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コロタイプギャラリー開設しました!
KG+ KYOTOGRAPHIEサテライト展
植田正治生誕 100 年記念コロタイプポートフォリオ《童暦》
ギャラリーオープン展、盛況のうちに終了!
2013.4.1-5.6 便利堂コロタイプギャラリー


本年4月1日、創業125周年を記念して、便利堂本社1Fに念願のコロタイプギャラリーを開廊しました。
便利堂コロタイプ工房は、明治38年に開設され、本年108年目を迎えます。コロタイプは写真草創期の19世紀中頃に多彩に存在した古典印画技法(オルタナティブ・プリント)の技法のひとつです。現在コロタイプは世界でも希少な技法となっており、日本では唯一京都便利堂のみが多色刷コロタイプ工房を1世紀以上にわたって継承してきました。
明治時代は絵はがきに、大正時代からは古美術の図録に、そして昭和の時代は文化財の複製保存にと、コロタイプは幅広く活用されてきました。150年前とかわらぬ職人の手作業を基本としており、技術の進歩が目まぐるしい現代においては、その技術を知っていただき触れていただく機会は限られていました。コロタイプを身近に感じていただける一助になればとの思いでこのギャラリーを開設しました。

ギャラリー内部
オープン展は、植田正治先生の生誕100周年を記念して、2006年に弊社コロタイプ工房で制作し、便利堂が発行したコロタイプポートフォリオ《童暦》を展観しました。本展は、京都グラフィーのサテライト展のひとつでもありました。

植田正治《童暦》コロタイプポートフォリオ
限定30部 コロタイププリント12枚組 ブックマット装特製化粧箱入 現在の価格1,000,000+税
序文:巌谷國士 監修:金子隆一(東京都写真美術館)、仲田薫子(植田正治事務所)
⇒くわしくはこちら
《童暦》は、中央公論社より「映像の現代」第3巻として1971年に出版された植田正治の写真集に名付けられたタイトル。1955年頃から1970年頃までに撮影されて写真雑誌等で発表されてきた作品群をまとめたもの。「映像の現代」全10巻は、この当時「VIVO」や「PROVOKE」などで活躍していた若い世代の写真家たちを中心に構成されていましたが、この中に当時58歳の植田正治が組み入れられたことでも話題となり、写真家・植田正治の評価における第二ステージの始まりとなった写真集です。山陰地方を舞台に子供たちの姿を通して描かれる春夏秋冬の風景が、植田独自の印画テクニックによって、はかなくも美しい映像世界として作り上げられています。このシリーズより12点を選び、コロタイププリントにしたのがこのポートフォリオです。⇒写真史家・金子隆一先生の推薦文はこちら

収録作品
開催期間中、植田正治ファンの方、京都グラフィー巡りの方、コロタイプに興味のある方など、多くの方々に来廊していただきました。思いがけず、ご近所の皆さんがとても興味を持っていただき応援してくださっているのがありがたく、励みになりました。
このギャラリーの目玉は、部屋の奥に開口された工房の「覗き窓」です。もともとこの部屋は、本社のショールームおよび店舗としてつくられたのですが、その後写真原版庫として使用されていました。ちょうどこの部屋の隣が工房でしたので、壁をぶちぬいて窓を作れば、展示だけでなく工房の様子も見ていただける!ということで、嫌がる工房の職人の皆さんを説得し、施工関係者の方々に無理をお願いして窓を取り付けました。

横に細長い窓。意外と工房全体を見渡せます
![2013_04_01_17_39_17[1]](https://blog-imgs-62-origin.fc2.com/t/a/k/takumisuzuki123/20130524193158877.jpg)
窓から工房をのぞくとこんな感じです

窓の横にはドアも取り付けました
![2013_05_03_18_38_05[1]](https://blog-imgs-62-origin.fc2.com/t/a/k/takumisuzuki123/201305241932015d1.jpg)
ドアを開けるとインキの匂いが立ち込める工房に
残念ながら工房は平日しか稼働していないので、休日に来廊していただいた方には無人の工房をご覧いただくしかないのですが、逆にこのドアから工房をのぞいてもらいインキの匂いをかいでもらうという特典もあったりします。
今後は年に数回企画展を行い、一般公開を行う予定です。
公開情報は
【便利堂ホームページ】http://www.benrido.co.jp/
【Twitter】@kyotobenrido
で随時発信していきます。皆さまのお越しをお待ちしております。

外観(自分たちで壁のペンキ塗りました!)

植田正治生誕 100 年記念コロタイプポートフォリオ《童暦》
ギャラリーオープン展、盛況のうちに終了!
2013.4.1-5.6 便利堂コロタイプギャラリー


本年4月1日、創業125周年を記念して、便利堂本社1Fに念願のコロタイプギャラリーを開廊しました。
便利堂コロタイプ工房は、明治38年に開設され、本年108年目を迎えます。コロタイプは写真草創期の19世紀中頃に多彩に存在した古典印画技法(オルタナティブ・プリント)の技法のひとつです。現在コロタイプは世界でも希少な技法となっており、日本では唯一京都便利堂のみが多色刷コロタイプ工房を1世紀以上にわたって継承してきました。
明治時代は絵はがきに、大正時代からは古美術の図録に、そして昭和の時代は文化財の複製保存にと、コロタイプは幅広く活用されてきました。150年前とかわらぬ職人の手作業を基本としており、技術の進歩が目まぐるしい現代においては、その技術を知っていただき触れていただく機会は限られていました。コロタイプを身近に感じていただける一助になればとの思いでこのギャラリーを開設しました。

ギャラリー内部
オープン展は、植田正治先生の生誕100周年を記念して、2006年に弊社コロタイプ工房で制作し、便利堂が発行したコロタイプポートフォリオ《童暦》を展観しました。本展は、京都グラフィーのサテライト展のひとつでもありました。

