスである事、コロタイプが生まれた土地、フランスに里帰りしているような気持ちになり、改めて感慨深い気持ちなりました。

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Najima #1のプリント作業風景

 上記で述べた様に、特に写真技術に知識のない一般の人々が思わず手で触ってさえみたくなる様なコロタイプの風合いには、人を魅了する力がある事を改めて展示会場で感じました。

 私のファインアート系の写真とは分野の違うフォトジャーナリズム専門の作家の方々からも、コロタイプについて色々質問されるほど興味を持って頂いたのは実に光栄な事でありました。

 「1960年代に日本に住んでいた時、秋田県や岩手県の風景で感じた日本の美しい光の感じや、吹いていた風をさえ思い出すわ」と3度も展示会場に足を運んで下さったフランス人の老婦人も写真の専門家の方では全くない様でしたが、コロタイプを目の前に以下の様に話して下さいました。

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 「これはきっとデジタル印刷ではないわね? マシーンメイド(機械)では絶対に真似はできない風合いがこの技法にはあるのね。時間を託す事のできる手法なのね。人が何かを感じた余情を崩さずに表現できる手法なのではないかしら? マシーンだとその人間の微妙な感覚を組み込めるスピードでは、どうもないのよね。

 このインクの光沢、その光沢が和紙の上にのっているとうよりは染み込んで過ぎた時間の美しさを新たに呼吸させて、もちろん止まっている場面だけど、まるで生きているかの様に感じるわ」

 又、私の作品を10年知っている日本人作家の友人にもこの御婦人と共通することを言われました。

 「和紙にインクが染み込んでいる感じが、時間が染み込んでいるようですね。作品の内容とマッチしいるし良さを引き出している。明子さんの写真には、おじいさんとかおばあさんがおしゃべりしながら手にしている一枚の写真、遠い昔の様な、あるいは、今現代かしらと見る側が、一瞬時代性も分からなくなる写真と思いますが、その感じが、コロタイプになる事で、より強くなり、効果的に作品の質が引き出されていますね。これ以上の表現方法はないのでは。」と言われました。

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 『永遠の先駆け』というフレーズは、以前、便利堂の案内書に書かれていた一文でしたが、まさに、コロタイプでプリントされた作品には、写真に特に興味があるないにかかわらず、人の足を思わず止める魅力が確かにある事、今の時代の人々の目にその質の違いは充分に届く事、イメージ、印刷物が氾濫するこの時代にこそ、求められている高く重厚な質のものであるという事実を確かな手応えとして感じるとれた写真市での経験となりました。





Najima Box

瀧澤明子氏のコロタイププリントとして、現在3シリーズが完成しています。

「Osorezan, Goshogawara」8点 エディション10 作品詳細
「Najima」7点 エディション15 作品詳細
「Headland」5点 エディション15 作品詳細

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Author:takumi suzuki
【コロタイプの過去・現在・未来。創業明治20年の京都 便利堂が100年以上にわたって続けているコロタイプ工房より最新の情報をお届けします】
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English:www.benrido-collotype.today

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