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「便利堂の絵葉書からみるうらおもて」展はじまりました!
開催記念イベント「絵葉書交換会」も! 参加お待ちしています!
会期:2022年2月13日(日)―2022年4月1日(金)@便利堂コロタイプギャラリー

みなさんこんにちは! この冬、京都には何度も雪が積もりました。まだまだ寒さは厳しいものの、日差しには少しずつですが春の気配が感じられます。そんな中、2022年ギャラリー展 第一期では「便利堂の絵葉書からみるうらおもて」展と題して、便利堂の「顔」ともいえる絵葉書を取り上げました。100年の時を感じさせない絵葉書は、一枚一枚がまるで時代を映す鏡のようです。展示を担当された清さんにお話しをお聞きしました。

―――うらおもてとは絵葉書ならではのタイトルです。
「近頃は年賀状を書かない人も増えていると聞きます。展示をするにあたり絵葉書について考えてみると、葉書と距離がある人たちは、そもそも葉書に表と裏があることを知っているのかな?と思ったんです。もしかすると絵が描いてある側を表と思うのかもしれませんよね。けれども絵葉書ができていく歴史を振り返れば、どちらが表面なのかがわかります。絵葉書というものの裏には長い歴史があるんですよ。」
―――それがこのタイトルの出発点なんですね。
「もうひとつ「一枚の紙にも裏表」ということわざがあります。これは世の中すべての物事には裏表があって、内実は複雑であることをたとえた言葉です。裏を見ることで表が違って見えることがあると思います。たとえば便利堂は「絵葉書の便利堂」と呼んでいただいていますが、そう呼ばれるに至る舞台裏が確かにあるんです。今回は「絵葉書ブームの背景」、「絵葉書の便利堂とその裏側」、「現代の絵葉書と裏側の人々」、この3つをテーマとして展示します。」

「時事漫画 非美術画葉書 第1~4輯」 鹿子木孟郎 明治38年発行
日露戦争をテーマにポンチ(風刺漫画)風に描いた絵はがき
―――絵葉書をいろんな角度から味わえそうです。内容について聞かせてください。
「昔、絵葉書には一大ブームがありました。1904(明治37)年の日露戦争で戦況を伝える絵葉書が発行されると人々はこぞって買い求めました。それは手に入れようとして命を落とした人もいるほどの熱狂的なブームだったそうです。絵葉書がメディアの役割を担っていたんですね。展示ではそんなブームの裏側にも迫ります。」
―――絵葉書ブームの裏と表、どちらも興味深いです。便利堂が絵葉書に乗り出したのもその頃でしょうか?
「絵葉書の歴史は便利堂の歴史でもあります。1887(明治20)年、首都が東京に移り、京都の力が変化していく時代において、それまで錫屋を営んでいた中村家の次男・弥二郎が何か新しいことを始めようと立ち上げたのが便利堂でした。当初、書店などを営んでいた便利堂ですが、絵葉書ブームが来る前、1902(明治35)年の段階で初めての絵葉書「帰雁来燕」を発売しています。今回展示していますがデザインがすばらしいんですよ。」

上:「帰雁来燕」 田中美風 明治35年 下:「絵はがき 不如帰」 明治37年
―――素敵ですね! これが100年以上も前のものとは信じられません。ここから絵葉書の便利堂として…?
「いえいえ、それはまだ先のお話しで、絵葉書第二弾を出すのはここから2年も後のことです。この頃、便利堂では初めての代替わりがありました。初代 弥二郎は東京で有楽社という出版社を立ち上げるため、便利堂を長男・中村弥左衛門に引き継ぎました。二代目となった弥左衛門は当初、絵葉書ではなく京都の風物の写真集などの出版を好んでやっていたようです。これは想像ですが、弥二郎に比べて弥左衛門は生真面目で慎重な人で、新しいものであった絵葉書ではなく、それまで続けていた書店や出版業を重視したのかもしれませんね。しかし、先に有楽社で絵葉書を成功させていた弥二郎の企画で、便利堂絵葉書第二弾となる『不如帰』を1904(明治37)年に共同で制作すると、手ごたえを感じたのか、その後多くの絵葉書を手掛けるようになり、翌明治38年にはコロタイプ工房を社内に開設し書店から絵葉書店へとシフトし始めます。」

