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便利堂コロタイプギャラリー春季展 桑嶋維「朱殷:日本に在る色 / Shuan: The Color of Japan」始まりました!
2016年の初公開依頼、7年ぶりに「あの牛」が返ってきました! そのほか4シリーズ作も一堂に!
会期:2023年4月14日(金)~6月4日(日) @便利堂 コロタイプギャラリー

みなさんこんにちは! 『便利堂だより』でおなじみの前田です。山吹や菜の花が咲きほころび、外出が楽しい季節がやってきましたね。 コロタイプギャラリーでも本日から新しい展示「桑嶋維◎朱殷(シュアン):日本に在る色 / Shuan: The Color of Japan」が始まりました。。
桑嶋さんは、広告、雑誌の撮影をこなす傍ら、2005年以降から『闘牛島・徳之島』(平凡社)、『朱殷』(求龍堂)などの写真集での作品発表や執筆活動を展開されています。今回の展示は、《極光》《真夏の死》《永遠のアイドル》《久遠》《羊羹 「夜の梅」》の5つのシリーズで構成されています。

中でもそのサイズで目を引くのは、徳之島に生きた伝説の闘牛チャンピオンの全盛期と死に直面する様を写した巨大なポートレートのインスタレーション《真夏の死》です。鉄のフレームに囲まれたコロタイプ作品には、闘牛の盛り上がる筋肉、黒光りする毛並み、堂々たる体躯が余すところなく映し出されています。反対側に回ると、死を目前に一回り小さくなった身体と、それでもなお静かな光を宿す瞳に思わず吸い寄せられます。まるで目の前に闘牛がたたずんでいるかのような圧倒的な存在感は、ふと手を伸ばして作品に触れたくなるほどです。2016年にこのコロタイプギャラリーで発表されて以来、7年ぶりの里帰り展示となります。
当時の記事はこちら 》》 桑嶋維コロタイプ写真展:真夏の死

ぜひ中に入って天井を見上げてください。そこにも作品が!
桑嶋さんはコロタイプを選んだ理由を「印画紙とは違い、質量を感じたから」と話しています。「ただ作品が大きいというだけではなく、そこに質量がともなうことで見る人にリアルさを直に伝えてくれる。そのためにはどうしてもコロタイプでなければならなかった。」《真夏の死》には、実はある仕掛けが施されています。作品の内側が空洞になっていて、見る人が中に入ることで初めて作品が完成するのです。内側のフレーム部分の鉄はところどころ、人の手が触れる箇所が錆びています。「人が動物とともに暮らすには鉄が不可欠。だからこそ、鉄で闘牛をくるみたかった」と桑嶋さんは言います。「人が作品を見ることで、見る人に闘牛と一緒に時を重ねてもらいたかった。それがわかるように無垢な鉄を使い、人が触れると錆びるようにしています。人が老いるように、鉄が錆びていくことで、作品は変化しながらずっと生き続けていくんです。」

《永遠のアイドル》よりカラーコロタイプによる作品(右) 本邦初公開
そのほかのシリーズを簡単にご紹介すると、
・縄文時代に制作された「土偶」をモチーフにした作品《永遠のアイドル》
・縄文土器の中で「人」を用いて制作された土器をモチーフにした作品《久遠》
・和菓子の原点とも言え、室町時代から続く虎屋の羊羹「夜の梅」で谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」を令和に再現した作品《羊羹 「夜の梅」》
・ネオン管の明かり、色は人間の欲望の象徴と捉えて、東京の街をネオンで描いた作品《極光》

《久遠》
《永遠のアイドル》と《久遠》、この二つのシリーズのテーマは「愛」。「古代において人間の文化は「建築」か「絵画」の何方かに分かれていると言われていますが、ここ日本では「土器」、「土偶」という立体物がそれにあたり、言葉の無い時代において、これらは伝達手段でもあったんです。「土偶」、「土器」は言葉の無い手紙、現代のラブレターであり、それらに刻まれた(線刻)=メッセージを浮き彫りにすべく、ネガポジ反転でのプリントで制作しました。」
《久遠》のシリーズでは、カラーとモノクロの2作品を2013年のロンドンでの個展に合わせてコロタイプで制作しました。今回は10年ぶり、日本では初の公開となります。
当時の記事はこちら 》》 The Eternal Idol 「久遠―永遠のアイドル」

《羊羹 「夜の梅」》
《羊羹 「夜の梅」》は、「在(存在)」のテーマにしています。和式建築のうす暗い部屋の中にあって、日の光を吸い取っては、ほのかに明るく光を放つ様は宇宙の中心、万物の存在の真ん中を見ているようです。

《極光》
《極光》は、ネオンに彩られた街の喧騒を用いた光のペイントで各国の首都などを描くシリーズの「東京編」。街の喧騒(空気感)をフィルムに取り込もうと、レンズという壁を取り外して、ピンホールカメラで冬の夜の街を8時間かけて歩きまわり制作されているそうです。
これらの作品をまとめる展示タイトル「朱殷」とは、日本で唯一、時間が経った血の色を表した言葉です。日本独自の言葉に、桑嶋さんは文化や日本人の正義感、どんな風に生きるかの指針となる道徳的な心を見たそうです。今回の展示では、彼が日本らしいと考える場所やものを厳選し、光や色がさまざまな手法で表されています。「作品は変化しながらずっと生き続けていく」と話す彼の言葉通り、見る人が自由に想像し、自由に色を付けながら、今回の展示をお楽しみいただけると幸いです。
百聞は一見にしかず。ぜひ、コロタイプギャラリーへお立ち寄りください。みなさまのお越しをお待ちしております!
◆
便利堂コロタイプギャラリー春季企画展 桑嶋維「朱殷:日本に在る色 / Shuan: The Color of Japan」
会期:2023年4月14日(金)~6月4日(日)
開廊:10:00 〜 17:00
休廊:会期中無休、ただし 12:00 〜 13:00は休廊
入場:無料
場所:便利堂コロタイプギャラリー
※5月4日15時より作家によるトークショウを開催予定。

会期:2023年4月14日(金)~6月4日(日) @便利堂 コロタイプギャラリー

みなさんこんにちは! 『便利堂だより』でおなじみの前田です。山吹や菜の花が咲きほころび、外出が楽しい季節がやってきましたね。 コロタイプギャラリーでも本日から新しい展示「桑嶋維◎朱殷(シュアン):日本に在る色 / Shuan: The Color of Japan」が始まりました。。
桑嶋さんは、広告、雑誌の撮影をこなす傍ら、2005年以降から『闘牛島・徳之島』(平凡社)、『朱殷』(求龍堂)などの写真集での作品発表や執筆活動を展開されています。今回の展示は、《極光》《真夏の死》《永遠のアイドル》《久遠》《羊羹 「夜の梅」》の5つのシリーズで構成されています。

中でもそのサイズで目を引くのは、徳之島に生きた伝説の闘牛チャンピオンの全盛期と死に直面する様を写した巨大なポートレートのインスタレーション《真夏の死》です。鉄のフレームに囲まれたコロタイプ作品には、闘牛の盛り上がる筋肉、黒光りする毛並み、堂々たる体躯が余すところなく映し出されています。反対側に回ると、死を目前に一回り小さくなった身体と、それでもなお静かな光を宿す瞳に思わず吸い寄せられます。まるで目の前に闘牛がたたずんでいるかのような圧倒的な存在感は、ふと手を伸ばして作品に触れたくなるほどです。2016年にこのコロタイプギャラリーで発表されて以来、7年ぶりの里帰り展示となります。
当時の記事はこちら 》》 桑嶋維コロタイプ写真展:真夏の死

ぜひ中に入って天井を見上げてください。そこにも作品が!
桑嶋さんはコロタイプを選んだ理由を「印画紙とは違い、質量を感じたから」と話しています。「ただ作品が大きいというだけではなく、そこに質量がともなうことで見る人にリアルさを直に伝えてくれる。そのためにはどうしてもコロタイプでなければならなかった。」《真夏の死》には、実はある仕掛けが施されています。作品の内側が空洞になっていて、見る人が中に入ることで初めて作品が完成するのです。内側のフレーム部分の鉄はところどころ、人の手が触れる箇所が錆びています。「人が動物とともに暮らすには鉄が不可欠。だからこそ、鉄で闘牛をくるみたかった」と桑嶋さんは言います。「人が作品を見ることで、見る人に闘牛と一緒に時を重ねてもらいたかった。それがわかるように無垢な鉄を使い、人が触れると錆びるようにしています。人が老いるように、鉄が錆びていくことで、作品は変化しながらずっと生き続けていくんです。」