植田正治《童暦》コロタイプポートフォリオ
限定30部 コロタイププリント12枚組 ブックマット装特製化粧箱入 現在の価格1,000,000+税
序文:巌谷國士 監修:金子隆一(東京都写真美術館)、仲田薫子(植田正治事務所)
⇒くわしくはこちら
《童暦》は、中央公論社より「映像の現代」第3巻として1971年に出版された植田正治の写真集に名付けられたタイトル。1955年頃から1970年頃までに撮影されて写真雑誌等で発表されてきた作品群をまとめたもの。「映像の現代」全10巻は、この当時「VIVO」や「PROVOKE」などで活躍していた若い世代の写真家たちを中心に構成されていましたが、この中に当時58歳の植田正治が組み入れられたことでも話題となり、写真家・植田正治の評価における第二ステージの始まりとなった写真集です。山陰地方を舞台に子供たちの姿を通して描かれる春夏秋冬の風景が、植田独自の印画テクニックによって、はかなくも美しい映像世界として作り上げられています。このシリーズより12点を選び、コロタイププリントにしたのがこのポートフォリオです。⇒写真史家・金子隆一先生の推薦文はこちら

収録作品
開催期間中、植田正治ファンの方、京都グラフィー巡りの方、コロタイプに興味のある方など、多くの方々に来廊していただきました。思いがけず、ご近所の皆さんがとても興味を持っていただき応援してくださっているのがありがたく、励みになりました。
このギャラリーの目玉は、部屋の奥に開口された工房の「覗き窓」です。もともとこの部屋は、本社のショールームおよび店舗としてつくられたのですが、その後写真原版庫として使用されていました。ちょうどこの部屋の隣が工房でしたので、壁をぶちぬいて窓を作れば、展示だけでなく工房の様子も見ていただける!ということで、嫌がる工房の職人の皆さんを説得し、施工関係者の方々に無理をお願いして窓を取り付けました。

横に細長い窓。意外と工房全体を見渡せます
![2013_04_01_17_39_17[1]](https://blog-imgs-62-origin.fc2.com/t/a/k/takumisuzuki123/20130524193158877.jpg)
窓から工房をのぞくとこんな感じです

窓の横にはドアも取り付けました
![2013_05_03_18_38_05[1]](https://blog-imgs-62-origin.fc2.com/t/a/k/takumisuzuki123/201305241932015d1.jpg)
ドアを開けるとインキの匂いが立ち込める工房に
残念ながら工房は平日しか稼働していないので、休日に来廊していただいた方には無人の工房をご覧いただくしかないのですが、逆にこのドアから工房をのぞいてもらいインキの匂いをかいでもらうという特典もあったりします。
今後は年に数回企画展を行い、一般公開を行う予定です。
公開情報は
【便利堂ホームページ】http://www.benrido.co.jp/
【Twitter】@kyotobenrido
で随時発信していきます。皆さまのお越しをお待ちしております。

外観(自分たちで壁のペンキ塗りました!)

便利堂 美術絵はがきの歩み展
KG+ KYOTOGRAPHIEサテライト展
明治の京都 てのひら逍遥
2013.4.23-5.5 GALERIE H2O
![2013_04_22_23_26_10[1]](https://blog-imgs-62-origin.fc2.com/t/a/k/takumisuzuki123/201305161842035f8.jpg)
会場風景

京都の街中、三条富小路に便利堂直営ショップ「美術はがきギャラリー京都便利堂」があります。明治の時代、この三条富小路には便利堂の店舗がありました。そのゆかりの富小路通で、便利堂が明治期に制作販売していた絵はがき約220点を紹介する『明治の京都 てのひら逍遥-便利堂 美術絵はがきの歩み』展を開催しました。会場はショップから2軒北隣のギャラリーh2o(エイチツーオー)です。この展覧会も京都グラフィーのサテライトイベント「KG+」に参加していました。店長の増尾さんに展覧会の内容を紹介してもらいます。
![2013_04_23_12_04_15[2]](https://blog-imgs-62-origin.fc2.com/t/a/k/takumisuzuki123/20130516184212a0b.jpg)
ギャラリーh2oの入口 のれんをくぐり細い路地を入っていきます。

店長の増尾です。
明治33年、私製はがきの認可を皮切りに、各地で絵はがきの発行が盛んになります。当時は「便利堂書店」とも称して書店を開いていた便利堂も絵はがき制作を始め、斬新なアイディアと技術で多様な絵はがきを展開します。今回展示した絵はがきの中からコロタイプを中心にご紹介していきましょう(色刷のものはリトグラフないしは木版。モノクロのものはコロタイプです。手彩色で着色されたものもあります)。
【1.便利堂えはがきのはじまり】

「帰雁来燕」 明治35年発行
こちらは現存している便利堂製絵はがきの中でも最も古い明治35年発行の「帰雁来燕」と題された絵はがき帖で、リトグラフで印刷されています。見開きに画家・歌人である田中美風の歌と絵はがきを配した和綴本です。12枚入りの絵はがきは一枚一枚糸で四方を留められ、簡単に取り外して使用したり別のはがきに差し替えたりできるようになっており、絵はがきセットという形態も当時の京都では最先端でした。
【2.絵はがきブームと京都の画家たち】

上より「時事漫画 非美術画葉書」、「西洋美人」と「嵐山」、「葵祭」 いずれも明治38年発行 絵:鹿子木孟郎

「時事漫画 非美術画葉書」明治38年発行 絵:鹿子木孟郎

「葵祭」 明治38年発行 絵:鹿子木孟郎

「舞姿」 明治38年発行 絵:今尾景年、鈴木松年、竹内栖鳳、山元春挙

「ベースボール」 絵:佐々木望 明治38年発行

「明治四十五年勅題松上鶴 百名家絵葉書」 明治44年発行
絵:右上より池田蕉園、冨田渓仙、神坂雪佳、左 富岡鉄斎
日露戦争の頃には絵はがきブームが最高潮に達します。この頃便利堂が起用したのは京都画壇の大物、鹿子木孟郎。日露戦争の様子をポンチ絵風に描いた「時事漫画 非美術画葉書」シリーズは1~4輯まで発 表されました。著名人だけでなく、新鋭画家・写真家の育成にも絵はがきは一翼を担います。この頃絵はがきブームと共に新聞による懸賞も盛んに行われており、当選者の作品を絵はがきに仕立てて発行していました。
コロタイプで制作された絵はがきでは、明治44年に年賀状用に企画された「明治四十五年勅題松上鶴 百名家絵葉書」があります。タイトル通り東西の著名画家100名に書き下ろしを依頼した絵はがき集で、竹内栖鳳をはじめ横山大観、冨岡鉄斎、神坂雪佳など、そうそうたるメンバーが名を連ねています。
【3.文学絵はがきと美人絵はがき】

