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《コロタイプギャラリー支配人より開催展のお知らせ》「コロタイプで親しむ、花園天皇の宸筆」

Posted by takumi suzuki on 02.2014 【コロタイプギャラリー】   1 comments   0 trackback
宮内庁書陵部所蔵『花園院宸記』全35巻、24年にわたる大事業が完結します!
2014/11/20-12/6 @便利堂コロタイプギャラリー

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コロタイプ・ギャラリー支配人の藤岡です。
ただいまギャラリーで開催中の秋季企画展「コロタイプで親しむ、花園天皇の宸筆」では、『花園院宸記(はなぞのいんしんき)』を、コロタイプ複製ならでは、間近で堪能してもらうべく、かつてないボリュームで展観しています。

『花園院宸記』とは?

鎌倉時代後期の花園天皇(1297-1348[在位1308-18])がしたためた自筆の日記『花園院宸記』は、めまぐるしく変動する鎌倉後期の政局を克明に記した第一級の歴史資料です。また天皇の博識ぶりや、随所にお人柄がうかがえる筆跡としても非常に価値の高いものです。

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花園天皇肖像(右) 『天子摂関御影 天子巻』(宮内庁書陵部蔵 昭和41年複製制作) 肖像、似せ絵の名人として知られる、藤原為信の子・豪信法印の筆。左は後醍醐天皇。参考展示 

花園天皇はこんなお顔。お隣の後醍醐天皇と比べると、それぞれよく性格のようなものが表れていますよね。


『花園院宸記』複製事業とは?

宮内庁書陵部では、今上天皇陛下のご即位を記念し、平成3年度より、『花園院宸記』全35巻をコロタイプで複製するという長期にわたる事業が開始され、便利堂は全巻にわたりその任にあたり、いよいよ本年度制作の巻35(現在作業中)によって全巻複製が完結します。

毎年1~2巻ずつ、書陵部の先生方立ち会いのもと、初夏に原寸大撮影、夏~初秋に綿密な色校正をかさね、年末に印刷機1台かかりっきりで刷り続けます。ジャンルとしては「文書」ではありますが、墨とそれを補うグレー、地色、場面によってはシミ、虫損、カビ、朱と、多ければ7色以上の色数(=版数)にもなります。用紙は、永年保管に耐え得ることを大前提に、手漉き三椏(みつまた)紙。毎年、受注が決まるごとに、福井県の岩野平三郎製紙所に発注します。またコロタイプのアナログ製版としても、これが最後の仕事になりそうです。24年続いたこの大事業もついに今年度で完了します。いままさに最後の巻を刷っている工房の職人も、「これで最後かぁ」と感慨深く、また寂しげです。


『花園院宸記』の見どころ

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『花園院宸記』巻21 元亨元年(1321)9月3日条裏書 (平成15年制作)
後伏見院・花園院の兄弟が、亡父伏見院の供養のため衣笠院の明静院において五種行を行った際の指図。


日記の多くは、「具注暦」(ぐちゅうれき)に直筆で書き込まれています。具注暦とは、いまで言うカレンダー(ダイヤリー)のこと。ここで日にち間の間空(まあき)は3行ありますが、紙がきわめて貴重だった当時、一般には(そもそも一般人は使いませんが)間空なしだったそう(上掲図版参照)。さすがは天皇仕様です。


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参考展示:二条道平代筆『伏見天皇宸筆御置文』文保元年(1317)8月2日付
伏見院の、後伏見院(花園天皇の兄)への遺言状。重病のため筆を取れない伏見に代わって、関白二条道平が代筆し、その証といて手印を押す。


花園天皇のお父様、伏見天皇の手印(ていん)。まもなく亡くなられる頃、書は側近の代筆ですが、内容の正統性や威光を示すべく、力強く押されています。決して大きくはないのですが、間近で見るとその力強さに圧倒されます。


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巻(年)によって太さ(長さ)がまちまち。具注暦を用いた巻は長くなるようです。


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『花園院宸記』巻18 元応2年(1320)秋・冬記跋文 (平成13年制作)
花園は自らの日記を「等閑記」と名付けていた(図版左の記述)。「自分の日記を、後代に誰が見るだろうか。子もいない、孫もいない身にとって、日記を記すのをやめよう」という内容からは花園の孤独感が感じられる。


花園天皇は、この日記は後世だれからも顧みられないだろうと思っておられたようですが、そんことはないです!


