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HARIBAN AWARD 2014 アーティスト・レジデンシー報告

Posted by takumi suzuki on 01.2014 HARIBAN AWARD   2 comments   0 trackback
最優秀賞受賞者、アヴォイスカさんとの濃密な2週間をレポートします

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レジデンシ―最終日の夕方にもかかわらず、プリントチェックは続きます!

審査結果概要1
HARBAN AWARD 2014 審査結果概要小冊子

コロタイプギャラリー支配人の藤岡です。
既報の通り、このたびコロタイプ工房ではあらたな挑戦として、コロタイプによる国際写真コンペティション「第1回HARIBAN AWARD」を開催しました。欧米アジアの全世界から131名ものご応募をいただき、そのなかから最優秀賞としてオランダ人女性Awoiska van der Molen(以下、アヴォイスカ)さんが選ばれました。⇒前回の受賞に関する記事はこちら アヴォイスカさんには9月29日から10月10日までの2週間京都に滞在し、コロタイプ工房で職人と一緒に作品づくりをおこなっていただきました。ちょっと長いですが、この「アーティスト・イン・レジデンス」について報告します。


「アヴォイスカ・ヴァン・デル・モレンは、Hariban Award2014のグランプリ受賞者として選ばれるべくして選ばれた」 サイモン・ベーカー

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自身の手による大判モノクロプリントを前にしてアヴォイスカさん近影@Purdy Hicks Gallery, PARIS PHOTO

「アヴォイスカ・ヴァン・デル・モレンは、Hariban Award2014のグランプリ受賞者として選ばれるべくして選ばれた。彼女は便利堂の熟練した技術者たちと作業を行うという刺激的な機会を享受するにふさわしい写真家である。彼女の現代的なモノクロ写真は、現在のヨーロッパにおける最も上質な作品のひとつであり、それは自身の卓越したプリント技術によって制作されている。と同時にこうともいえるのも事実である。すなわち、自然を写した繊細で美しい彼女の作品は、光と影の綾に細心の注意を払うことにより生み出されるが、それは便利堂がコロタイプにより手がけてきた写真の歴史的名作と共通点が多いということである。つまり彼女の作品は、微妙なグラデーションとトーンおよび自然の造形の細部をとらえる繊細な感性において、コロタイプによりもたらされるであろう可能性とぴったりマッチしているのである。つい先日ヴァン・デル・モレンの初めての写真集が発売されたが、彼女のキャリアが希望に満ち溢れているこの時期に、Hariban Awardの最優秀賞を贈ることができることを審査員一同非常に嬉しく思っている。」
HARIBAN AWARD 2014 審査員代表 サイモン・ベーカー氏(「審査結果概要」より)
⇒受賞者の紹介や審査員のコメントをまとめた「HARABAN AWARD 2014 審査結果概要」小冊子のPDFが こちらリンクからご覧いただけます。

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来日直前に出版された彼女のファースト写真集Sequester - Awoiska van del Molen €40,00

彼女のはじめての写真集《Sequester》は 2014パリフォト-アパチャーファンデーション フォトブックアワード Paris Photo–Aperture Foundation PhotoBook Awardsのファーストフォトブック部門のショートリストにノミネートされました。大変な反響があり、初版750部はあっという間に品薄になったとのことです。

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@パリフォト、アパチャーファンデーション フォトブックアワード のコーナー。彼女の写真集の注目度は高かったです。


アヴォイスカさん、来日する

9月29日、オランダから関西国際空港そして京都駅から便利堂に無事到着。私も緊張のなか対面。まずは工房見学と、ご自身の作品の手刷りプリント体験で、コロタイプを大まかに知ってもらいます。大きな時差を乗り越え、ややお疲れ気味でしたが、とても和やかにスタートしました。と、私なんかはお気楽なものでしたが、一方の現場では早速あたまを悩ませる問題が山積みだったようです。

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なんといっても、アヴォイスカさんの作品!深い深い森、きりっとした山の稜線、ごつごつした岩場といった濃厚なシャドー部に、やさしく淡く降りこむ光や立ち込める水蒸気、稲妻のように走る白線。コントラストが高いのか低いのか、また独特の遠近感覚が画面になんとも不穏な印象を醸す。こんな作品刷れるのか?でもだからこそチャレンジして、コロタイプの可能性を追求するのに、これ以上の「素材」はありません。


チャレンジスタート!

