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「髙島屋美術部によるコロタイプ図録100冊」展開催中!
便利堂の展覧会図録制作の原点がここに!
2021年12月20日(月)―2022年2月4日(金)@便利堂コロタイプギャラリー

みなさんこんにちは!2021年も残すところあと一週間たらずとなりました。すっかり寒くなりましたがお元気にお過ごしでしょうか? さて、便利堂コロタイプギャラリーでは先週より新しい展示が始まりました。その名も「髙島屋美術部によるコロタイプ図録100冊」。わずか20文字のタイトルの中に興味をそそられる単語がいくつも並んでいます。本年は、髙島屋創業190周年、美術部開設110周年にあたり、それを記念して本展が企画されました。展示を担当された清さんにお話しをお聞きしました。

―――こちらはあの百貨店の髙島屋さんですか?
「その通りです。天保2(1831)年に京都で創業した髙島屋は、明治44(1911)年に美術部を開設されました。翌年には「尾竹竹坡百幅画会」が開催され、髙島屋美術部としての図録第1号『竹坡百画集』を刊行されます。これを便利堂が制作したんですよ。」
―――知りませんでした。そのころの便利堂は絵はがきが中心でしたよね?
「そうですね。便利堂では創業より書店として出版物を手掛けてきましたが、日露戦争を機に国内で絵はがきブームが起こると書店から絵はがき店へとシフトし、それにあわせて明治38(1905)年にはコロタイプ工房を設立しました。しかしこの頃はコロタイプを使った絵はがきが中心でした。ですから本格的なコロタイプ美術図録としては、この髙島屋美術部から依頼をいただいた図録シリーズがほぼ最初ということになります。」

髙島屋美術部の図録第1号『竹坡百画集』(明治45年2月11日発行)
―――どんなご縁で髙島屋さんはお声がけくださったのでしょう?
「髙島屋の美術部設立に尽力された髙島屋常務 田中信吉さんという方がいらっしゃいます。そのお兄さんと、便利堂の二代目 中村弥左衛門が中学時代の友人だったそうですよ。髙島屋では展覧会のたびに便利堂で図録を制作され、図録第1号の『竹坡百画集』以降、昭和4年までの間に約100冊にものぼる図録を便利堂が担当させていただきました。今回はその中から41冊をご紹介していますが、どれも趣向を凝らしたものばかりなんです。」

(上段左より)『百桜画集』『瀑布百景』『桜百趣』『紅葉百趣』/
『菊百題』『双幅帖』『画絶』『掃心図画』/『不盡山画集』『成園画集』『関雪先生癸亥画集』『米寿墨戯』
―――髙島屋さんが趣向を凝らすとなると、相当贅沢な作りだったことがうかがえます。
「図録第1号は帙入の和本、2号の『百桜画集』は洋本の体裁で、それ以降も大和綴や枚葉(まいよう)の帙入(ちついり)など、仕様やサイズはバラエティに富んでいます。田中信吉さんは「便利堂の前の社長は兄の中学時代友達でして商売をはなれて骨を折って作ってくれました」とおっしゃっています。きっといい関係だったんでしょうね。髙島屋からその図録を各地のお得意様へ送ると、遠方からも「この絵がほしい」と注文が来たそうです。こうした反応があったからこそ、100冊もの図録を作ることができたんだと思います。」

―――ずらりと図録が並んだ様子は壮観ですね! どれも上質なのがよくわかります。当時、これを手にされた方はきっとわくわくされたでしょうね。中を見てもいいですか?
「ぜひ手に取ってごらんください。コロタイプは100年印刷といわれる耐久性にすぐれた印刷技術です。そのため表紙の紙の変色などはあるものの、図録に納められた書や絵画は当時のまま瑞々しい姿をとどめています。ごらんいただくと、紙やサイズ、和綴じの仕立て、手触りなど、こだわりぬいて作られていることがおわかりいただけるはずです。」
―――髙島屋さんとのお仕事は、便利堂が大切にしている技術のひとつ「本づくり」の礎だったんですね。
「美術印刷、美術書制作の便利堂が確立されるきっかけは髙島屋さんからいただき、このシリーズによって育ったと言ってよいかもしれません。明治から昭和まで、髙島屋美術部の図録は便利堂が一手に引き受けていました。その間、便利堂にしかできないことを追求し、その後は次第に美術館や博物館の図録制作へとシフトしていきます。今回の展示では図録とともに様々な資料を通してその歩みをぜひご覧いただきたいですね。」