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『花園院宸記』巻23 元亨2年(1322)9月10日条別記(平成17年制作)
鎌倉後期の貴族西園寺実兼の伝記が差し込まれている。実兼は、朝廷と鎌倉幕府をつなぐ要職にあった上、娘や孫娘の多くが持明院・大覚寺統の院・天皇に嫁いでいたことから、鎌倉後期の政界に大変な力を持っていた。


重要な記述は、後日差し挟んだり(文字通りズバッと裁っています)、紙背に書きつけます。また、内容によって書体も書き分けていて、活字本ではわからない複製ならではの豊かな情報が満載。


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『花園院宸記』巻4 応長2年(1312)2月18日条裏書 (平成4年制作)
「三種の神器」のひとつ、八尺瓊曲玉(神璽)を納める箱を描いたもの。縦横に交差する線は箱を結ぶ紐。


花園天皇は絵もお得意。もちろん単なる気紛れではなく、後世に伝えるべき情報をイラストで示しているわけです。


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本展監修の坂口太郎氏は、2005年に「花園天皇日記研究会」を結成、同世代の日本史学・日本文学の若手研究者とともに、これまでに幾多の成果を発表されています。

11月26日には、本展監修の坂口太郎氏(日本学術振興会特別研究員PD)によるフロアレクチャーが開催されました。坂口氏には『花園院宸記』をめぐる時代背景や歴史資料としての位置づけについて、個人的見解をまじえて多くの興味深い解説をしていただきました。前述のような書体・墨の濃淡・文字の大きさ・抹消・改行・裏書きなどは、無機質な活字本からは到底得らない情報で、間近に触れられるコロタイプ複製の有効性についても賛辞をいただきました。


宮内庁書陵部のコロタイプ複製出版事業

『花園院宸記』を所管する宮内庁書陵部は、明治17年(1884)に宮内省図書寮として設置され、御系譜や帝室一切の記録を編修し、内外の書籍・古記・書画・美術の保存を司る機関でした。現在は、図書課・編修課・陵墓課より構成され、なかでも編修課では、皇室の事録を収集・編纂し、またその成果を出版しています。コロタイプ複製出版事業は昭和6~10年の『看聞御記』にはじまり、これまでに44件、便利堂はほぼすべての事業について複製制作を担当しております(文末【宮内庁書陵部によるコロタイプ複製一覧】参照)。くわしくはこちら「宮内庁書陵部におけるコロタイプ複製出版事業の意義について」小森正明(宮内庁書陵部)『玻璃彩11号』より

こうした国の宝を複製制作する目的は、ひとつに、あってはならないことですが、万一の原本亡失に備え代替品で危険分散すること、またひとつに研究・調査、教育・授業などで有効活用してもらうことにあります。宮内庁書陵部の複製事業も、多くの文化財が失われた大正12年の関東大震災を機にスタートしています。コロタイプは、原本をきわめて忠実に再現することはもちろん、「現代の写本」として永年保管に耐え得る品質をそなえておりますので、いずれの目的にもかなう唯一の技法といえます。



花園天皇の宸筆に触れる、またとない機会です。また同時代の周辺事情を補完する、コロタイプによる関連資料の展示も見逃せません。ぜひ足をお運びください。展示は12月6日(土)まで。開廊時間12:00-19:00。

※今まさに、プリンター石部さんが『花園院宸記』最後の巻35を刷っています。タイミングがよければギャラリーからその様子がみれるかも!


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【宮内庁図書寮・書陵部 コロタイプ複製一覧】

1.看聞御記(43巻) :昭和6~10年 
2.群書治要(47巻) :昭和11~16年 ※これのみ大塚巧芸社の制作
3.中右記 天仁2年冬 :昭和20年 
4.麓木抄 上 :昭和22年 
5.四分律音義 :昭和23年 
6.為兼卿和歌抄 :昭和24年
7.文館詞林 巻668 :昭和24年
8.類聚名義抄 :昭和25年
9.蓂明抄 :昭和25年
10.水左記 康平7年春夏 :昭和28年 康平7年秋冬 :昭和30年
11.むくら 3 :昭和31年
12.いはてしのふ :昭和31年
13.土右記 延久元年夏 :昭和32年
14.台記 保延5年夏 :昭和32年 仁平2年秋 :昭和34年
15.ささめこと :昭和33年
16.古今和歌集 :昭和35年
17.比良山古人霊託 :昭和36年
18.漂到流球国記 :昭和36年
19.琵琶譜 :昭和38年
20.御摂籙渡庄目録 :昭和39年
21.金葉和歌集 :昭和40年
22.天子摂関御影 天子巻 :昭和41年 摂関巻 :昭和42年 大臣巻 :昭和43年
23.洛中絵図 :昭和44年
24.平安朝往生伝集 :昭和45年
25.文机談 :昭和46年
26.維摩講師研学竪義次第 上 :昭和47年 下 :昭和48年
27.詩序集 下 :昭和49年
28.春記 長暦4年正月 :昭和50年
29.花園天皇宸翰集 :昭和51年
30.紀家集 :昭和52年
31.伏見天皇御集 夏部 :昭和53年
32.知国秘鈔 上 :昭和54年 下:昭和55年
33.新夜鶴抄 :昭和56年
34.桂別業図 :昭和57年
35.伏見天皇宸筆御置文 :昭和58年
36.椿葉記 :昭和59年
37.看聞日記巻5紙背文書 :昭和61年
38.梁塵秘抄口伝集巻10 :昭和62年
39.為兼為相等書状並案 :昭和62年
40.法性寺殿記 :昭和63年
41.源経信 琵琶譜 :平成元年
42.法華山縁起 :平成2年
43.渡宋記 :平成2年
44.花園院宸記(35巻) :平成3~26年


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2014.12.06 21:35 | | # [edit]


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