上より「不如帰」 明治37年発行、「浪さん」 明治38年発行 絵:上村松園、「夏子」 明治38年発行

「浪さん」 明治38年発行 絵:上村松園

「夏子」 明治38年発行

「花の京都」 明治38年発行
家庭小説と呼ばれる新聞連載の小説が流行した明治30年代にも、人気の小説を題材に数々の絵はがきが発売されました。明治38年にコロタイプで制作発行された絵はがきセット「夏子」は、大阪毎日新聞に連載されていた菊池幽芳の同名小説より、主人公夏子に扮した女性たちの写真入り絵はがきです。当時の新聞には絵葉書界空前の売行きであったと記されています。コロタイプに手彩色がされています。小説のシーンを演じる美しい女性たちを撮影したのはあの一力の女将。同年には一力をテーマにした絵はがきセットも発売されています。
【4.風景絵はがきとコロタイプ】


「京名所百景」 明治38年発行

「祇園の山鉾」 明治38年発行

「雨の嵐山」明治38年
黒川翠山や小川白楊などの新進写真家撮影による風景絵はがきも多く制作していた
そして構図・種類・コロタイプの質、どれを取っても洗練されていた風景絵はがき「京名所百景」は実質100種類以上あり、今回の展示でも一部を紹介するに留まりましたが、まさに名所の数々が勢ぞろい。他にも嵐山や祇園祭など、京都を代表するテーマで絵はがきセットが制作されました。絵はがきの下部にタイトルが入っているデザインは、日本語と英語の表記がされており、海外からの観光客も視野に入れていた事が伺えます。

当時の絵はがきの定型サイズは、現在よりも一回りほど小さく、手のひらに収まる程度のものでした。展示ではコロタイプの他にもリトグラフや木版で作られた味わいのある絵はがきをご紹介しましたが、その一点一点をじっと見つめているといつの間にか明治の時代にタイムスリップした様な気分になります。来場された方は風景絵はがきの中に懐かしい思い出の片鱗を見たり、小説絵はがきの主人公に感情移入してしまったり、ポンチ(漫画)風はがきに爆笑、など様々に楽しんで頂けたようです。中にはご自身の便利堂絵はがきコレクションを寄贈して下さる方までいらっしゃいました。
![2013_04_22_23_30_13[1]](https://blog-imgs-62-origin.fc2.com/t/a/k/takumisuzuki123/20130516184209c41.jpg)
便利堂が歩んできた絵はがきの歴史だけでなく、レトロな美しさの中に今も変わらずその精度を保つコロタイプの魅力をお伝えしたこの絵はがき展、好評のため東京での開催も予定しております。

便利堂創業125周年記念出版『明治の京都 てのひら逍遥 便利堂美術絵はがきことはじめ』
展示された絵はがきを含め、明治期に便利堂が発行した絵はがき400点以上を掲載。⇒詳細はこちら
今回の展示は、同時期に発売した書籍『明治の京都 てのひら逍遥 便利堂美術絵はがきことはじめ』にて監修頂いた絵はがき研究家の生田誠氏の所蔵するコレクションからも出品頂きました。有難うございました。
展示は終了しましたが、上記の書籍に加え、美術はがきギャラリー京都便利堂では復刻版絵はがきを引続き販売しております。是非、この機会にお立ち寄り下さい。
・復刻版絵はがき第一弾「京名所百景」(6枚入り、コロタイプ、手彩色)税込1,200円
・復刻版絵はがき第二弾「ベースボール」(4枚入り、リトグラフ)税込1,200円
・復刻版絵はがき第三弾「舞姿」(4枚入り、オフセット)税込525円

明治の京都 てのひら逍遥
2013.4.23-5.5 GALERIE H2O
![2013_04_22_23_26_10[1]](https://blog-imgs-62-origin.fc2.com/t/a/k/takumisuzuki123/201305161842035f8.jpg)
会場風景

京都の街中、三条富小路に便利堂直営ショップ「美術はがきギャラリー京都便利堂」があります。明治の時代、この三条富小路には便利堂の店舗がありました。そのゆかりの富小路通で、便利堂が明治期に制作販売していた絵はがき約220点を紹介する『明治の京都 てのひら逍遥-便利堂 美術絵はがきの歩み』展を開催しました。会場はショップから2軒北隣のギャラリーh2o(エイチツーオー)です。この展覧会も京都グラフィーのサテライトイベント「KG+」に参加していました。店長の増尾さんに展覧会の内容を紹介してもらいます。
![2013_04_23_12_04_15[2]](https://blog-imgs-62-origin.fc2.com/t/a/k/takumisuzuki123/20130516184212a0b.jpg)
ギャラリーh2oの入口 のれんをくぐり細い路地を入っていきます。

店長の増尾です。
明治33年、私製はがきの認可を皮切りに、各地で絵はがきの発行が盛んになります。当時は「便利堂書店」とも称して書店を開いていた便利堂も絵はがき制作を始め、斬新なアイディアと技術で多様な絵はがきを展開します。今回展示した絵はがきの中からコロタイプを中心にご紹介していきましょう(色刷のものはリトグラフないしは木版。モノクロのものはコロタイプです。手彩色で着色されたものもあります)。
【1.便利堂えはがきのはじまり】

「帰雁来燕」 明治35年発行
こちらは現存している便利堂製絵はがきの中でも最も古い明治35年発行の「帰雁来燕」と題された絵はがき帖で、リトグラフで印刷されています。見開きに画家・歌人である田中美風の歌と絵はがきを配した和綴本です。12枚入りの絵はがきは一枚一枚糸で四方を留められ、簡単に取り外して使用したり別のはがきに差し替えたりできるようになっており、絵はがきセットという形態も当時の京都では最先端でした。
【2.絵はがきブームと京都の画家たち】