「京名所百景」 明治38年~ 数百種類にわたる京都の名所写真がコロタイプされた当時のロングセラー絵はがき
―――ついにコロタイプが便利堂へやってきましたね。
「この移り変わりの時期は、振り返ってみると便利堂にとって非常に重要だったと思います。この時、弥左衛門が売り出した京都の名勝の写真が印刷された風景絵葉書「京名勝百景」は爆発的に売れました。それまでは弥二郎色が強い絵葉書が中心でしたが、ようやく弥左衛門が自分の形を見つけた。「絵葉書の便利堂」と呼ばれ始めたのは、この便利堂初めての代替わりのタイミングだったんです。」
―――絵葉書の向こうにドラマが浮かび上がってきますね。
「まさしく絵葉書ブームだったことがよくわかるのが、1905(明治38)年、大阪毎日新聞が一般の人に「絵を描いて応募してください」と呼びかけた絵葉書の懸賞です。いわゆるコンペティションは応募総数2308組という大盛況でした。便利堂では当選者のうち8名分の絵葉書を製作販売しましたが、これもまた爆発的に売れたそうです。また、当選作品を並べる陳列会では、便利堂主催で「絵葉書交換会」が催され人気を博しました。」

『明治の京都 てのひら逍遥 便利堂美術絵はがきことはじめ』
絵はがきの歴史や便利堂の当時の絵はがきを詳しく紹介。
監修/生田 誠 1200円(税別) ISBN978-4-89273-100-6
⇒ご購入はこちら
―――「絵葉書交換会」? 楽しそうな響きですね。
「システムはこうです。宛名は空白のまま絵葉書に手紙を書き、切手を貼って提出します。受け取った交換担当者が内容の合う2枚を選び出し、それぞれに宛名を書き込んで発送する。つまり参加者には、行ったこともない場所に暮らす、知らない誰かの言葉がつづられた絵葉書が届く…というわけです。ちなみに、当時絵葉書ブームが盛り上がるなかで、この交換会が全国各地で開催されましたが、日本で初めて「絵葉書交換会」を考案したのが、誰でもない有楽社を立ち上げた弥二郎でした!」
―――さすが弥二郎さん、アイデアマンですね! 絵葉書をめいっぱい楽しんでもらいたいという気持ちが伺えます。
「実は今回の展示を記念して、便利堂ではこの「絵葉書交換会」を行います! ギャラリーをごらんいただき、本店へお越しいただいた方にはお好きな絵葉書を一枚プレゼント。交換会へご参加いただけば、お手元には見知らぬ誰かからの絵葉書が届きます。「絵葉書の便利堂」での時間を心ゆくまでお楽しみいただきたいですね。」

明治時代の絵はがきを復刻した3種
左上:「舞姿」 今尾景年、鈴木松年、竹内栖鳳、山元春挙 明治38年 (下:復刻 4枚組セット 500円(税別)⇒ご購入はこちら)
左下:「ベースボール」 佐々木望 明治38年 (下:復刻 4枚組セット 1,143円(税別)⇒ご購入はこちら)
右:復刻版 京名所百景 (便利堂本店でのみ販売)
―――見ず知らずの人と繋がる時代、絵葉書を通じてというところが新鮮ですね。みなさまぜひご参加ください! そういえば便利堂の絵葉書には他にはない厚みがありますね。
「これは、便利堂が絵葉書の図版自体を「図録」として考えているからなんです。写真の色や質感にもこだわりぬいた、図録にも負けないくらいの品質なんですよ。」
―――だからこそ、昔も今も「絵葉書の」とお声がけいただくんですね。
「さらに便利堂ではカラーコロタイプの絵葉書も制作しています。絵葉書を企画する人間だけではなく、職人もまた、どこにも負けない絵葉書を作ろうとしています。一枚の絵葉書にはいろんな人の思いや熱意がぎゅっと詰め込まれているんです。」

明治・大正頃の作品を中心にしたコロタイプ絵はがき「季趣五題シリーズ」(1枚 350円(税別)⇒ご購入はこちら)
―――絵葉書の裏と表はどちらから見ても面白いものですね。知らないことばかりでした。
「今回の展示を通して、絵葉書にはいろんな歴史があること、そして今もなお、たくさんの人が関わって作っていることを知っていただけたらいいなと思います。それを知った上で絵葉書を見てみればきっと今までとは違う見え方がするんじゃないでしょうか。ご覧いただいた方に、絵葉書を誰かのために選んで送ってみようかな、という気持ちになってもらえたらうれしいですね。」

