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《コロタイプギャラリー支配人(代理)から次回展のお知らせ》「モダニズムへの道程――写真雑誌『白陽』に見る構成派の表現」展

Posted by takumi suzuki on 26.2015 【コロタイプギャラリー】   1 comments   0 trackback
大正時代にプリントされた構成派のコロタイプ23点がご覧いただける貴重な機会です!
2015年9月1日(火)~12日(土) 11:00~18:00 ※日曜日休廊

マーボイストの肖像淵上白陽トリミング済み1
1. 「マーボイストの肖像」(部分)淵上 白陽 『白陽』第5巻第6号 1926

こんにちは。コロタイプギャラリー支配人代理の鈴木です。今年の4月に入社しました。このたびコロタイプギャラリーでの展覧会をはじめて担当します。どうぞよろしくお願いします。

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さて、コロタイプギャラリーでは9月1日より「モダニズムへの道程――写真雑誌『白陽』に見る構成派の表現」展を開催します! 本展では、大正から昭和期に活躍した写真家・淵上白陽(ふちかみ・はくよう 本名 清喜:1889~1960)が刊行した写真雑誌『白陽』で活躍した〈構成派〉の写真家たちに焦点を当て、『白陽』に掲載されたコロタイプ・プリント23点を一堂に展示します。


写真雑誌『白陽』とは?

『白陽』は、神戸在住であった淵上白陽が中心となり、1922年(大正11年)に創刊された月刊の芸術写真誌です。経済的、時間的制約と向き合いつつ、刊行当初は、絵画のような画面を写真でつくりあげる「ピクトリアリズム」(=絵画主義)の写真を掲載していました。しかし、『白陽』に関わる作家たちは、関東大震災を経て1925年に入ると、被写体を幾何学的に組み合わせる「構成派」と呼ばれる表現を志向するようになります。

なかなか耳にすることも少ないと思われる「構成派」というこの動向。いったいどういう作風なのでしょうか? 簡単に本展の見どころを紹介したいと思います。


見どころ その①:構成派のまとまった作品群

白陽展展示風景04

今回展示する作品は、淵上白陽をはじめとする写真家たち――津坂 淳(つさか・じゅん)、高濱 亀三郎(たかはま・かめさぶろう)、西 亀久二(にし・きくに)、福田 勝治(ふくだ・かつじ)、唐 武(から・たけし)、高田 皆義(たかだ・みなよし)、馬場 八潮(ばば・やしお)、平尾 銓爾(ひらお・せんじ)、松尾 才五郎(まつお・さいごろう)――によるもので、白陽を中心とする彼らは「構成派」とよばれています。

大学では写真史の授業も受講していたのですが、わたしは恥ずかしながら、彼らの作品について知りませんでした。というのも、これまで構成派を正面から取り上げた展覧会は、名古屋市美術館で行われた『構成派の時代』展(1992年)以外に、ほとんどなく、世間一般に知られる機会が少なかったことが要因のひとつであると思います。弊社ギャラリーの展示スペースの都合から、各作家を網羅的に紹介することは困難ですが、それでもなお、これだけの点数をまとめてオリジナル・プリントで目にすることができる本展は、日本のみならず世界的に見ても貴重な機会となるでしょう。


見どころ その②:幾何学的な画面構成

円と人体の構成淵上白陽トリミング済み
A. 淵上白陽「円と人体の構成」 『白陽』第5巻第6号 1926

画面右下に大きな黒い円があり、その背後には白い円が重なっています。左側には小さな黒い円が見えますが、この周りを見ていくと、これが裸体に近い男性の頭部であることがわかります。一見しただけでは見逃してしまいそうですが、すらっと伸びた手足でポーズをとる男性であることに気が付くと、なんともいえない、少しぞっとするような気持になりますね。作品タイトルを見ると気が付きやすいかもしれません。

ブリッジ 津坂淳トリミング済み
B. 津坂 淳「ブリッヂ」 『白陽』第5巻第6号 1926

次はこちらです。画面上を黒々とした太い線が折れ曲がっているように見えます。画面中央に見えるのは電柱でしょうか…? 光と影が織りなす輪郭のぼやけた線を目にすると、被写体同士の境界があいまいになるとともに、自分が知っているはずのものも不明瞭になっていくような気がします。作品タイトルは「ブリッジ」ですが、タイトルを参考にする前に、抽象化された被写体がなにであるのかを考えるのも、なかなか面白いかもしれませんね。