上より「時事漫画 非美術画葉書」、「西洋美人」と「嵐山」、「葵祭」 いずれも明治38年発行 絵:鹿子木孟郎

「時事漫画 非美術画葉書」明治38年発行 絵:鹿子木孟郎

「葵祭」 明治38年発行 絵:鹿子木孟郎

「舞姿」 明治38年発行 絵:今尾景年、鈴木松年、竹内栖鳳、山元春挙

「ベースボール」 絵:佐々木望 明治38年発行

「明治四十五年勅題松上鶴 百名家絵葉書」 明治44年発行
絵:右上より池田蕉園、冨田渓仙、神坂雪佳、左 富岡鉄斎
日露戦争の頃には絵はがきブームが最高潮に達します。この頃便利堂が起用したのは京都画壇の大物、鹿子木孟郎。日露戦争の様子をポンチ絵風に描いた「時事漫画 非美術画葉書」シリーズは1~4輯まで発 表されました。著名人だけでなく、新鋭画家・写真家の育成にも絵はがきは一翼を担います。この頃絵はがきブームと共に新聞による懸賞も盛んに行われており、当選者の作品を絵はがきに仕立てて発行していました。
コロタイプで制作された絵はがきでは、明治44年に年賀状用に企画された「明治四十五年勅題松上鶴 百名家絵葉書」があります。タイトル通り東西の著名画家100名に書き下ろしを依頼した絵はがき集で、竹内栖鳳をはじめ横山大観、冨岡鉄斎、神坂雪佳など、そうそうたるメンバーが名を連ねています。
【3.文学絵はがきと美人絵はがき】

上より「不如帰」 明治37年発行、「浪さん」 明治38年発行 絵:上村松園、「夏子」 明治38年発行

「浪さん」 明治38年発行 絵:上村松園

「夏子」 明治38年発行

「花の京都」 明治38年発行
家庭小説と呼ばれる新聞連載の小説が流行した明治30年代にも、人気の小説を題材に数々の絵はがきが発売されました。明治38年にコロタイプで制作発行された絵はがきセット「夏子」は、大阪毎日新聞に連載されていた菊池幽芳の同名小説より、主人公夏子に扮した女性たちの写真入り絵はがきです。当時の新聞には絵葉書界空前の売行きであったと記されています。コロタイプに手彩色がされています。小説のシーンを演じる美しい女性たちを撮影したのはあの一力の女将。同年には一力をテーマにした絵はがきセットも発売されています。
【4.風景絵はがきとコロタイプ】


「京名所百景」 明治38年発行

「祇園の山鉾」 明治38年発行

「雨の嵐山」明治38年
黒川翠山や小川白楊などの新進写真家撮影による風景絵はがきも多く制作していた
そして構図・種類・コロタイプの質、どれを取っても洗練されていた風景絵はがき「京名所百景」は実質100種類以上あり、今回の展示でも一部を紹介するに留まりましたが、まさに名所の数々が勢ぞろい。他にも嵐山や祇園祭など、京都を代表するテーマで絵はがきセットが制作されました。絵はがきの下部にタイトルが入っているデザインは、日本語と英語の表記がされており、海外からの観光客も視野に入れていた事が伺えます。

当時の絵はがきの定型サイズは、現在よりも一回りほど小さく、手のひらに収まる程度のものでした。展示ではコロタイプの他にもリトグラフや木版で作られた味わいのある絵はがきをご紹介しましたが、その一点一点をじっと見つめているといつの間にか明治の時代にタイムスリップした様な気分になります。来場された方は風景絵はがきの中に懐かしい思い出の片鱗を見たり、小説絵はがきの主人公に感情移入してしまったり、ポンチ(漫画)風はがきに爆笑、など様々に楽しんで頂けたようです。中にはご自身の便利堂絵はがきコレクションを寄贈して下さる方までいらっしゃいました。
![2013_04_22_23_30_13[1]](https://blog-imgs-62-origin.fc2.com/t/a/k/takumisuzuki123/20130516184209c41.jpg)
便利堂が歩んできた絵はがきの歴史だけでなく、レトロな美しさの中に今も変わらずその精度を保つコロタイプの魅力をお伝えしたこの絵はがき展、好評のため東京での開催も予定しております。

便利堂創業125周年記念出版『明治の京都 てのひら逍遥 便利堂美術絵はがきことはじめ』
展示された絵はがきを含め、明治期に便利堂が発行した絵はがき400点以上を掲載。⇒詳細はこちら
今回の展示は、同時期に発売した書籍『明治の京都 てのひら逍遥 便利堂美術絵はがきことはじめ』にて監修頂いた絵はがき研究家の生田誠氏の所蔵するコレクションからも出品頂きました。有難うございました。
展示は終了しましたが、上記の書籍に加え、美術はがきギャラリー京都便利堂では復刻版絵はがきを引続き販売しております。是非、この機会にお立ち寄り下さい。
・復刻版絵はがき第一弾「京名所百景」(6枚入り、コロタイプ、手彩色)税込1,200円
・復刻版絵はがき第二弾「ベースボール」(4枚入り、リトグラフ)税込1,200円
・復刻版絵はがき第三弾「舞姿」(4枚入り、オフセット)税込525円

コロタイプとインクジェット(アーカイバルピグメントプリント)の写真作品の比較展示
KG+ KYOTOGRAPHIEサテライト展
荻野NAO之写真展「太秦」
2013.4.25-5.7 3F PROJECT ROOM


「京都グラフィー KYOTOGRAPHIE」サテライト展「KG+」での便利堂関連の報告です。柳馬場御池下ルにある3F PROJECT ROOMで開催された「荻野NAO之写真展『太秦』」において、コロタイプとアーカイバルピグメントプリントで制作されたプリントが比較展示がされました。⇒展覧会記事(yahooニュース)

会場風景
荻野さんは1975年生まれの写真家で、国内外で幅広く活躍されています⇒荻野NAO之公式サイト。今回の展覧会では、京都・太秦の東映京都撮影所を舞台に撮影を敢行し、そこに漂う「地霊の気(ケ)」を留めた写真を、荻野さん自らの手でアーカイバルピグメントプリントとして24点展示されました。その作品群から2点を選び、まったくおなじデータからおなじサイズに、便利堂がコロタイププリントを、荻野さんがアーカイバルピグメントプリントを制作し、並べて展示しました。