髙島屋と便利堂、ともゆかりの深い富岡鉄斎(肉筆)と竹内栖鳳(木版)の作品も展示
―――美術がお好きな方はもちろん、古書にご興味をお持ちの方など、この展示はいろんな角度から楽しむことができそうです。最後にブログを読んでいただいているみなさまへメッセージをお願いいたします。
「髙島屋では美術部開設以来20年弱の期間に、便利堂のほか、他社と制作したものもあわせると150冊近い図録を刊行され続けました。いったいどれほどの熱意をこの取り組みに注がれてきたかが数字から伝わってきます。当時の髙島屋は若いころの竹内栖鳳が意匠部に勤務するほか、富岡鉄斎を鑑賞家へ広く紹介するなど京都の画家たちにとってのいわばパトロン的立場にあったそうです。一方で便利堂でも出版する雑誌の表紙絵で、鉄斎や栖鳳と関わりをもっています。そうした背景をふまえて展示をご覧いただくとよりお楽しみいただけるかもしれません。髙島屋は今年、創業190周年、美術部は開設から110周年を迎えられました。今回はその歩みをご紹介するとともに、美術図録の便利堂が確立されるまでの道のりもお伝えできる展示になっています。たずさわる人々の美術を大切に思う気持ちが形となった「美術図録」をぜひお楽しみください。」

明治44年に便利堂が制作した《勅題松上鶴百名家絵葉書》も展示します
―――年内は明日28日まで、年明けは5日から開廊しています。ぜひ皆様のお越しをお待ちしています。
髙島屋美術開設110周年記念
「髙島屋美術部によるコロタイプ図録100冊」展
会期:2021年12月20日(月)―2022年2月4日(金)
時間:10時-17時
休廊:土日祝日・12/29-1/4・全日12:00-13:00はお休みいたします。
会場:便利堂コロタイプギャラリー
協力:髙島屋資料館
2021年12月20日(月)―2022年2月4日(金)@便利堂コロタイプギャラリー

みなさんこんにちは!2021年も残すところあと一週間たらずとなりました。すっかり寒くなりましたがお元気にお過ごしでしょうか? さて、便利堂コロタイプギャラリーでは先週より新しい展示が始まりました。その名も「髙島屋美術部によるコロタイプ図録100冊」。わずか20文字のタイトルの中に興味をそそられる単語がいくつも並んでいます。本年は、髙島屋創業190周年、美術部開設110周年にあたり、それを記念して本展が企画されました。展示を担当された清さんにお話しをお聞きしました。

―――こちらはあの百貨店の髙島屋さんですか?
「その通りです。天保2(1831)年に京都で創業した髙島屋は、明治44(1911)年に美術部を開設されました。翌年には「尾竹竹坡百幅画会」が開催され、髙島屋美術部としての図録第1号『竹坡百画集』を刊行されます。これを便利堂が制作したんですよ。」
―――知りませんでした。そのころの便利堂は絵はがきが中心でしたよね?
「そうですね。便利堂では創業より書店として出版物を手掛けてきましたが、日露戦争を機に国内で絵はがきブームが起こると書店から絵はがき店へとシフトし、それにあわせて明治38(1905)年にはコロタイプ工房を設立しました。しかしこの頃はコロタイプを使った絵はがきが中心でした。ですから本格的なコロタイプ美術図録としては、この髙島屋美術部から依頼をいただいた図録シリーズがほぼ最初ということになります。」

髙島屋美術部の図録第1号『竹坡百画集』(明治45年2月11日発行)
―――どんなご縁で髙島屋さんはお声がけくださったのでしょう?
「髙島屋の美術部設立に尽力された髙島屋常務 田中信吉さんという方がいらっしゃいます。そのお兄さんと、便利堂の二代目 中村弥左衛門が中学時代の友人だったそうですよ。髙島屋では展覧会のたびに便利堂で図録を制作され、図録第1号の『竹坡百画集』以降、昭和4年までの間に約100冊にものぼる図録を便利堂が担当させていただきました。今回はその中から41冊をご紹介していますが、どれも趣向を凝らしたものばかりなんです。」