《永遠のアイドル》よりカラーコロタイプによる作品(右) 本邦初公開
そのほかのシリーズを簡単にご紹介すると、
・縄文時代に制作された「土偶」をモチーフにした作品《永遠のアイドル》
・縄文土器の中で「人」を用いて制作された土器をモチーフにした作品《久遠》
・和菓子の原点とも言え、室町時代から続く虎屋の羊羹「夜の梅」で谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」を令和に再現した作品《羊羹 「夜の梅」》
・ネオン管の明かり、色は人間の欲望の象徴と捉えて、東京の街をネオンで描いた作品《極光》

《久遠》
《永遠のアイドル》と《久遠》、この二つのシリーズのテーマは「愛」。「古代において人間の文化は「建築」か「絵画」の何方かに分かれていると言われていますが、ここ日本では「土器」、「土偶」という立体物がそれにあたり、言葉の無い時代において、これらは伝達手段でもあったんです。「土偶」、「土器」は言葉の無い手紙、現代のラブレターであり、それらに刻まれた(線刻)=メッセージを浮き彫りにすべく、ネガポジ反転でのプリントで制作しました。」
《久遠》のシリーズでは、カラーとモノクロの2作品を2013年のロンドンでの個展に合わせてコロタイプで制作しました。今回は10年ぶり、日本では初の公開となります。
当時の記事はこちら 》》 The Eternal Idol 「久遠―永遠のアイドル」

《羊羹 「夜の梅」》
《羊羹 「夜の梅」》は、「在(存在)」のテーマにしています。和式建築のうす暗い部屋の中にあって、日の光を吸い取っては、ほのかに明るく光を放つ様は宇宙の中心、万物の存在の真ん中を見ているようです。

《極光》
《極光》は、ネオンに彩られた街の喧騒を用いた光のペイントで各国の首都などを描くシリーズの「東京編」。街の喧騒(空気感)をフィルムに取り込もうと、レンズという壁を取り外して、ピンホールカメラで冬の夜の街を8時間かけて歩きまわり制作されているそうです。
これらの作品をまとめる展示タイトル「朱殷」とは、日本で唯一、時間が経った血の色を表した言葉です。日本独自の言葉に、桑嶋さんは文化や日本人の正義感、どんな風に生きるかの指針となる道徳的な心を見たそうです。今回の展示では、彼が日本らしいと考える場所やものを厳選し、光や色がさまざまな手法で表されています。「作品は変化しながらずっと生き続けていく」と話す彼の言葉通り、見る人が自由に想像し、自由に色を付けながら、今回の展示をお楽しみいただけると幸いです。
百聞は一見にしかず。ぜひ、コロタイプギャラリーへお立ち寄りください。みなさまのお越しをお待ちしております!
◆
便利堂コロタイプギャラリー春季企画展 桑嶋維「朱殷:日本に在る色 / Shuan: The Color of Japan」
会期:2023年4月14日(金)~6月4日(日)
開廊:10:00 〜 17:00
休廊:会期中無休、ただし 12:00 〜 13:00は休廊
入場:無料
場所:便利堂コロタイプギャラリー
※5月4日15時より作家によるトークショウを開催予定。

早くも10年目! 「コロタイプ手刷りプリントのおもしろさ」展、好評開催中!
創業135周年の節目の年に祝・第10回!
2022年6月20日(月)~7月8日(金)@便利堂コロタイプギャラリー

皆さんこんにちは。便利堂では社員自らが作品を作り、プリントの難しさや技術を体験し、学べる社員向けワークショップイベントを年に1回行い、創立記念日の7月1日前後の会期で「コロタイプ手刷りプリントのおもしろさ」展を開催しています。この恒例の社員WS展も早くも10年目を迎えました。そして本年は便利堂の創業135周年でもあります。さて、この記念すべき年に受賞した作品は? 本展のみどころを、展示を担当した清さんにお聞きしました。

―――「コロタイプ手刷りプリントのおもしろさ」展、今年は記念すべき10回目ですね!
「大きな節目を迎えました。そもそも社員向けワークショップは、コロタイプ技術の魅力をより多くの人に知ってもらうために、まずは社員自らがコロタイプの魅力を知ろう!という思いから始まりました。単に技術の知識を持つのではなく、ワークショップでコロタイプを実践することで印刷の難しさや技師の技術力が実感としてわかります。さらに自分で満足できる作品を刷り上げたときの高揚感も体験できます。体験することでコロタイプの話にも力が入ります。そんなわけで社員それぞれが撮影した写真を持ち寄り、年に1回社内でコロタイプワークショップを行い、毎年創立記念日の7月1日頃に展覧会を開催しています。」

―――この展示をごらんいただいて「ご自分でもやってみたい!」と、便利堂が開講している「コロタイプアカデミー」にご参加いただきワークショップを体験された方もいらっしゃいます。
「そうですね。コロタイプとは古くからある、写真を印刷するための技法のことで、その細緻な表現力から文化財の複製や、作家の作品作りにも用いられています。コロタイプでカラー表現ができるのは世界でもほかにはない、わたしたち独自の技術です。便利堂では一般の方にもコロタイプで作品をつくっていただけるよう「コロタイプアカデミー」を開講し、みなさんの興味に合わせて講師が指導しています。自分で撮った写真を自分でプリントする楽しさは格別です。ぜひ体験していただきたいですね。」
⇒コロタイプアカデミーについてくわしくは専用サイトまで
www.benrido.co.jp/academy
―――清さんは毎回展示を担当されています。10回目の今年はいかがでしたか?
「一段とすばらしかったです。毎年感じることですが、作品にはその人の人となりが垣間見えます。会社で合わせる顔とはまた違った印象の作品を見ると、その人の新しい一面を知ったような何ともうれしい気持ちになります。みんなセンスがいいなあとつくづく思いました。あともう1点、今年はぜひ色に注目してご覧いただきたいですね。そもそもコロタイプのインキにはたくさんの色があり、それを掛け合わせてさまざまな表現をします。今回の社員ワークショップでは黒、茶色、青の3色のインキが用意されていましたが、それをもとにセピア調や青みがかったグレーなど、それこそ人の数だけ色が生まれていて、色彩の豊かさに驚かされっぱなしでした。一つとして同じ色がないところに、コロタイプの面白さを感じましたね。」

左より:マイスター山本とインキ、乾燥中のティシュー(中央上)とぬるま湯でゼラチンをふやかし中のティシュー、グリセリンをしみこませる(右上)とバックミュージック
―――確かに、色を重ねるたび新しい表現が生まれました。そういえば毎年参加していると、いろんなところでやり方が少しずつ変わっているのに気が付きます。
「コロタイプ研究所ではマイスター山本さんによって、日々、よりよい作品作りのための研究が行われています。もっとわかりやすく、もっとよい作品を、そんなマイスターのスタンスは社員ワークショップでも存分に発揮されています。ワークショップ用の版には、ティシューと呼ばれる写真フィルムに感光材を含ませたものを使用します。写真フィルムには表面にゼラチン塗布されていますが、このゼラチンが版になり、そこにインキを乗せてプリントします。そのティシューは印刷するために水でゼラチンをふやかしたあとグリセリンを含ませる必要があるのですが、今回はいつもは水ではなく、ぬるま湯を用いて、そのあとのグリセリンの工程でよりしみ込みやすくするという工夫がされていました。そうすることで版はたっぷりと水分を蓄え、そこに油性のインキがうまく合わさり無理なくプリントできます。そのおかげでしょう。今まで数枚で調子が悪くなっていたところ、なんと今年は多い人で10枚以上プリントできていました。進化を遂げる研究所の成果を社員が体験できる貴重なひとときでした。」
⇒コロタイプティシューについて、くわしくはこちら
―――ワークショップの間、レコードプレーヤーから音楽が流れていましたね。
「これも今年のトピックスの一つですね。マイスター山本さんが中学の頃に買ったというプレーヤーで、参加者たちは矢沢永吉、山下達郎、大瀧詠一など、彼のレコードコレクションを楽しみながらプリントできました。そこから会話も生まれ、みんなのびのび楽しんでいたのが印象的でした。豊かな時間が流れていましたね。」