見どころ その③:コロタイプ印刷による重厚なトーン

どよめく空気 西 亀久二トリミング済み
6. 西亀久二「どよめく空気」 『白陽』第5巻第3号 1926

本展の出品作は、すべて1925~26年に制作されたコロタイプ・プリントです。残念ながら便利堂工房製ではありませんが、90年を経てもなお黒々とした画面は、コロタイプ・インキの耐候性と暗部における力強さを証明しています。しかし、それにもまして、個人的にこれらの作品から受けた印象は、重苦しい空気感でした。そのようにわたしが感じた要因として、1923年に起きた関東大震災が挙げられるかもしれません。震災をきっかけに関西へ拠点を移した福田勝治が、『白陽』をきっかけに西亀久二との交流をもっていたように、この震災が各都市における作家同士の交流を促すという側面も少なからずあったようですが、構成派の活動を振り返る上では考えさせられる出来事ではないかと思います。

風景 高田皆義 トリミング済み
15. 高田皆義「風景」 『白陽』第4巻第3号 1925

作家たちはこの震災をどこまで意識していたかはわかりません。ですが、展示作品の中には、震災後の荒廃した土地が都市へと急速に生まれ変わる際の違和感や、1931年の満州事変へとなだれ込む日本の「その後」の空気を現代に伝える何かが、確かにあるように思えます。コロタイプ・インキにより実現されるこの重厚感は同時に、これらの写真が持つ退廃的かつ幻想的な美しさを付与することに貢献しています。こうした表現もコロタイプならではと言えるのではないでしょうか。

静物 松尾才五郎トリミング済み
19. 松尾才五郎「静物」 『白陽』第5巻第2号 1926

『白陽』は経済的・時間的な制約をのり越え、高品質なコロタイプ・プリントにこだわり続けていました。本展では、その成果として残された精巧なコロタイプ・プリントを通して、『白陽』に掲載された構成派の作品群を垣間見ることができるとともに、彼らの探究心を技術面から支えた日本のコロタイプの技術力の高さを感じていただけることかと思います。普段はなかなか目にする機会の少ない貴重な作品群を、この機会にぜひご高覧下さい。

飯沢耕太郎氏(写真評論家)による展覧会レビュー artscape アートスケープ
http://artscape.jp/report/review/10112930_1735.html
※本展は、表参道画廊での展覧会の巡回展となります。


金子隆一氏によるギャラリートークを開催!

展覧会最終日にあたる9月12日(土)13時30分からは、本展の企画者である金子隆一氏(写真史家)によるギャラリートークを開催いたします。構成派の写真家と彼らが手掛けた作品が、日本写真史上にどのように位置づけられているのか、また、それらの作品はどのように評価されているのかなど、本展をより多様な視点からご覧いただける絶好の機会となりますので、こちらも是非お越しください!

【日時】2015年9月1日(火)~12日(土) ※日曜休廊
【開廊時間】11:00~18:00
【会場】便利堂コロタイプギャラリー (株式会社 便利堂 京都本社1階) 《地図》 ※入場無料

■写真史家・金子隆一氏によるギャラリートーク 9月12日(土)13:30~15:00 無料

※コロタイプギャラリーのフェイスブック開設しました
Facebook.com/benrido.collotype.gallery


■出品リスト

A. 淵上白陽「円と人体の構成」     『白陽』第5巻第6号 1926
B. 津坂 淳「ブリッヂ」        『白陽』第5巻第6号 1926
C. 高濱亀三郎「コンストラクション」  『白陽』第5巻第8号 1926

1. 淵上白陽「マーボイストの肖像」   『白陽』第5巻第6号 1926
2. 淵上白陽「静物」          『白陽』第4巻第3号 1925
3. 淵上白陽「静物」          『白陽』第4巻第1号 1925
4. 淵上白陽「コンストラクシオン」   『白陽』第4巻第6号 1925
5. 淵上白陽「静物」          『白陽』第5巻第3号 1926
6. 西亀久二「どよめく空気」      『白陽』第5巻第3号 1926
7. 西亀久二「幻想」          『白陽』第4巻第9号 1925
8. 西亀久二「二人の男」        『白陽』第5巻第5号 1926
9. 西亀久二「コンストラクシオン」   『白陽』第4巻第10号 1925
10. 西亀久二「静物」          『白陽』第5巻第6号 1926
11. 西亀久二「輝ける構成」       『白陽』第5巻第2号 1926
12. 福田勝治「静物」          『白陽』第5巻第5号 1926
13. 唐  武「静物」          『白陽』第5巻第2号 1926
14. 高田皆義「静物」          『白陽』第5巻第5号 1926
15. 高田皆義「風景」          『白陽』第4巻第3号 1925
16. 馬場八潮「静物」          『白陽』第4巻第3号 1925
17. 馬場八潮「肖像」          『白陽』第5巻第6号 1926
18. 平尾銓爾「布良風景 其の三」    『白陽』第5巻第6号 1926
19. 松尾才五郎「静物」         『白陽』第5巻第2号 1926
20. 松尾才五郎「研究」         『白陽』第5巻第6号 1926