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まずはデータチェック。全8点について、モニターに映る画像を1点1点、本人のイメージを綿密にヒアリング。そのうえで製版技師・松崎さんが刷り上がりをイメージしてレタッチを加えていきます。じつはこの「入口」がもっとも大事なところなのですが、すこし反省点がのこりました。細かいことは端折りますが、作家が持ち込むデータについては、事前に、解像度の問題や要求するイメージを、お互いが綿密に諒解していなければなりません。ごく基本的なことですが、この「一期一会」の関係にあっては、もっとも大切なことです。それでも松崎さん、アヴォイスカさんの要望やイメージにできるだけ近づきたいと、最後まで本当に粘り強く対応しつづけました。

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プリントサイズは20×24インチ(約51×61センチ)。このサイズはコロタイプの通常サイズ印刷機では限界のサイズであり、ましてやミュージアムクォリティの「作品」を刷るとなると「難しい」のひと言では済まないほど。でも、いろんな(あるいはデジタル技術一辺倒ともいえる)写真プリント技法があるなかで、コロタイプの圧倒的素晴らしさを分かってもらうために、あえて勝負に出ました。

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用紙は雁皮紙。楮や鳥の子でもテストをしたうえで、アヴォイスカさんに決めてもらいました。コロタイプの真骨頂である滑らかな階調表現にもっとも相応しく、写真表現ではもうお馴染みとなりましたが、そのぶん用紙としては繊細というか華奢。とくにシャドー部にどっしりとインキがのるようなアヴォイスカ作品では、一版を何度も刷り重ねるうちに剥がれたり浮いたりしてこないか、ここでもまた不安要素が持ち上がります。

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アヴォイスカさんはオランダ人で、会話はすべて英語。私はもちろん、現場の職人たちも意思疎通がままなりません。そんななか2週間、朝から晩まで付きっきりで彼女の通訳にあたってくれたのが、カリー真理子さん(写真左端)。カリーさん自身、コロタイプを知ったばかりなのに、短い期間で本当に一生懸命勉強してくれて、作家のイメージや気持ちを十全に伝えてくれましたし、初めて日本に滞在する彼女をいろんな面でサポートしてくれました。ありがとうございました。

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とにかく、全8点をアヴォイスカさんが滞在する2週間(実質10日)のうちに、完成とはいかないまでも納得、安心して帰国してもらえるかたちにまで仕上げなければなりません。松崎さんと印刷技師・竹内さん(カツオさん)は朝から晩までアヴォイスカ作品にかかりっきり。普段は和やかなアヴォイスカさんも、次々に上がってくるテストピースを前に真剣そのもの。非常にシビアなコメントを返してきます。

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松崎・竹内両氏も表現の意図を説きつつ、彼女の要望を最大限汲み取ろうと必死。このときばかりは口も挟めません。そんなやりとりが8点すべてに何度となく繰り返され、ようやく校了や責了が出始めたのは、2週間目も半ばを過ぎてからのことでした。結局最終日の最後の最後まで、この「戦い」は続き、なんとか、なんとか8点すべてにハートサインをもらったのでした。

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しばしお別れ

そんなこんなで「別れ」は突然にやってきます。松崎・竹内の両氏とは、お互いの力を出し合った充実感もあり、まさに『ウルルン滞在記』のようなラストシーンでした。はじめてのHARIBAN AWARDアーティスト・イン・レジデンス。私個人としては、じつのところ当初、外国人でしかも写真家(アーティスト)と過ごす2週間の長丁場に不安を感じずにはいられませんでした。ところが、アヴォイスカさんの明るくて気さくな、またとても誠実であたたかい人柄に感激し、またおおいに救われました。なんとか当初の目標も達成できましたし、充実の日々となりました。また来年の春に再会しましょう!

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HARIBAN AWARDは賞金もなければ、受賞がおおきな業績となるような権威は(いまのところ)ありません。それでも、初回にしてこれほど多くのひとたちが応募してくださったことにこそ、おおきな可能性を感じています。お金や名声を得るためじゃない、プロとプロが、人と人が本気で議論を交わすなかで技術の限界を追求し、真剣勝負で作品を生み出していくという喜びが、ここには本当にあります。

今回の成果は、来年2015年春開催のKYOTOGRAPHIE公式プログラムとして発表、展観されます。またこの頃より、次回第2回となるHARIBAN AWARD 2015の募集を開始します。たくさんの素晴らしい作品をとおして、お会いできることを心より楽しみにしています。



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2014.12.02 21:11 | | # [edit]
参加お待ちしています!

> コロ印刷は、素晴らしいです。
> 次回は、ぜひ参加したいですね。
2014.12.02 21:34 | URL | takumi suzuki #- [edit]


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Author:takumi suzuki
【コロタイプの過去・現在・未来。創業明治20年の京都 便利堂が100年以上にわたって続けているコロタイプ工房より最新の情報をお届けします】
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