―――本当ですね。さて、今回は10回目ということで特別な副賞が用意されました。
「例年、出展作品の中から社員と来場者の投票で優秀作品を決定し、見事受賞した人は便利堂創立記念式典(7月1日)で表彰されますが、今年はなんと副賞として各受賞者に「コロフル」による作品作りが贈られます。コロフルとは、コロタイプをリーズナブルな価格で気軽に注文していただけるオーダーサイトです。自分が撮影した写真を名刺やはがき、8×10サイズなどにプリントしていただけるよう、3つのラインナップをご用意しています。副賞の発表で、社員のみんなの士気が一気に高まりました。受賞者のコロフル取り組みの様子は後日、取材してくわしくお伝えいたします。コロフルを試してみたい!と気になっている方はぜひ楽しみになさってください。」
⇒コロフルについて詳しくは、こちらの専用サイトまで
www.collo-full.com
―――さていよいよ、記念すべき第10回社員WS展&創業135周年の節目の受賞結果はいかがだったでしょう?
「力作ぞろいで、毎回入賞者を決めるのが心苦しいですが。。。社内外の方々からの投票結果をもとに、恒例の4つの賞が選ばれました。投票には、修学旅行で京都を訪れた学生さんたちも参加していただいたんですよ。ではまず、ユニーク賞から順にご紹介します。」
◎ユニーク賞 西川さん「家族のカタチ」

副賞〔コロフル:はがきサイズ&名刺〕
◎敢闘賞 白水さん「時がながれ、おぼろになる」

副賞〔コロフル:はがきサイズ&名刺〕
◎社長賞 鈴木さん「ヤギ」

副賞〔コロフル:名刺〕
◎最優秀賞 西村さん「来たー!」

副賞〔コロフル:8×10サイズ&名刺〕

みなさん、おめでとうございました!
この社員展では、コロタイプの技術を持たない社員たちが自分で撮った写真を手刷りでプリントしています。一枚として同じものがない手刷りの面白さをみなさまにも感じていただけるとうれしいです。今月20日まで開催中! ぜひお越しください。
◆
【開催概要】
第10回 コロタイプ手刷りプリントのおもしろさ展
会期:2022年6月20日(月)~7月8日(金)
時間:平日10時~17時
休廊日時:全日12時~13時、および土日祝日はお休み
入場:無料
会場:便利堂本社1FコロタイプギャラリーⅠ
(京都市中京区新町通竹屋町下ル弁財天町 302)
主催:株式会社便利堂
2022年6月20日(月)~7月8日(金)@便利堂コロタイプギャラリー

皆さんこんにちは。便利堂では社員自らが作品を作り、プリントの難しさや技術を体験し、学べる社員向けワークショップイベントを年に1回行い、創立記念日の7月1日前後の会期で「コロタイプ手刷りプリントのおもしろさ」展を開催しています。この恒例の社員WS展も早くも10年目を迎えました。そして本年は便利堂の創業135周年でもあります。さて、この記念すべき年に受賞した作品は? 本展のみどころを、展示を担当した清さんにお聞きしました。

―――「コロタイプ手刷りプリントのおもしろさ」展、今年は記念すべき10回目ですね!
「大きな節目を迎えました。そもそも社員向けワークショップは、コロタイプ技術の魅力をより多くの人に知ってもらうために、まずは社員自らがコロタイプの魅力を知ろう!という思いから始まりました。単に技術の知識を持つのではなく、ワークショップでコロタイプを実践することで印刷の難しさや技師の技術力が実感としてわかります。さらに自分で満足できる作品を刷り上げたときの高揚感も体験できます。体験することでコロタイプの話にも力が入ります。そんなわけで社員それぞれが撮影した写真を持ち寄り、年に1回社内でコロタイプワークショップを行い、毎年創立記念日の7月1日頃に展覧会を開催しています。」

―――この展示をごらんいただいて「ご自分でもやってみたい!」と、便利堂が開講している「コロタイプアカデミー」にご参加いただきワークショップを体験された方もいらっしゃいます。
「そうですね。コロタイプとは古くからある、写真を印刷するための技法のことで、その細緻な表現力から文化財の複製や、作家の作品作りにも用いられています。コロタイプでカラー表現ができるのは世界でもほかにはない、わたしたち独自の技術です。便利堂では一般の方にもコロタイプで作品をつくっていただけるよう「コロタイプアカデミー」を開講し、みなさんの興味に合わせて講師が指導しています。自分で撮った写真を自分でプリントする楽しさは格別です。ぜひ体験していただきたいですね。」
⇒コロタイプアカデミーについてくわしくは専用サイトまで
www.benrido.co.jp/academy
―――清さんは毎回展示を担当されています。10回目の今年はいかがでしたか?
「一段とすばらしかったです。毎年感じることですが、作品にはその人の人となりが垣間見えます。会社で合わせる顔とはまた違った印象の作品を見ると、その人の新しい一面を知ったような何ともうれしい気持ちになります。みんなセンスがいいなあとつくづく思いました。あともう1点、今年はぜひ色に注目してご覧いただきたいですね。そもそもコロタイプのインキにはたくさんの色があり、それを掛け合わせてさまざまな表現をします。今回の社員ワークショップでは黒、茶色、青の3色のインキが用意されていましたが、それをもとにセピア調や青みがかったグレーなど、それこそ人の数だけ色が生まれていて、色彩の豊かさに驚かされっぱなしでした。一つとして同じ色がないところに、コロタイプの面白さを感じましたね。」

左より:マイスター山本とインキ、乾燥中のティシュー(中央上)とぬるま湯でゼラチンをふやかし中のティシュー、グリセリンをしみこませる(右上)とバックミュージック
―――確かに、色を重ねるたび新しい表現が生まれました。そういえば毎年参加していると、いろんなところでやり方が少しずつ変わっているのに気が付きます。
「コロタイプ研究所ではマイスター山本さんによって、日々、よりよい作品作りのための研究が行われています。もっとわかりやすく、もっとよい作品を、そんなマイスターのスタンスは社員ワークショップでも存分に発揮されています。ワークショップ用の版には、ティシューと呼ばれる写真フィルムに感光材を含ませたものを使用します。写真フィルムには表面にゼラチン塗布されていますが、このゼラチンが版になり、そこにインキを乗せてプリントします。そのティシューは印刷するために水でゼラチンをふやかしたあとグリセリンを含ませる必要があるのですが、今回はいつもは水ではなく、ぬるま湯を用いて、そのあとのグリセリンの工程でよりしみ込みやすくするという工夫がされていました。そうすることで版はたっぷりと水分を蓄え、そこに油性のインキがうまく合わさり無理なくプリントできます。そのおかげでしょう。今まで数枚で調子が悪くなっていたところ、なんと今年は多い人で10枚以上プリントできていました。進化を遂げる研究所の成果を社員が体験できる貴重なひとときでした。」
⇒コロタイプティシューについて、くわしくはこちら
―――ワークショップの間、レコードプレーヤーから音楽が流れていましたね。
「これも今年のトピックスの一つですね。マイスター山本さんが中学の頃に買ったというプレーヤーで、参加者たちは矢沢永吉、山下達郎、大瀧詠一など、彼のレコードコレクションを楽しみながらプリントできました。そこから会話も生まれ、みんなのびのび楽しんでいたのが印象的でした。豊かな時間が流れていましたね。」

―――本当ですね。さて、今回は10回目ということで特別な副賞が用意されました。
「例年、出展作品の中から社員と来場者の投票で優秀作品を決定し、見事受賞した人は便利堂創立記念式典(7月1日)で表彰されますが、今年はなんと副賞として各受賞者に「コロフル」による作品作りが贈られます。コロフルとは、コロタイプをリーズナブルな価格で気軽に注文していただけるオーダーサイトです。自分が撮影した写真を名刺やはがき、8×10サイズなどにプリントしていただけるよう、3つのラインナップをご用意しています。副賞の発表で、社員のみんなの士気が一気に高まりました。受賞者のコロフル取り組みの様子は後日、取材してくわしくお伝えいたします。コロフルを試してみたい!と気になっている方はぜひ楽しみになさってください。」
⇒コロフルについて詳しくは、こちらの専用サイトまで
www.collo-full.com
―――さていよいよ、記念すべき第10回社員WS展&創業135周年の節目の受賞結果はいかがだったでしょう?
「力作ぞろいで、毎回入賞者を決めるのが心苦しいですが。。。社内外の方々からの投票結果をもとに、恒例の4つの賞が選ばれました。投票には、修学旅行で京都を訪れた学生さんたちも参加していただいたんですよ。ではまず、ユニーク賞から順にご紹介します。」
◎ユニーク賞 西川さん「家族のカタチ」