(上段左より)『百桜画集』『瀑布百景』『桜百趣』『紅葉百趣』/
『菊百題』『双幅帖』『画絶』『掃心図画』/『不盡山画集』『成園画集』『関雪先生癸亥画集』『米寿墨戯』
―――髙島屋さんが趣向を凝らすとなると、相当贅沢な作りだったことがうかがえます。
「図録第1号は帙入の和本、2号の『百桜画集』は洋本の体裁で、それ以降も大和綴や枚葉(まいよう)の帙入(ちついり)など、仕様やサイズはバラエティに富んでいます。田中信吉さんは「便利堂の前の社長は兄の中学時代友達でして商売をはなれて骨を折って作ってくれました」とおっしゃっています。きっといい関係だったんでしょうね。髙島屋からその図録を各地のお得意様へ送ると、遠方からも「この絵がほしい」と注文が来たそうです。こうした反応があったからこそ、100冊もの図録を作ることができたんだと思います。」

―――ずらりと図録が並んだ様子は壮観ですね! どれも上質なのがよくわかります。当時、これを手にされた方はきっとわくわくされたでしょうね。中を見てもいいですか?
「ぜひ手に取ってごらんください。コロタイプは100年印刷といわれる耐久性にすぐれた印刷技術です。そのため表紙の紙の変色などはあるものの、図録に納められた書や絵画は当時のまま瑞々しい姿をとどめています。ごらんいただくと、紙やサイズ、和綴じの仕立て、手触りなど、こだわりぬいて作られていることがおわかりいただけるはずです。」
―――髙島屋さんとのお仕事は、便利堂が大切にしている技術のひとつ「本づくり」の礎だったんですね。
「美術印刷、美術書制作の便利堂が確立されるきっかけは髙島屋さんからいただき、このシリーズによって育ったと言ってよいかもしれません。明治から昭和まで、髙島屋美術部の図録は便利堂が一手に引き受けていました。その間、便利堂にしかできないことを追求し、その後は次第に美術館や博物館の図録制作へとシフトしていきます。今回の展示では図録とともに様々な資料を通してその歩みをぜひご覧いただきたいですね。」

髙島屋と便利堂、ともゆかりの深い富岡鉄斎(肉筆)と竹内栖鳳(木版)の作品も展示
―――美術がお好きな方はもちろん、古書にご興味をお持ちの方など、この展示はいろんな角度から楽しむことができそうです。最後にブログを読んでいただいているみなさまへメッセージをお願いいたします。
「髙島屋では美術部開設以来20年弱の期間に、便利堂のほか、他社と制作したものもあわせると150冊近い図録を刊行され続けました。いったいどれほどの熱意をこの取り組みに注がれてきたかが数字から伝わってきます。当時の髙島屋は若いころの竹内栖鳳が意匠部に勤務するほか、富岡鉄斎を鑑賞家へ広く紹介するなど京都の画家たちにとってのいわばパトロン的立場にあったそうです。一方で便利堂でも出版する雑誌の表紙絵で、鉄斎や栖鳳と関わりをもっています。そうした背景をふまえて展示をご覧いただくとよりお楽しみいただけるかもしれません。髙島屋は今年、創業190周年、美術部は開設から110周年を迎えられました。今回はその歩みをご紹介するとともに、美術図録の便利堂が確立されるまでの道のりもお伝えできる展示になっています。たずさわる人々の美術を大切に思う気持ちが形となった「美術図録」をぜひお楽しみください。」

明治44年に便利堂が制作した《勅題松上鶴百名家絵葉書》も展示します
―――年内は明日28日まで、年明けは5日から開廊しています。ぜひ皆様のお越しをお待ちしています。
髙島屋美術開設110周年記念
「髙島屋美術部によるコロタイプ図録100冊」展
会期:2021年12月20日(月)―2022年2月4日(金)
時間:10時-17時
休廊:土日祝日・12/29-1/4・全日12:00-13:00はお休みいたします。
会場:便利堂コロタイプギャラリー
協力:髙島屋資料館