■出品作家略歴:

淵上 白陽(ふちかみ・はくよう)1889-1960年(明治22-昭和35年)
熊本県に生まれる。本名、清喜(きよき)。長崎と大阪で写真を学び、1918年(大正7年)、神戸市布引にスタジオを開設する。1919年(大正8年)に白陽写真場を設立する。1920年(大正9年)、芸術写真の研究を目的に、神戸赤窓会を設立する。1922年(大正11年)、白陽画集社を設立し、写真雑誌『白陽』を創刊する。同年、「日本光画芸術協会」を設立。1926年(大正15年)、『白陽』を廃刊するが、南満州鉄道総務部の八木沼丈夫の勧めにより1928年(昭和3年)大連に移住する。満洲へ渡ったのちは、満鉄総裁室広報課嘱託として、情報・宣伝活動を担当する一方で、1934年(昭和9年)には満州写真作家協会を結成するなど精力的に活動する。

津坂 淳(つさか・じゅん)1900-1963年(明治33 -昭和38年)
愛知県に生まれる。三菱重工に入社し、神戸造船所、名古屋航空機製作所で材料試験の工師として勤務し、写真技術は仕事を通じて習得する。1923年(大正12年)に高田皆義とともに中央光画会を設立する。

高濱 亀三郎(たかはま・かめさぶろう)1894-1942年(明治27-昭和17年)
姫路市に生まれる。同市龍野町で製麺業を営むかたわら写真をはじめる。神戸に頻繁に通い、神戸の写真家と交流を持つようになる。国内外のマッチ箱やタバコのパッケージを収集し、それらを作品のモチーフとして用いていた。日本光画協会会員。

西 亀久二(にし・きくに)1899-1944年(明治32-昭和19年)
大阪市に生まれる。1923年(大正12年)、堺市へ転居し、兄とともに材木商を営む。1925年(大正14年)、第一回赤玉盃獲得写真協議会において、7点が入選、佳作となる。翌1926年(大正15年)の第二回赤玉盃では、淵上白陽、高田皆義、中嶋謙吉とともに審査員を務める。

福田勝治(ふくだ・かつじ)1899-1991年(明治32-平成3年)
防府に生まれる。1917年(大正6年)に上京するが、1923年(大正12年)の関東大震災後に堺へ移住する。『白陽』を通じて西 亀久二に私淑し、構成派の表現スタイルを取り入れるようになる。第一回日本写真美術展推薦賞、イルフォード・ダイヤモンド賞を受賞する。1928年(昭和3年)に再度上京。女性写真の第一人者となる。

唐 武(から・たけし)1902-1990年((明治35-平成2年)
盛岡市に生まれる。父の死後、京都の小林裕史のもとで修業したのち、叔父の唐健吾とともに東北写真館を継ぐ。日本光画協会盛岡市部を発足。岩手光画研究会、陽影倶楽部同人。1926年(大正15年)、唐たけし写場を開設、盛岡写真連盟の理事を務める。

高田 皆義(たかだ・みなよし)1899-1982年((明治32-昭和57年)
愛知県に生まれる。家業の証券会社を手伝うかたわら、成田春陽のもとに出入りし、淵写真をはじめる。淵上白陽の主義に憧憬し、1923年(大正12年)中央光画会を設立する。日本写真会、日本光画協会、N.C.C(名古屋カメラクラブ)同人。淵上白陽とともに赤玉盃写真協議会の審査員を務める。

馬場 八潮(ばば・やしお)1903-1974年(明治36-昭和49年)
長崎県に生まれる。1920年(大正9年)、神戸の営業写真家、福留巳年が経営する「大紀写真館に入門する。福留の紹介により、女流写真家、南部初枝が経営する明石市の「南部写真館」に技師として勤める。「日本光画芸術協会」「日本光画協会」に所属。1931年(昭和6年)に渡満したのち、淵上白陽とともに満州写真作家協会を設立。帰国後、明石市内で写真館を経営する。

平尾 銓爾(ひらお・せんじ)生没年不詳
出身地不明。静岡の静岡光玄会に所属。1922年(大正11年)に刊行された『白陽』における初の特別号で作品が紹介され、淵上白陽から「日本写壇のセザンヌ」と高く評価される。

松尾 才五郎(まつお・さいごろう)1905-1956年(明治38-昭和31年)
京都市に生まれる。同志社中学中退後、生家の呉服商を継ぐ。関西美術院で洋画を学び、京都の営業写真家後藤元彦の影響により写真を始める。K.P.S(Kyoto Photographic Society)、日本光画協会会員。他に広告写真作家協会会長、京都写真連盟審査員を務める。

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【コロタイプの過去・現在・未来。創業明治20年の京都 便利堂が100年以上にわたって続けているコロタイプ工房より最新の情報をお届けします】
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