副賞〔コロフル:はがきサイズ&名刺〕
◎敢闘賞 白水さん「時がながれ、おぼろになる」

副賞〔コロフル:はがきサイズ&名刺〕
◎社長賞 鈴木さん「ヤギ」

副賞〔コロフル:名刺〕
◎最優秀賞 西村さん「来たー!」

副賞〔コロフル:8×10サイズ&名刺〕

みなさん、おめでとうございました!
この社員展では、コロタイプの技術を持たない社員たちが自分で撮った写真を手刷りでプリントしています。一枚として同じものがない手刷りの面白さをみなさまにも感じていただけるとうれしいです。今月20日まで開催中! ぜひお越しください。
◆
【開催概要】
第10回 コロタイプ手刷りプリントのおもしろさ展
会期:2022年6月20日(月)~7月8日(金)
時間:平日10時~17時
休廊日時:全日12時~13時、および土日祝日はお休み
入場:無料
会場:便利堂本社1FコロタイプギャラリーⅠ
(京都市中京区新町通竹屋町下ル弁財天町 302)
主催:株式会社便利堂
春季企画展開催中! ハリバンアワード歴代最優秀賞受賞作品を一堂に。
HARIBAN AWARD Grand Prize Winning Works 2014-2020
会期:2022年4月22日(金)~2022年6月10日(金)@便利堂コロタイプギャラリー

みなさんこんにちは! 便利堂コロタイプギャラリーでは、春季企画展として新しい展示がスタートしました。「HARIBAN AWARD Grand Prize Winning Works 2014-2020」と題し、便利堂が主宰する写真コンペティションHARIBAN AWARDのこれまでの最優秀賞受賞者7名による作品を一堂に展示します。展示を担当された清さんにお話しをお聞きしました。

―――4月に募集が始まったハリバンアワードは今年で9回目となります。
「早いですね。今回のギャラリー展示のようにこれまでの受賞者の作品が一度に見られる機会は、実はあまりありません。2018年にハリバンアワード5周年を記念した展示以来、二度目となります。」

―――ご存知ない方のためにハリバンアワードについて聞かせてください。
「ハリバンアワードは、コロタイプと現代の写真作家をつなげる取り組みです。便利堂では明治38年にコロタイプ工房を設立以来、100年以上にわたり技術を継承してきました。「コロタイプ」とは160年以上前にフランスで生まれた古典写真技法のことです。現在普及している技術ではけっしてできない独自の表現が可能ですが、世界的に見るとコロタイプは衰退の一途をたどっているため、現代においては非常に希少なものとなりました。便利堂ではそうした面をあえて「コロタイプの強み」ととらえ、今を生きる作家のみなさんに「古くて新しい表現方法」として使ってもらうことで技術の継承につなげたいと考えています。」
⇒HARIBAN AWARD HP: www.benrido.co.jp/haribanaward

第1回(2014年)受賞作品 "Sequester" Awoiska van der Molen

第2回(2015年)受賞作品 "LDN_EI" Antony Cairns
―――世の中には数多くの写真コンペティションがありますが、こうした取り組みは珍しいでしょうね。
「ハリバンアワードで最優秀賞に選ばれたら、京都にある便利堂のコロタイプ工房に招待され、技師と一緒に作品を制作する権利があたえられます。今となっては希少な技術を体験してもらえるという点で、唯一無二のコンペティションだと思います。コロタイプ技術を継承してきた熟練の職人と、古くから芸術が培われてきた京都という場所で、たがいに意見を交わしながら一緒に作品を制作することができる。これはこのコンペティション最大の魅力のひとつでしょう。」

第3回(2016年)受賞作品 "Campo Aberto" Claudio Silvano

第4回(2017年)受賞作品 "Night Procession" Stephen Gill
―――自分の作品がコロタイプでプリントされることで新しい表現に出会える。作家の方もコロタイプの表現力に驚かれるかもしれません。
「作品はいわば作家自身の表現です。しかし、受賞者の作品は、コロタイプ工房の技師が作家本人と何度も意見を交わしながらプリントします。サイズも質感も紙も、すべて作家と技師がやりとりを繰り返しながら作り上げるんです。工房のプレス機でプリントされ、作家と技師が何度も刷り上がりをチェックし、校正を繰り返して作品が生まれます。つまり、もともとすてきな写真作品の魅力が、コロタイプによって最大限にまで引き出されるということです。今回の展示では、そんなコロタイププリントの質感にも注目してお楽しみいただきたいですね。」


第5回(2018年)受賞作品 "On Sleeping and Drowning" Esther Teichmann
―――ハリバンアワードはプロ・アマチュア問わずご応募いただけますね。
「写真作品を制作するすべての人に開かれたコンペティションです。毎年、審査員には世界的に写真の分野で広く活動される著名な方々にお願いしています。写真を知っている人からすると驚くような、そうそうたる顔ぶれです。プロの方はもちろんですが、アマチュアの方でも、自分の写真作品をそういった方々に見てもらえるというのはまたとない機会だと思います。」


第6回(2019年)受賞作品 "Borders of Nothingness - On the mend" Margaret Lansink
―――それでは最後に、今回の展示の見どころを教えてください。
「展示の準備を進めるにあたり作品を改めて見直しましたが、どの作品にも作者の想いや意図が、さまざまなアプローチでとてもユニークに表現されていると感じました。それは作品をぱっと見ただけではわからないかもしれません。だからこそ、ぜひ作品の前で立ち止まって見てほしいですね。じっくりと作品を眺めてみると次第に作品が広がっていくように見えるのではないかと思います。見終わったあとに「あの表現はおもしろいな」「あの作品ってなんだったんだろう」などと振り返ってもらえたらまた一段とおもしろさが深まるかもしれません。」


第7回(2020年)受賞作品 "Entanglement 1&2" Maude Arsenault
―――展示をご覧いただいたあとに、ハリバンアワードのカタログもお手に取っていただきたいですね。
「そうですね。一冊ずつ手作業で作られた、他にはないすばらしいカタログです。会場でご覧いただいた作品はすべてこちらに掲載されています。英語表記ですが、日本語訳もお付けしています。作家や作品についての詳しいテキストも掲載されているので、ぜひ手に取ってごらんください。」

―――手元にあることがうれしくなるような自慢のカタログです。ぜひ会場でごらんください。みなさまのお越しをお待ちしています!

第8回(2021年)の受賞者はTarrah Krajnakさん。現在展示プリントを作成中。本年中の個展開催を予定してます。
第9回となるHARIBAN AWARD2022は、現在応募作品募集中!(6月15日まで) 詳しくはHARIBAN AWARD HPまで
◆
「HARIBAN AWARD Grand Prize Winning Works 2014-2020」展
会期:2022年4月22日(金)~2022年6月10日(金)
時間:平日10:00-17:00
休廊日:土日祝日 ・全日12:00-13:00
入場:無料
会場:便利堂本社1FコロタイプギャラリーⅠ&Ⅱ(京都市中京区新町通竹屋町下ル弁財天町 302)
主催:株式会社便利堂/後援:京都市
会期:2022年4月22日(金)~2022年6月10日(金)@便利堂コロタイプギャラリー

みなさんこんにちは! 便利堂コロタイプギャラリーでは、春季企画展として新しい展示がスタートしました。「HARIBAN AWARD Grand Prize Winning Works 2014-2020」と題し、便利堂が主宰する写真コンペティションHARIBAN AWARDのこれまでの最優秀賞受賞者7名による作品を一堂に展示します。展示を担当された清さんにお話しをお聞きしました。

―――4月に募集が始まったハリバンアワードは今年で9回目となります。
「早いですね。今回のギャラリー展示のようにこれまでの受賞者の作品が一度に見られる機会は、実はあまりありません。2018年にハリバンアワード5周年を記念した展示以来、二度目となります。」

―――ご存知ない方のためにハリバンアワードについて聞かせてください。
「ハリバンアワードは、コロタイプと現代の写真作家をつなげる取り組みです。便利堂では明治38年にコロタイプ工房を設立以来、100年以上にわたり技術を継承してきました。「コロタイプ」とは160年以上前にフランスで生まれた古典写真技法のことです。現在普及している技術ではけっしてできない独自の表現が可能ですが、世界的に見るとコロタイプは衰退の一途をたどっているため、現代においては非常に希少なものとなりました。便利堂ではそうした面をあえて「コロタイプの強み」ととらえ、今を生きる作家のみなさんに「古くて新しい表現方法」として使ってもらうことで技術の継承につなげたいと考えています。」
⇒HARIBAN AWARD HP: www.benrido.co.jp/haribanaward

第1回(2014年)受賞作品 "Sequester" Awoiska van der Molen

第2回(2015年)受賞作品 "LDN_EI" Antony Cairns
―――世の中には数多くの写真コンペティションがありますが、こうした取り組みは珍しいでしょうね。
「ハリバンアワードで最優秀賞に選ばれたら、京都にある便利堂のコロタイプ工房に招待され、技師と一緒に作品を制作する権利があたえられます。今となっては希少な技術を体験してもらえるという点で、唯一無二のコンペティションだと思います。コロタイプ技術を継承してきた熟練の職人と、古くから芸術が培われてきた京都という場所で、たがいに意見を交わしながら一緒に作品を制作することができる。これはこのコンペティション最大の魅力のひとつでしょう。」