中央の4点がコロタイプとアーカイバルピグメントプリントの比較展示
また、4月29日には荻野さんと便利堂コロタイプ工房長・山本修のトークイベントをおこないました。 ふたりのトーク・テーマは「コロタイプとアーカイバルピグメントプリントそれぞれの表現力」でしたが、終始コロタイプの話題で展開。コロタイプの技法説明から、ドキュメント風のビデオをもちいて荻野作品のコロタイププリントをめぐる完成までの失敗や葛藤のプロセス(刷り重ねの限界、雁皮紙という選択、薬品による調整の効果など)披露まで、ご説明の時間をいただいて充実の内容となりました。

トークイベント風景。荻野さん(左)と山本
会場からは「荻野さんには失礼ながら、コロタイプのほうに強くひかれた。これまでは、コロタイプに対して精緻な写真プリントとしてのやや機械的なイメージをもっていたが、じっさい目にして、また話を聞いて認識は逆転し、絵画的な要素を非常に強く感じた」との声もあがりました。オーディエンスは15~20人ほど。画家やキュレイター、漆職人、撮影所の美術部員、教科書編集者など多彩な方々が集まり、イベント終了後も、それぞれの関心をもって作品や持参したコロタイプの刷本を興味深く鑑賞し、工房長への質問・意見交換も相次ぎ、盛況のうちに散会しました。

比較展示(この画像ではわかりませんねw) 「桜」(仮題)
左がアーカイバルピグメントプリント、右がコロタイプ。いずれも和紙にプリントされており、前者はきら引きのような光沢のある局紙、後者は黄色味のある越前の手漉き雁皮紙
コロタイプは、古い絵画や文書、歴史的資料の精緻な「複製」として認識されてきましたし、じっさいほとんどはそうした関連のお仕事です。が、そもそもは写真プリントのために生まれた技術。便利堂では、現代に生きる技術として、従来の表現には飽き足らないアーティストに、もっとコロタイプを利用してもらいたいと思っています。今回の試みもその一環です。荻野さんに今回の比較展示プロジェクトを振り返ってのコメントをいただきましたので、ご紹介します。(藤岡)

「部屋」(仮題)
◆
「比較展示プロジェクトを振り返って」荻野NAO之
【背景】
鈴木社長、山本工房長にはじめてお会いしたのは、京都ではなく、東京のAPIS 2012 Tokyo会場ででした。有り難いご縁でした。それからすぐ京都に戻ってきて、工房見学をさせていただきました。コロタイプの独特の存在感をヒシヒシと感じ、ぜひどこかでご一緒させていただきたいと願っておりました。
今回、KYOTOGRAPHIEのサテライトで写真展をさせていただくことになった際、これはぜひコロタイプとアーカイバルピグメントプリントの比較展示が実現できないかと思い立ち、ご一緒させていただけることになりました。
本当にありがとうございました。
比較展示を思いたった背景には以下の二点がありました。
一つには、出来上がったものを見るのではなく、自分の写真を通じて工房の職人さんたちと一緒に作り上げてゆく過程をご一緒させていただくことで、より一層コロタイプの良さや特徴が身にしみて分かるだろうということでした。
そしてもう一つは、同じ写真での比較をすることでこそ、それぞれの技法の特徴が浮き彫りにされて分かるだろうという思いがありました。これは、普段アーカイバルピグメントプリントのための用紙テストを同じ写真で比較していて実感したことでした。
【コロタイプ制作を経ての感想】
全体を通して感じたことは沢山あって短くは記せないのですが、ごくわずかに絞ってお伝えしますと・・・
まず制作プロセスの部分では、とにかく何を置いても職人さんの広大な範囲に渡るこだわりに接し、想像以上の表現の可能性について視野が開けたこと、これが大きな歓びでした。
写真のラボやプリンターにプリントを頼む場合でも、現像液や印画紙の種類についての豊富な知識と経験値によるアドバイスはいただけますが、ここでは、和紙ひとつにしてもそれぞれ異なった産地からそれぞれの紙の特徴を理解された上で、紙をすくところから依頼されています。
そして、インキ一つとっても市販のものは存在せず、どれも便利堂さんのためだけに調合されたインキを依頼のもと用意されています。紙にしろインキにしろ、ありものの取捨選択をされているのではなく、一つ一つ意図を持って、過去からの経験の蓄積を持って、用意されているわけなのです。
その分だけ素材に対する理解は深く、途中の試し刷りを拝見しながら素材のお話を伺いつつ、こちらの表現意図を組んでいただき、最終的なコロタイプの作品へと結像して下さいました。頭の中にあったイメージが、職人さんたちと素材の性質が絡み合って、蜃気楼が定着させるようにして現れていった感触は、今まで他で感じたことの無い表現に向かう不思議な感覚でした。
そしてついに出来上がったコロタイプは、想像を超えて深みを持ち、異様なものの存在感を漂わせていました。
驚いたことに、刷り上がりから1週間、2週間と時を経て、深みはいよいよ増していきました。あるお坊さんが、納品されたコロタイプ複製を毎年見られて、「一年一年深みが増してゆく」と仰ったと伺ったことがありましたが、そのことを目の前で実感いたしました。
デジタルカメラの時代になっても、アナログのコロタイプという表現方法が可能性の中にあるということは、本当にありがたいことだと改めて今回実感させていただきました。
どうもありがとうございました。
【比較展示での反応】
多くの方々が、熱心に比較されているコロタイプとアーカイバルピグメントプリントとキョロキョロしながら見比べていかれました。これは思った以上にみなさんがみなさん同じ仕草で見ていかれました。あまりに似た仕草えで、ユーモラスでもあるほどでした。
そして聞いたわけでもないのに、それぞれ口々にここが違うとか、それぞれの特徴を口にされていました。
一般的に多かった反応としては、コロタイプの方が柔らかく、アーカイバルピグメントプリントの方が硬めの表現だという感想でした。はじめは、なぜ同じものを二枚並べて掛けてあるのかと聞いてこられた方も、途中から「ああ、違う違う」と頷かれながら見ていかれました。
コロタイプの存在感を気に入って下さる方が多くいらっしゃいました。そして、その後、これはどういう技法なのか?と必ず聞いてこられました。横に置いてあった便利堂さんのミニパンフレットをお渡しするのですが、やはりトークイベントほどの理解はなかなか紙面から得るのは難しいようで、トークイベントの受け売りの説明でなんとかお茶を濁す程度しか私にはできず、そこが残念なところでもありました。
【トークイベントの感想】
今回のトークイベントは本当に盛りだくさんで、実際に刷るのに使っていただいた版を持ってきていただいたり、普段は見せることの無いであろう、途中過程で紙の表面が剥離してしまった失敗作や、和紙ごとの特徴が分かるサンプル、そして実際に刷っていただいていた際の、ドキュメンタリー映像まで上映していただきました。
山本工房長の映像に合わせたトークは、本当に素敵で、時々独特のユーモアが混ざり、来場者を笑いの渦に巻き込みつつ、コロタイプの制作現場とそのプロセスが現場を見ているかのように伝わって参りました。
コロタイプは恐らく版を作った後、唯一、刷の段階で諧調などをコントロールできる手法だというお話でしたが、実際の重たいガラス上のゼラチン版をもとに、どこの部分のゼラチンの硬さ柔らかさを、薬品を使いつつどう微調整して、最終的な写真の部分部分の諧調を出したのかなどご説明いただいたところは、特に貴重なお話だったと思います。
職人さんが指先でゼラチンの状態を感じ取り、身体でその時々の天候による温度湿度を感じ取り、いかにして刷りに導いているのかが伝わってくる素晴らしいトークイベントでした。実際に刷られて展示されているコロタイプを横に、トークを伺うことで、より一層コロタイプの深さと面白さ、可能性の大きさを実感させていただくことができたと感じています。
本当にありがとうございました。
◆
今回制作した荻野NAO之「太秦」よりコロタイププリント2点(仮題「桜」・「部屋」)は、各エディション20部、注文販売しております(すこしお時間はいただきます)。本紙(ブックマット装)65,000円、額入80,000円(各税別)です。
荻野NAO之写真展「太秦」
2013.4.25-5.7 3F PROJECT ROOM


「京都グラフィー KYOTOGRAPHIE」サテライト展「KG+」での便利堂関連の報告です。柳馬場御池下ルにある3F PROJECT ROOMで開催された「荻野NAO之写真展『太秦』」において、コロタイプとアーカイバルピグメントプリントで制作されたプリントが比較展示がされました。⇒展覧会記事(yahooニュース)

会場風景
荻野さんは1975年生まれの写真家で、国内外で幅広く活躍されています⇒荻野NAO之公式サイト。今回の展覧会では、京都・太秦の東映京都撮影所を舞台に撮影を敢行し、そこに漂う「地霊の気(ケ)」を留めた写真を、荻野さん自らの手でアーカイバルピグメントプリントとして24点展示されました。その作品群から2点を選び、まったくおなじデータからおなじサイズに、便利堂がコロタイププリントを、荻野さんがアーカイバルピグメントプリントを制作し、並べて展示しました。

中央の4点がコロタイプとアーカイバルピグメントプリントの比較展示
また、4月29日には荻野さんと便利堂コロタイプ工房長・山本修のトークイベントをおこないました。 ふたりのトーク・テーマは「コロタイプとアーカイバルピグメントプリントそれぞれの表現力」でしたが、終始コロタイプの話題で展開。コロタイプの技法説明から、ドキュメント風のビデオをもちいて荻野作品のコロタイププリントをめぐる完成までの失敗や葛藤のプロセス(刷り重ねの限界、雁皮紙という選択、薬品による調整の効果など)披露まで、ご説明の時間をいただいて充実の内容となりました。

トークイベント風景。荻野さん(左)と山本
会場からは「荻野さんには失礼ながら、コロタイプのほうに強くひかれた。これまでは、コロタイプに対して精緻な写真プリントとしてのやや機械的なイメージをもっていたが、じっさい目にして、また話を聞いて認識は逆転し、絵画的な要素を非常に強く感じた」との声もあがりました。オーディエンスは15~20人ほど。画家やキュレイター、漆職人、撮影所の美術部員、教科書編集者など多彩な方々が集まり、イベント終了後も、それぞれの関心をもって作品や持参したコロタイプの刷本を興味深く鑑賞し、工房長への質問・意見交換も相次ぎ、盛況のうちに散会しました。

比較展示(この画像ではわかりませんねw) 「桜」(仮題)
左がアーカイバルピグメントプリント、右がコロタイプ。いずれも和紙にプリントされており、前者はきら引きのような光沢のある局紙、後者は黄色味のある越前の手漉き雁皮紙
コロタイプは、古い絵画や文書、歴史的資料の精緻な「複製」として認識されてきましたし、じっさいほとんどはそうした関連のお仕事です。が、そもそもは写真プリントのために生まれた技術。便利堂では、現代に生きる技術として、従来の表現には飽き足らないアーティストに、もっとコロタイプを利用してもらいたいと思っています。今回の試みもその一環です。荻野さんに今回の比較展示プロジェクトを振り返ってのコメントをいただきましたので、ご紹介します。(藤岡)