第3回(2016年)受賞作品 "Campo Aberto" Claudio Silvano

第4回(2017年)受賞作品 "Night Procession" Stephen Gill
―――自分の作品がコロタイプでプリントされることで新しい表現に出会える。作家の方もコロタイプの表現力に驚かれるかもしれません。
「作品はいわば作家自身の表現です。しかし、受賞者の作品は、コロタイプ工房の技師が作家本人と何度も意見を交わしながらプリントします。サイズも質感も紙も、すべて作家と技師がやりとりを繰り返しながら作り上げるんです。工房のプレス機でプリントされ、作家と技師が何度も刷り上がりをチェックし、校正を繰り返して作品が生まれます。つまり、もともとすてきな写真作品の魅力が、コロタイプによって最大限にまで引き出されるということです。今回の展示では、そんなコロタイププリントの質感にも注目してお楽しみいただきたいですね。」


第5回(2018年)受賞作品 "On Sleeping and Drowning" Esther Teichmann
―――ハリバンアワードはプロ・アマチュア問わずご応募いただけますね。
「写真作品を制作するすべての人に開かれたコンペティションです。毎年、審査員には世界的に写真の分野で広く活動される著名な方々にお願いしています。写真を知っている人からすると驚くような、そうそうたる顔ぶれです。プロの方はもちろんですが、アマチュアの方でも、自分の写真作品をそういった方々に見てもらえるというのはまたとない機会だと思います。」


第6回(2019年)受賞作品 "Borders of Nothingness - On the mend" Margaret Lansink
―――それでは最後に、今回の展示の見どころを教えてください。
「展示の準備を進めるにあたり作品を改めて見直しましたが、どの作品にも作者の想いや意図が、さまざまなアプローチでとてもユニークに表現されていると感じました。それは作品をぱっと見ただけではわからないかもしれません。だからこそ、ぜひ作品の前で立ち止まって見てほしいですね。じっくりと作品を眺めてみると次第に作品が広がっていくように見えるのではないかと思います。見終わったあとに「あの表現はおもしろいな」「あの作品ってなんだったんだろう」などと振り返ってもらえたらまた一段とおもしろさが深まるかもしれません。」


第7回(2020年)受賞作品 "Entanglement 1&2" Maude Arsenault
―――展示をご覧いただいたあとに、ハリバンアワードのカタログもお手に取っていただきたいですね。
「そうですね。一冊ずつ手作業で作られた、他にはないすばらしいカタログです。会場でご覧いただいた作品はすべてこちらに掲載されています。英語表記ですが、日本語訳もお付けしています。作家や作品についての詳しいテキストも掲載されているので、ぜひ手に取ってごらんください。」

―――手元にあることがうれしくなるような自慢のカタログです。ぜひ会場でごらんください。みなさまのお越しをお待ちしています!

第8回(2021年)の受賞者はTarrah Krajnakさん。現在展示プリントを作成中。本年中の個展開催を予定してます。
第9回となるHARIBAN AWARD2022は、現在応募作品募集中!(6月15日まで) 詳しくはHARIBAN AWARD HPまで
◆
「HARIBAN AWARD Grand Prize Winning Works 2014-2020」展
会期:2022年4月22日(金)~2022年6月10日(金)
時間:平日10:00-17:00
休廊日:土日祝日 ・全日12:00-13:00
入場:無料
会場:便利堂本社1FコロタイプギャラリーⅠ&Ⅱ(京都市中京区新町通竹屋町下ル弁財天町 302)
主催:株式会社便利堂/後援:京都市
「便利堂の絵葉書からみるうらおもて」展はじまりました!
開催記念イベント「絵葉書交換会」も! 参加お待ちしています!
会期:2022年2月13日(日)―2022年4月1日(金)@便利堂コロタイプギャラリー

みなさんこんにちは! この冬、京都には何度も雪が積もりました。まだまだ寒さは厳しいものの、日差しには少しずつですが春の気配が感じられます。そんな中、2022年ギャラリー展 第一期では「便利堂の絵葉書からみるうらおもて」展と題して、便利堂の「顔」ともいえる絵葉書を取り上げました。100年の時を感じさせない絵葉書は、一枚一枚がまるで時代を映す鏡のようです。展示を担当された清さんにお話しをお聞きしました。

―――うらおもてとは絵葉書ならではのタイトルです。
「近頃は年賀状を書かない人も増えていると聞きます。展示をするにあたり絵葉書について考えてみると、葉書と距離がある人たちは、そもそも葉書に表と裏があることを知っているのかな?と思ったんです。もしかすると絵が描いてある側を表と思うのかもしれませんよね。けれども絵葉書ができていく歴史を振り返れば、どちらが表面なのかがわかります。絵葉書というものの裏には長い歴史があるんですよ。」
―――それがこのタイトルの出発点なんですね。
「もうひとつ「一枚の紙にも裏表」ということわざがあります。これは世の中すべての物事には裏表があって、内実は複雑であることをたとえた言葉です。裏を見ることで表が違って見えることがあると思います。たとえば便利堂は「絵葉書の便利堂」と呼んでいただいていますが、そう呼ばれるに至る舞台裏が確かにあるんです。今回は「絵葉書ブームの背景」、「絵葉書の便利堂とその裏側」、「現代の絵葉書と裏側の人々」、この3つをテーマとして展示します。」

「時事漫画 非美術画葉書 第1~4輯」 鹿子木孟郎 明治38年発行
日露戦争をテーマにポンチ(風刺漫画)風に描いた絵はがき
―――絵葉書をいろんな角度から味わえそうです。内容について聞かせてください。
「昔、絵葉書には一大ブームがありました。1904(明治37)年の日露戦争で戦況を伝える絵葉書が発行されると人々はこぞって買い求めました。それは手に入れようとして命を落とした人もいるほどの熱狂的なブームだったそうです。絵葉書がメディアの役割を担っていたんですね。展示ではそんなブームの裏側にも迫ります。」
―――絵葉書ブームの裏と表、どちらも興味深いです。便利堂が絵葉書に乗り出したのもその頃でしょうか?
「絵葉書の歴史は便利堂の歴史でもあります。1887(明治20)年、首都が東京に移り、京都の力が変化していく時代において、それまで錫屋を営んでいた中村家の次男・弥二郎が何か新しいことを始めようと立ち上げたのが便利堂でした。当初、書店などを営んでいた便利堂ですが、絵葉書ブームが来る前、1902(明治35)年の段階で初めての絵葉書「帰雁来燕」を発売しています。今回展示していますがデザインがすばらしいんですよ。」

上:「帰雁来燕」 田中美風 明治35年 下:「絵はがき 不如帰」 明治37年
―――素敵ですね! これが100年以上も前のものとは信じられません。ここから絵葉書の便利堂として…?
「いえいえ、それはまだ先のお話しで、絵葉書第二弾を出すのはここから2年も後のことです。この頃、便利堂では初めての代替わりがありました。初代 弥二郎は東京で有楽社という出版社を立ち上げるため、便利堂を長男・中村弥左衛門に引き継ぎました。二代目となった弥左衛門は当初、絵葉書ではなく京都の風物の写真集などの出版を好んでやっていたようです。これは想像ですが、弥二郎に比べて弥左衛門は生真面目で慎重な人で、新しいものであった絵葉書ではなく、それまで続けていた書店や出版業を重視したのかもしれませんね。しかし、先に有楽社で絵葉書を成功させていた弥二郎の企画で、便利堂絵葉書第二弾となる『不如帰』を1904(明治37)年に共同で制作すると、手ごたえを感じたのか、その後多くの絵葉書を手掛けるようになり、翌明治38年にはコロタイプ工房を社内に開設し書店から絵葉書店へとシフトし始めます。」

「京名所百景」 明治38年~ 数百種類にわたる京都の名所写真がコロタイプされた当時のロングセラー絵はがき
―――ついにコロタイプが便利堂へやってきましたね。
「この移り変わりの時期は、振り返ってみると便利堂にとって非常に重要だったと思います。この時、弥左衛門が売り出した京都の名勝の写真が印刷された風景絵葉書「京名勝百景」は爆発的に売れました。それまでは弥二郎色が強い絵葉書が中心でしたが、ようやく弥左衛門が自分の形を見つけた。「絵葉書の便利堂」と呼ばれ始めたのは、この便利堂初めての代替わりのタイミングだったんです。」
―――絵葉書の向こうにドラマが浮かび上がってきますね。
「まさしく絵葉書ブームだったことがよくわかるのが、1905(明治38)年、大阪毎日新聞が一般の人に「絵を描いて応募してください」と呼びかけた絵葉書の懸賞です。いわゆるコンペティションは応募総数2308組という大盛況でした。便利堂では当選者のうち8名分の絵葉書を製作販売しましたが、これもまた爆発的に売れたそうです。また、当選作品を並べる陳列会では、便利堂主催で「絵葉書交換会」が催され人気を博しました。」

『明治の京都 てのひら逍遥 便利堂美術絵はがきことはじめ』
絵はがきの歴史や便利堂の当時の絵はがきを詳しく紹介。
監修/生田 誠 1200円(税別) ISBN978-4-89273-100-6
⇒ご購入はこちら
―――「絵葉書交換会」? 楽しそうな響きですね。
「システムはこうです。宛名は空白のまま絵葉書に手紙を書き、切手を貼って提出します。受け取った交換担当者が内容の合う2枚を選び出し、それぞれに宛名を書き込んで発送する。つまり参加者には、行ったこともない場所に暮らす、知らない誰かの言葉がつづられた絵葉書が届く…というわけです。ちなみに、当時絵葉書ブームが盛り上がるなかで、この交換会が全国各地で開催されましたが、日本で初めて「絵葉書交換会」を考案したのが、誰でもない有楽社を立ち上げた弥二郎でした!」
―――さすが弥二郎さん、アイデアマンですね! 絵葉書をめいっぱい楽しんでもらいたいという気持ちが伺えます。
「実は今回の展示を記念して、便利堂ではこの「絵葉書交換会」を行います! ギャラリーをごらんいただき、本店へお越しいただいた方にはお好きな絵葉書を一枚プレゼント。交換会へご参加いただけば、お手元には見知らぬ誰かからの絵葉書が届きます。「絵葉書の便利堂」での時間を心ゆくまでお楽しみいただきたいですね。」

明治時代の絵はがきを復刻した3種
左上:「舞姿」 今尾景年、鈴木松年、竹内栖鳳、山元春挙 明治38年 (下:復刻 4枚組セット 500円(税別)⇒ご購入はこちら)
左下:「ベースボール」 佐々木望 明治38年 (下:復刻 4枚組セット 1,143円(税別)⇒ご購入はこちら)
右:復刻版 京名所百景 (便利堂本店でのみ販売)
―――見ず知らずの人と繋がる時代、絵葉書を通じてというところが新鮮ですね。みなさまぜひご参加ください! そういえば便利堂の絵葉書には他にはない厚みがありますね。
「これは、便利堂が絵葉書の図版自体を「図録」として考えているからなんです。写真の色や質感にもこだわりぬいた、図録にも負けないくらいの品質なんですよ。」
―――だからこそ、昔も今も「絵葉書の」とお声がけいただくんですね。
「さらに便利堂ではカラーコロタイプの絵葉書も制作しています。絵葉書を企画する人間だけではなく、職人もまた、どこにも負けない絵葉書を作ろうとしています。一枚の絵葉書にはいろんな人の思いや熱意がぎゅっと詰め込まれているんです。」

明治・大正頃の作品を中心にしたコロタイプ絵はがき「季趣五題シリーズ」(1枚 350円(税別)⇒ご購入はこちら)
―――絵葉書の裏と表はどちらから見ても面白いものですね。知らないことばかりでした。
「今回の展示を通して、絵葉書にはいろんな歴史があること、そして今もなお、たくさんの人が関わって作っていることを知っていただけたらいいなと思います。それを知った上で絵葉書を見てみればきっと今までとは違う見え方がするんじゃないでしょうか。ご覧いただいた方に、絵葉書を誰かのために選んで送ってみようかな、という気持ちになってもらえたらうれしいですね。」

⇒便利堂の絵はがきに関する過去記事はこちら
◆
便利堂の絵葉書からみる「うらおもて」展
会期:2022年2月13日(日)~2022年4月1日(金)
時間:10:00-17:00 休廊日:土日祝日 ・全日12:00-13:00
※2/13(日)2/19(土) 2/20(日) Design Week Kyoto 2022参加のためOPEN
入場:無料
会場:便利堂コロタイプギャラリー(京都市中京区新町通竹屋町下ル弁財天町 302
会期:2022年2月13日(日)―2022年4月1日(金)@便利堂コロタイプギャラリー

みなさんこんにちは! この冬、京都には何度も雪が積もりました。まだまだ寒さは厳しいものの、日差しには少しずつですが春の気配が感じられます。そんな中、2022年ギャラリー展 第一期では「便利堂の絵葉書からみるうらおもて」展と題して、便利堂の「顔」ともいえる絵葉書を取り上げました。100年の時を感じさせない絵葉書は、一枚一枚がまるで時代を映す鏡のようです。展示を担当された清さんにお話しをお聞きしました。

―――うらおもてとは絵葉書ならではのタイトルです。
「近頃は年賀状を書かない人も増えていると聞きます。展示をするにあたり絵葉書について考えてみると、葉書と距離がある人たちは、そもそも葉書に表と裏があることを知っているのかな?と思ったんです。もしかすると絵が描いてある側を表と思うのかもしれませんよね。けれども絵葉書ができていく歴史を振り返れば、どちらが表面なのかがわかります。絵葉書というものの裏には長い歴史があるんですよ。」
―――それがこのタイトルの出発点なんですね。
「もうひとつ「一枚の紙にも裏表」ということわざがあります。これは世の中すべての物事には裏表があって、内実は複雑であることをたとえた言葉です。裏を見ることで表が違って見えることがあると思います。たとえば便利堂は「絵葉書の便利堂」と呼んでいただいていますが、そう呼ばれるに至る舞台裏が確かにあるんです。今回は「絵葉書ブームの背景」、「絵葉書の便利堂とその裏側」、「現代の絵葉書と裏側の人々」、この3つをテーマとして展示します。」

「時事漫画 非美術画葉書 第1~4輯」 鹿子木孟郎 明治38年発行
日露戦争をテーマにポンチ(風刺漫画)風に描いた絵はがき
―――絵葉書をいろんな角度から味わえそうです。内容について聞かせてください。
「昔、絵葉書には一大ブームがありました。1904(明治37)年の日露戦争で戦況を伝える絵葉書が発行されると人々はこぞって買い求めました。それは手に入れようとして命を落とした人もいるほどの熱狂的なブームだったそうです。絵葉書がメディアの役割を担っていたんですね。展示ではそんなブームの裏側にも迫ります。」
―――絵葉書ブームの裏と表、どちらも興味深いです。便利堂が絵葉書に乗り出したのもその頃でしょうか?
「絵葉書の歴史は便利堂の歴史でもあります。1887(明治20)年、首都が東京に移り、京都の力が変化していく時代において、それまで錫屋を営んでいた中村家の次男・弥二郎が何か新しいことを始めようと立ち上げたのが便利堂でした。当初、書店などを営んでいた便利堂ですが、絵葉書ブームが来る前、1902(明治35)年の段階で初めての絵葉書「帰雁来燕」を発売しています。今回展示していますがデザインがすばらしいんですよ。」

上:「帰雁来燕」 田中美風 明治35年 下:「絵はがき 不如帰」 明治37年
―――素敵ですね! これが100年以上も前のものとは信じられません。ここから絵葉書の便利堂として…?
「いえいえ、それはまだ先のお話しで、絵葉書第二弾を出すのはここから2年も後のことです。この頃、便利堂では初めての代替わりがありました。初代 弥二郎は東京で有楽社という出版社を立ち上げるため、便利堂を長男・中村弥左衛門に引き継ぎました。二代目となった弥左衛門は当初、絵葉書ではなく京都の風物の写真集などの出版を好んでやっていたようです。これは想像ですが、弥二郎に比べて弥左衛門は生真面目で慎重な人で、新しいものであった絵葉書ではなく、それまで続けていた書店や出版業を重視したのかもしれませんね。しかし、先に有楽社で絵葉書を成功させていた弥二郎の企画で、便利堂絵葉書第二弾となる『不如帰』を1904(明治37)年に共同で制作すると、手ごたえを感じたのか、その後多くの絵葉書を手掛けるようになり、翌明治38年にはコロタイプ工房を社内に開設し書店から絵葉書店へとシフトし始めます。」