「部屋」(仮題)
◆
「比較展示プロジェクトを振り返って」荻野NAO之
【背景】
鈴木社長、山本工房長にはじめてお会いしたのは、京都ではなく、東京のAPIS 2012 Tokyo会場ででした。有り難いご縁でした。それからすぐ京都に戻ってきて、工房見学をさせていただきました。コロタイプの独特の存在感をヒシヒシと感じ、ぜひどこかでご一緒させていただきたいと願っておりました。
今回、KYOTOGRAPHIEのサテライトで写真展をさせていただくことになった際、これはぜひコロタイプとアーカイバルピグメントプリントの比較展示が実現できないかと思い立ち、ご一緒させていただけることになりました。
本当にありがとうございました。
比較展示を思いたった背景には以下の二点がありました。
一つには、出来上がったものを見るのではなく、自分の写真を通じて工房の職人さんたちと一緒に作り上げてゆく過程をご一緒させていただくことで、より一層コロタイプの良さや特徴が身にしみて分かるだろうということでした。
そしてもう一つは、同じ写真での比較をすることでこそ、それぞれの技法の特徴が浮き彫りにされて分かるだろうという思いがありました。これは、普段アーカイバルピグメントプリントのための用紙テストを同じ写真で比較していて実感したことでした。
【コロタイプ制作を経ての感想】
全体を通して感じたことは沢山あって短くは記せないのですが、ごくわずかに絞ってお伝えしますと・・・
まず制作プロセスの部分では、とにかく何を置いても職人さんの広大な範囲に渡るこだわりに接し、想像以上の表現の可能性について視野が開けたこと、これが大きな歓びでした。
写真のラボやプリンターにプリントを頼む場合でも、現像液や印画紙の種類についての豊富な知識と経験値によるアドバイスはいただけますが、ここでは、和紙ひとつにしてもそれぞれ異なった産地からそれぞれの紙の特徴を理解された上で、紙をすくところから依頼されています。
そして、インキ一つとっても市販のものは存在せず、どれも便利堂さんのためだけに調合されたインキを依頼のもと用意されています。紙にしろインキにしろ、ありものの取捨選択をされているのではなく、一つ一つ意図を持って、過去からの経験の蓄積を持って、用意されているわけなのです。
その分だけ素材に対する理解は深く、途中の試し刷りを拝見しながら素材のお話を伺いつつ、こちらの表現意図を組んでいただき、最終的なコロタイプの作品へと結像して下さいました。頭の中にあったイメージが、職人さんたちと素材の性質が絡み合って、蜃気楼が定着させるようにして現れていった感触は、今まで他で感じたことの無い表現に向かう不思議な感覚でした。
そしてついに出来上がったコロタイプは、想像を超えて深みを持ち、異様なものの存在感を漂わせていました。
驚いたことに、刷り上がりから1週間、2週間と時を経て、深みはいよいよ増していきました。あるお坊さんが、納品されたコロタイプ複製を毎年見られて、「一年一年深みが増してゆく」と仰ったと伺ったことがありましたが、そのことを目の前で実感いたしました。
デジタルカメラの時代になっても、アナログのコロタイプという表現方法が可能性の中にあるということは、本当にありがたいことだと改めて今回実感させていただきました。
どうもありがとうございました。
【比較展示での反応】
多くの方々が、熱心に比較されているコロタイプとアーカイバルピグメントプリントとキョロキョロしながら見比べていかれました。これは思った以上にみなさんがみなさん同じ仕草で見ていかれました。あまりに似た仕草えで、ユーモラスでもあるほどでした。
そして聞いたわけでもないのに、それぞれ口々にここが違うとか、それぞれの特徴を口にされていました。
一般的に多かった反応としては、コロタイプの方が柔らかく、アーカイバルピグメントプリントの方が硬めの表現だという感想でした。はじめは、なぜ同じものを二枚並べて掛けてあるのかと聞いてこられた方も、途中から「ああ、違う違う」と頷かれながら見ていかれました。
コロタイプの存在感を気に入って下さる方が多くいらっしゃいました。そして、その後、これはどういう技法なのか?と必ず聞いてこられました。横に置いてあった便利堂さんのミニパンフレットをお渡しするのですが、やはりトークイベントほどの理解はなかなか紙面から得るのは難しいようで、トークイベントの受け売りの説明でなんとかお茶を濁す程度しか私にはできず、そこが残念なところでもありました。
【トークイベントの感想】
今回のトークイベントは本当に盛りだくさんで、実際に刷るのに使っていただいた版を持ってきていただいたり、普段は見せることの無いであろう、途中過程で紙の表面が剥離してしまった失敗作や、和紙ごとの特徴が分かるサンプル、そして実際に刷っていただいていた際の、ドキュメンタリー映像まで上映していただきました。
山本工房長の映像に合わせたトークは、本当に素敵で、時々独特のユーモアが混ざり、来場者を笑いの渦に巻き込みつつ、コロタイプの制作現場とそのプロセスが現場を見ているかのように伝わって参りました。
コロタイプは恐らく版を作った後、唯一、刷の段階で諧調などをコントロールできる手法だというお話でしたが、実際の重たいガラス上のゼラチン版をもとに、どこの部分のゼラチンの硬さ柔らかさを、薬品を使いつつどう微調整して、最終的な写真の部分部分の諧調を出したのかなどご説明いただいたところは、特に貴重なお話だったと思います。
職人さんが指先でゼラチンの状態を感じ取り、身体でその時々の天候による温度湿度を感じ取り、いかにして刷りに導いているのかが伝わってくる素晴らしいトークイベントでした。実際に刷られて展示されているコロタイプを横に、トークを伺うことで、より一層コロタイプの深さと面白さ、可能性の大きさを実感させていただくことができたと感じています。
本当にありがとうございました。
◆
今回制作した荻野NAO之「太秦」よりコロタイププリント2点(仮題「桜」・「部屋」)は、各エディション20部、注文販売しております(すこしお時間はいただきます)。本紙(ブックマット装)65,000円、額入80,000円(各税別)です。
京都初の国際写真フェスティバル:京都グラフィー開催
「《今昔写真》クリスチャン・ポラックコレクション」にてコロタイプ展示
虎屋京都ギャラリー

「クリスチャン・ポラックコレクション」よりコロタイプによるリプロダクション(部分)
4月13日~5月6日まで、京都で初の国際写真フェスティバル「KYOTOGRAPHIE 京都グラフィー」が開催されました。京都市内のお寺や町屋など12か所が会場となって、写真芸術と「歴史都市・京都」の融合をテーマに、京都の伝統工芸とのコラボレーションを展開しているのが特色です。
⇒関連記事:京都グラフィー創設者/ディレクター「ルシール・レイボーズ氏・仲西祐介氏インタビュー」

便利堂もこのフェスティバルに協力会社として参加し、コロタイプという「伝統技術」と写真というテーマでいくつかのイベントに関わりました。まず京都グラフィーとしては、虎屋京都ギャラリーで開催されました「《今昔写真》クリスチャン・ポラックコレクション」の展示作品12点について、オリジナルプリントからコロタイプでリプロダクションしたプリントを提供しました。展示内容の詳細を担当の丹村さんから紹介してもらいます。

京都グラフィー担当の丹村です。
●《今昔写真》クリスチャン・ポラックコレクション (於 虎屋京都ギャラリー)
市内12会場の一つ、虎屋京都ギャラリーでは、日仏外交・交流史研究家であるクリスチャン・ポラック氏が収集した貴重なコレクションの中から、日本初公開の幕末~明治期の古写真が展示されました。