「京名所百景」 明治38年~ 数百種類にわたる京都の名所写真がコロタイプされた当時のロングセラー絵はがき
―――ついにコロタイプが便利堂へやってきましたね。
「この移り変わりの時期は、振り返ってみると便利堂にとって非常に重要だったと思います。この時、弥左衛門が売り出した京都の名勝の写真が印刷された風景絵葉書「京名勝百景」は爆発的に売れました。それまでは弥二郎色が強い絵葉書が中心でしたが、ようやく弥左衛門が自分の形を見つけた。「絵葉書の便利堂」と呼ばれ始めたのは、この便利堂初めての代替わりのタイミングだったんです。」
―――絵葉書の向こうにドラマが浮かび上がってきますね。
「まさしく絵葉書ブームだったことがよくわかるのが、1905(明治38)年、大阪毎日新聞が一般の人に「絵を描いて応募してください」と呼びかけた絵葉書の懸賞です。いわゆるコンペティションは応募総数2308組という大盛況でした。便利堂では当選者のうち8名分の絵葉書を製作販売しましたが、これもまた爆発的に売れたそうです。また、当選作品を並べる陳列会では、便利堂主催で「絵葉書交換会」が催され人気を博しました。」

『明治の京都 てのひら逍遥 便利堂美術絵はがきことはじめ』
絵はがきの歴史や便利堂の当時の絵はがきを詳しく紹介。
監修/生田 誠 1200円(税別) ISBN978-4-89273-100-6
⇒ご購入はこちら
―――「絵葉書交換会」? 楽しそうな響きですね。
「システムはこうです。宛名は空白のまま絵葉書に手紙を書き、切手を貼って提出します。受け取った交換担当者が内容の合う2枚を選び出し、それぞれに宛名を書き込んで発送する。つまり参加者には、行ったこともない場所に暮らす、知らない誰かの言葉がつづられた絵葉書が届く…というわけです。ちなみに、当時絵葉書ブームが盛り上がるなかで、この交換会が全国各地で開催されましたが、日本で初めて「絵葉書交換会」を考案したのが、誰でもない有楽社を立ち上げた弥二郎でした!」
―――さすが弥二郎さん、アイデアマンですね! 絵葉書をめいっぱい楽しんでもらいたいという気持ちが伺えます。
「実は今回の展示を記念して、便利堂ではこの「絵葉書交換会」を行います! ギャラリーをごらんいただき、本店へお越しいただいた方にはお好きな絵葉書を一枚プレゼント。交換会へご参加いただけば、お手元には見知らぬ誰かからの絵葉書が届きます。「絵葉書の便利堂」での時間を心ゆくまでお楽しみいただきたいですね。」

明治時代の絵はがきを復刻した3種
左上:「舞姿」 今尾景年、鈴木松年、竹内栖鳳、山元春挙 明治38年 (下:復刻 4枚組セット 500円(税別)⇒ご購入はこちら)
左下:「ベースボール」 佐々木望 明治38年 (下:復刻 4枚組セット 1,143円(税別)⇒ご購入はこちら)
右:復刻版 京名所百景 (便利堂本店でのみ販売)
―――見ず知らずの人と繋がる時代、絵葉書を通じてというところが新鮮ですね。みなさまぜひご参加ください! そういえば便利堂の絵葉書には他にはない厚みがありますね。
「これは、便利堂が絵葉書の図版自体を「図録」として考えているからなんです。写真の色や質感にもこだわりぬいた、図録にも負けないくらいの品質なんですよ。」
―――だからこそ、昔も今も「絵葉書の」とお声がけいただくんですね。
「さらに便利堂ではカラーコロタイプの絵葉書も制作しています。絵葉書を企画する人間だけではなく、職人もまた、どこにも負けない絵葉書を作ろうとしています。一枚の絵葉書にはいろんな人の思いや熱意がぎゅっと詰め込まれているんです。」

明治・大正頃の作品を中心にしたコロタイプ絵はがき「季趣五題シリーズ」(1枚 350円(税別)⇒ご購入はこちら)
―――絵葉書の裏と表はどちらから見ても面白いものですね。知らないことばかりでした。
「今回の展示を通して、絵葉書にはいろんな歴史があること、そして今もなお、たくさんの人が関わって作っていることを知っていただけたらいいなと思います。それを知った上で絵葉書を見てみればきっと今までとは違う見え方がするんじゃないでしょうか。ご覧いただいた方に、絵葉書を誰かのために選んで送ってみようかな、という気持ちになってもらえたらうれしいですね。」

⇒便利堂の絵はがきに関する過去記事はこちら
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便利堂の絵葉書からみる「うらおもて」展
会期:2022年2月13日(日)~2022年4月1日(金)
時間:10:00-17:00 休廊日:土日祝日 ・全日12:00-13:00
※2/13(日)2/19(土) 2/20(日) Design Week Kyoto 2022参加のためOPEN
入場:無料
会場:便利堂コロタイプギャラリー(京都市中京区新町通竹屋町下ル弁財天町 302
「髙島屋美術部によるコロタイプ図録100冊」展開催中!
便利堂の展覧会図録制作の原点がここに!
2021年12月20日(月)―2022年2月4日(金)@便利堂コロタイプギャラリー

みなさんこんにちは!2021年も残すところあと一週間たらずとなりました。すっかり寒くなりましたがお元気にお過ごしでしょうか? さて、便利堂コロタイプギャラリーでは先週より新しい展示が始まりました。その名も「髙島屋美術部によるコロタイプ図録100冊」。わずか20文字のタイトルの中に興味をそそられる単語がいくつも並んでいます。本年は、髙島屋創業190周年、美術部開設110周年にあたり、それを記念して本展が企画されました。展示を担当された清さんにお話しをお聞きしました。

―――こちらはあの百貨店の髙島屋さんですか?
「その通りです。天保2(1831)年に京都で創業した髙島屋は、明治44(1911)年に美術部を開設されました。翌年には「尾竹竹坡百幅画会」が開催され、髙島屋美術部としての図録第1号『竹坡百画集』を刊行されます。これを便利堂が制作したんですよ。」
―――知りませんでした。そのころの便利堂は絵はがきが中心でしたよね?
「そうですね。便利堂では創業より書店として出版物を手掛けてきましたが、日露戦争を機に国内で絵はがきブームが起こると書店から絵はがき店へとシフトし、それにあわせて明治38(1905)年にはコロタイプ工房を設立しました。しかしこの頃はコロタイプを使った絵はがきが中心でした。ですから本格的なコロタイプ美術図録としては、この髙島屋美術部から依頼をいただいた図録シリーズがほぼ最初ということになります。」

髙島屋美術部の図録第1号『竹坡百画集』(明治45年2月11日発行)
―――どんなご縁で髙島屋さんはお声がけくださったのでしょう?
「髙島屋の美術部設立に尽力された髙島屋常務 田中信吉さんという方がいらっしゃいます。そのお兄さんと、便利堂の二代目 中村弥左衛門が中学時代の友人だったそうですよ。髙島屋では展覧会のたびに便利堂で図録を制作され、図録第1号の『竹坡百画集』以降、昭和4年までの間に約100冊にものぼる図録を便利堂が担当させていただきました。今回はその中から41冊をご紹介していますが、どれも趣向を凝らしたものばかりなんです。」

(上段左より)『百桜画集』『瀑布百景』『桜百趣』『紅葉百趣』/
『菊百題』『双幅帖』『画絶』『掃心図画』/『不盡山画集』『成園画集』『関雪先生癸亥画集』『米寿墨戯』
―――髙島屋さんが趣向を凝らすとなると、相当贅沢な作りだったことがうかがえます。
「図録第1号は帙入の和本、2号の『百桜画集』は洋本の体裁で、それ以降も大和綴や枚葉(まいよう)の帙入(ちついり)など、仕様やサイズはバラエティに富んでいます。田中信吉さんは「便利堂の前の社長は兄の中学時代友達でして商売をはなれて骨を折って作ってくれました」とおっしゃっています。きっといい関係だったんでしょうね。髙島屋からその図録を各地のお得意様へ送ると、遠方からも「この絵がほしい」と注文が来たそうです。こうした反応があったからこそ、100冊もの図録を作ることができたんだと思います。」