虎屋京都ギャラリーでの展示風景(写真提供:京都グラフィー事務局)
会場では、日本の文化・風物を映したアンブロタイプと呼ばれるガラス湿版や手彩色で着色された印画が展示されました。その中で、明治期に日本を旅したフランス人の革張りの“Album rouge(赤いアルバム)”に収められた古写真から、オリジナルを拡大してリプロダクションしたコロタイププリントを制作しました。

原本は大変貴重なもので、長期の展示は憚られますが、コロタイプで複製することにより多くの方にご覧いただくことが出来ます。また、アルバムの中に貼りこまれた写真ですので、複製ならば展示されたページ以外の作品も見ていただくことができます。そして、今回は約A3サイズの大きなフォーマットに拡大してプリントしましたので、手のひらサイズの原本では観察が難しい微細な部分まで見て取ることが可能となりました。

展示作品12点のうち4点については、オリジナルに手彩色が施されていましたので、それも再現し、1点1点手作業で彩色を行いました。プリントには雁皮紙を使いました。そのなめらかさと光沢、そして深みのあるコロタイプの墨色によって表現された日本女性の黒髪の艶やかさ…コロタイプならでは魅力を、これまでコロタイプや便利堂とご縁のなかった方々にも楽しんでいただける機会となりました。
![_OHS4250[1]](https://blog-imgs-62-origin.fc2.com/t/a/k/takumisuzuki123/20130514184348316.jpg)
![_OHS4252[1]](https://blog-imgs-62-origin.fc2.com/t/a/k/takumisuzuki123/2013051418435018b.jpg)
ポラック氏と、キュレーションをされた日本写真の研究者であるクロード・エステーブ氏は、日本の古写真に深い愛情を注がれてきたお二人です。思入れのある作品を日本初公開する際に、コロタイププリントという形を選らんでくださったこと、また展示品をご覧になって「文化遺産保存に適した技術である」と仰ってくださったことに深く感謝申し上げます。エステーブ氏は、京都グラフィーの公式カタログに「コロジオンから便利堂のコロタイプ印刷まで」と題した一文を寄稿していただいています。

京都グラフィー公式カタログ
KYOTOGRAPHIEにお声をかけてくださった主催の仲西祐介氏とルシール・レイボーズ氏、クリスティ―ヌ・シベール氏、そして今回大変お世話になりました虎屋ギャラリー様、ありがとうございました。
⇒関連記事《Societe Perrier》「クリスチャン・ポラックコレクション at 虎屋 京都ギャラリー」
虎屋京都ギャラリー

「クリスチャン・ポラックコレクション」よりコロタイプによるリプロダクション(部分)
4月13日~5月6日まで、京都で初の国際写真フェスティバル「KYOTOGRAPHIE 京都グラフィー」が開催されました。京都市内のお寺や町屋など12か所が会場となって、写真芸術と「歴史都市・京都」の融合をテーマに、京都の伝統工芸とのコラボレーションを展開しているのが特色です。
⇒関連記事:京都グラフィー創設者/ディレクター「ルシール・レイボーズ氏・仲西祐介氏インタビュー」

便利堂もこのフェスティバルに協力会社として参加し、コロタイプという「伝統技術」と写真というテーマでいくつかのイベントに関わりました。まず京都グラフィーとしては、虎屋京都ギャラリーで開催されました「《今昔写真》クリスチャン・ポラックコレクション」の展示作品12点について、オリジナルプリントからコロタイプでリプロダクションしたプリントを提供しました。展示内容の詳細を担当の丹村さんから紹介してもらいます。

京都グラフィー担当の丹村です。
●《今昔写真》クリスチャン・ポラックコレクション (於 虎屋京都ギャラリー)
市内12会場の一つ、虎屋京都ギャラリーでは、日仏外交・交流史研究家であるクリスチャン・ポラック氏が収集した貴重なコレクションの中から、日本初公開の幕末~明治期の古写真が展示されました。

虎屋京都ギャラリーでの展示風景(写真提供:京都グラフィー事務局)
会場では、日本の文化・風物を映したアンブロタイプと呼ばれるガラス湿版や手彩色で着色された印画が展示されました。その中で、明治期に日本を旅したフランス人の革張りの“Album rouge(赤いアルバム)”に収められた古写真から、オリジナルを拡大してリプロダクションしたコロタイププリントを制作しました。

原本は大変貴重なもので、長期の展示は憚られますが、コロタイプで複製することにより多くの方にご覧いただくことが出来ます。また、アルバムの中に貼りこまれた写真ですので、複製ならば展示されたページ以外の作品も見ていただくことができます。そして、今回は約A3サイズの大きなフォーマットに拡大してプリントしましたので、手のひらサイズの原本では観察が難しい微細な部分まで見て取ることが可能となりました。

展示作品12点のうち4点については、オリジナルに手彩色が施されていましたので、それも再現し、1点1点手作業で彩色を行いました。プリントには雁皮紙を使いました。そのなめらかさと光沢、そして深みのあるコロタイプの墨色によって表現された日本女性の黒髪の艶やかさ…コロタイプならでは魅力を、これまでコロタイプや便利堂とご縁のなかった方々にも楽しんでいただける機会となりました。
![_OHS4250[1]](https://blog-imgs-62-origin.fc2.com/t/a/k/takumisuzuki123/20130514184348316.jpg)
![_OHS4252[1]](https://blog-imgs-62-origin.fc2.com/t/a/k/takumisuzuki123/2013051418435018b.jpg)
ポラック氏と、キュレーションをされた日本写真の研究者であるクロード・エステーブ氏は、日本の古写真に深い愛情を注がれてきたお二人です。思入れのある作品を日本初公開する際に、コロタイププリントという形を選らんでくださったこと、また展示品をご覧になって「文化遺産保存に適した技術である」と仰ってくださったことに深く感謝申し上げます。エステーブ氏は、京都グラフィーの公式カタログに「コロジオンから便利堂のコロタイプ印刷まで」と題した一文を寄稿していただいています。

京都グラフィー公式カタログ
KYOTOGRAPHIEにお声をかけてくださった主催の仲西祐介氏とルシール・レイボーズ氏、クリスティ―ヌ・シベール氏、そして今回大変お世話になりました虎屋ギャラリー様、ありがとうございました。
⇒関連記事《Societe Perrier》「クリスチャン・ポラックコレクション at 虎屋 京都ギャラリー」