―――ずらりと図録が並んだ様子は壮観ですね! どれも上質なのがよくわかります。当時、これを手にされた方はきっとわくわくされたでしょうね。中を見てもいいですか?
「ぜひ手に取ってごらんください。コロタイプは100年印刷といわれる耐久性にすぐれた印刷技術です。そのため表紙の紙の変色などはあるものの、図録に納められた書や絵画は当時のまま瑞々しい姿をとどめています。ごらんいただくと、紙やサイズ、和綴じの仕立て、手触りなど、こだわりぬいて作られていることがおわかりいただけるはずです。」
―――髙島屋さんとのお仕事は、便利堂が大切にしている技術のひとつ「本づくり」の礎だったんですね。
「美術印刷、美術書制作の便利堂が確立されるきっかけは髙島屋さんからいただき、このシリーズによって育ったと言ってよいかもしれません。明治から昭和まで、髙島屋美術部の図録は便利堂が一手に引き受けていました。その間、便利堂にしかできないことを追求し、その後は次第に美術館や博物館の図録制作へとシフトしていきます。今回の展示では図録とともに様々な資料を通してその歩みをぜひご覧いただきたいですね。」

髙島屋と便利堂、ともゆかりの深い富岡鉄斎(肉筆)と竹内栖鳳(木版)の作品も展示
―――美術がお好きな方はもちろん、古書にご興味をお持ちの方など、この展示はいろんな角度から楽しむことができそうです。最後にブログを読んでいただいているみなさまへメッセージをお願いいたします。
「髙島屋では美術部開設以来20年弱の期間に、便利堂のほか、他社と制作したものもあわせると150冊近い図録を刊行され続けました。いったいどれほどの熱意をこの取り組みに注がれてきたかが数字から伝わってきます。当時の髙島屋は若いころの竹内栖鳳が意匠部に勤務するほか、富岡鉄斎を鑑賞家へ広く紹介するなど京都の画家たちにとってのいわばパトロン的立場にあったそうです。一方で便利堂でも出版する雑誌の表紙絵で、鉄斎や栖鳳と関わりをもっています。そうした背景をふまえて展示をご覧いただくとよりお楽しみいただけるかもしれません。髙島屋は今年、創業190周年、美術部は開設から110周年を迎えられました。今回はその歩みをご紹介するとともに、美術図録の便利堂が確立されるまでの道のりもお伝えできる展示になっています。たずさわる人々の美術を大切に思う気持ちが形となった「美術図録」をぜひお楽しみください。」

明治44年に便利堂が制作した《勅題松上鶴百名家絵葉書》も展示します
―――年内は明日28日まで、年明けは5日から開廊しています。ぜひ皆様のお越しをお待ちしています。
髙島屋美術開設110周年記念
「髙島屋美術部によるコロタイプ図録100冊」展
会期:2021年12月20日(月)―2022年2月4日(金)
時間:10時-17時
休廊:土日祝日・12/29-1/4・全日12:00-13:00はお休みいたします。
会場:便利堂コロタイプギャラリー
協力:髙島屋資料館
2021年12月20日(月)―2022年2月4日(金)@便利堂コロタイプギャラリー

みなさんこんにちは!2021年も残すところあと一週間たらずとなりました。すっかり寒くなりましたがお元気にお過ごしでしょうか? さて、便利堂コロタイプギャラリーでは先週より新しい展示が始まりました。その名も「髙島屋美術部によるコロタイプ図録100冊」。わずか20文字のタイトルの中に興味をそそられる単語がいくつも並んでいます。本年は、髙島屋創業190周年、美術部開設110周年にあたり、それを記念して本展が企画されました。展示を担当された清さんにお話しをお聞きしました。

―――こちらはあの百貨店の髙島屋さんですか?
「その通りです。天保2(1831)年に京都で創業した髙島屋は、明治44(1911)年に美術部を開設されました。翌年には「尾竹竹坡百幅画会」が開催され、髙島屋美術部としての図録第1号『竹坡百画集』を刊行されます。これを便利堂が制作したんですよ。」
―――知りませんでした。そのころの便利堂は絵はがきが中心でしたよね?
「そうですね。便利堂では創業より書店として出版物を手掛けてきましたが、日露戦争を機に国内で絵はがきブームが起こると書店から絵はがき店へとシフトし、それにあわせて明治38(1905)年にはコロタイプ工房を設立しました。しかしこの頃はコロタイプを使った絵はがきが中心でした。ですから本格的なコロタイプ美術図録としては、この髙島屋美術部から依頼をいただいた図録シリーズがほぼ最初ということになります。」

髙島屋美術部の図録第1号『竹坡百画集』(明治45年2月11日発行)
―――どんなご縁で髙島屋さんはお声がけくださったのでしょう?
「髙島屋の美術部設立に尽力された髙島屋常務 田中信吉さんという方がいらっしゃいます。そのお兄さんと、便利堂の二代目 中村弥左衛門が中学時代の友人だったそうですよ。髙島屋では展覧会のたびに便利堂で図録を制作され、図録第1号の『竹坡百画集』以降、昭和4年までの間に約100冊にものぼる図録を便利堂が担当させていただきました。今回はその中から41冊をご紹介していますが、どれも趣向を凝らしたものばかりなんです。」

(上段左より)『百桜画集』『瀑布百景』『桜百趣』『紅葉百趣』/
『菊百題』『双幅帖』『画絶』『掃心図画』/『不盡山画集』『成園画集』『関雪先生癸亥画集』『米寿墨戯』
―――髙島屋さんが趣向を凝らすとなると、相当贅沢な作りだったことがうかがえます。
「図録第1号は帙入の和本、2号の『百桜画集』は洋本の体裁で、それ以降も大和綴や枚葉(まいよう)の帙入(ちついり)など、仕様やサイズはバラエティに富んでいます。田中信吉さんは「便利堂の前の社長は兄の中学時代友達でして商売をはなれて骨を折って作ってくれました」とおっしゃっています。きっといい関係だったんでしょうね。髙島屋からその図録を各地のお得意様へ送ると、遠方からも「この絵がほしい」と注文が来たそうです。こうした反応があったからこそ、100冊もの図録を作ることができたんだと思います。」

―――ずらりと図録が並んだ様子は壮観ですね! どれも上質なのがよくわかります。当時、これを手にされた方はきっとわくわくされたでしょうね。中を見てもいいですか?
「ぜひ手に取ってごらんください。コロタイプは100年印刷といわれる耐久性にすぐれた印刷技術です。そのため表紙の紙の変色などはあるものの、図録に納められた書や絵画は当時のまま瑞々しい姿をとどめています。ごらんいただくと、紙やサイズ、和綴じの仕立て、手触りなど、こだわりぬいて作られていることがおわかりいただけるはずです。」
―――髙島屋さんとのお仕事は、便利堂が大切にしている技術のひとつ「本づくり」の礎だったんですね。
「美術印刷、美術書制作の便利堂が確立されるきっかけは髙島屋さんからいただき、このシリーズによって育ったと言ってよいかもしれません。明治から昭和まで、髙島屋美術部の図録は便利堂が一手に引き受けていました。その間、便利堂にしかできないことを追求し、その後は次第に美術館や博物館の図録制作へとシフトしていきます。今回の展示では図録とともに様々な資料を通してその歩みをぜひご覧いただきたいですね。」

髙島屋と便利堂、ともゆかりの深い富岡鉄斎(肉筆)と竹内栖鳳(木版)の作品も展示
―――美術がお好きな方はもちろん、古書にご興味をお持ちの方など、この展示はいろんな角度から楽しむことができそうです。最後にブログを読んでいただいているみなさまへメッセージをお願いいたします。
「髙島屋では美術部開設以来20年弱の期間に、便利堂のほか、他社と制作したものもあわせると150冊近い図録を刊行され続けました。いったいどれほどの熱意をこの取り組みに注がれてきたかが数字から伝わってきます。当時の髙島屋は若いころの竹内栖鳳が意匠部に勤務するほか、富岡鉄斎を鑑賞家へ広く紹介するなど京都の画家たちにとってのいわばパトロン的立場にあったそうです。一方で便利堂でも出版する雑誌の表紙絵で、鉄斎や栖鳳と関わりをもっています。そうした背景をふまえて展示をご覧いただくとよりお楽しみいただけるかもしれません。髙島屋は今年、創業190周年、美術部は開設から110周年を迎えられました。今回はその歩みをご紹介するとともに、美術図録の便利堂が確立されるまでの道のりもお伝えできる展示になっています。たずさわる人々の美術を大切に思う気持ちが形となった「美術図録」をぜひお楽しみください。」

明治44年に便利堂が制作した《勅題松上鶴百名家絵葉書》も展示します
―――年内は明日28日まで、年明けは5日から開廊しています。ぜひ皆様のお越しをお待ちしています。
髙島屋美術開設110周年記念
「髙島屋美術部によるコロタイプ図録100冊」展
会期:2021年12月20日(月)―2022年2月4日(金)
時間:10時-17時
休廊:土日祝日・12/29-1/4・全日12:00-13:00はお休みいたします。
会場:便利堂コロタイプギャラリー
協力:髙島屋資料館