⇒便利堂の絵はがきに関する過去記事はこちら
◆
便利堂の絵葉書からみる「うらおもて」展
会期:2022年2月13日(日)~2022年4月1日(金)
時間:10:00-17:00 休廊日:土日祝日 ・全日12:00-13:00
※2/13(日)2/19(土) 2/20(日) Design Week Kyoto 2022参加のためOPEN
入場:無料
会場:便利堂コロタイプギャラリー(京都市中京区新町通竹屋町下ル弁財天町 302
会期:2022年2月13日(日)―2022年4月1日(金)@便利堂コロタイプギャラリー

みなさんこんにちは! この冬、京都には何度も雪が積もりました。まだまだ寒さは厳しいものの、日差しには少しずつですが春の気配が感じられます。そんな中、2022年ギャラリー展 第一期では「便利堂の絵葉書からみるうらおもて」展と題して、便利堂の「顔」ともいえる絵葉書を取り上げました。100年の時を感じさせない絵葉書は、一枚一枚がまるで時代を映す鏡のようです。展示を担当された清さんにお話しをお聞きしました。

―――うらおもてとは絵葉書ならではのタイトルです。
「近頃は年賀状を書かない人も増えていると聞きます。展示をするにあたり絵葉書について考えてみると、葉書と距離がある人たちは、そもそも葉書に表と裏があることを知っているのかな?と思ったんです。もしかすると絵が描いてある側を表と思うのかもしれませんよね。けれども絵葉書ができていく歴史を振り返れば、どちらが表面なのかがわかります。絵葉書というものの裏には長い歴史があるんですよ。」
―――それがこのタイトルの出発点なんですね。
「もうひとつ「一枚の紙にも裏表」ということわざがあります。これは世の中すべての物事には裏表があって、内実は複雑であることをたとえた言葉です。裏を見ることで表が違って見えることがあると思います。たとえば便利堂は「絵葉書の便利堂」と呼んでいただいていますが、そう呼ばれるに至る舞台裏が確かにあるんです。今回は「絵葉書ブームの背景」、「絵葉書の便利堂とその裏側」、「現代の絵葉書と裏側の人々」、この3つをテーマとして展示します。」

「時事漫画 非美術画葉書 第1~4輯」 鹿子木孟郎 明治38年発行
日露戦争をテーマにポンチ(風刺漫画)風に描いた絵はがき
―――絵葉書をいろんな角度から味わえそうです。内容について聞かせてください。
「昔、絵葉書には一大ブームがありました。1904(明治37)年の日露戦争で戦況を伝える絵葉書が発行されると人々はこぞって買い求めました。それは手に入れようとして命を落とした人もいるほどの熱狂的なブームだったそうです。絵葉書がメディアの役割を担っていたんですね。展示ではそんなブームの裏側にも迫ります。」
―――絵葉書ブームの裏と表、どちらも興味深いです。便利堂が絵葉書に乗り出したのもその頃でしょうか?
「絵葉書の歴史は便利堂の歴史でもあります。1887(明治20)年、首都が東京に移り、京都の力が変化していく時代において、それまで錫屋を営んでいた中村家の次男・弥二郎が何か新しいことを始めようと立ち上げたのが便利堂でした。当初、書店などを営んでいた便利堂ですが、絵葉書ブームが来る前、1902(明治35)年の段階で初めての絵葉書「帰雁来燕」を発売しています。今回展示していますがデザインがすばらしいんですよ。」

上:「帰雁来燕」 田中美風 明治35年 下:「絵はがき 不如帰」 明治37年
―――素敵ですね! これが100年以上も前のものとは信じられません。ここから絵葉書の便利堂として…?
「いえいえ、それはまだ先のお話しで、絵葉書第二弾を出すのはここから2年も後のことです。この頃、便利堂では初めての代替わりがありました。初代 弥二郎は東京で有楽社という出版社を立ち上げるため、便利堂を長男・中村弥左衛門に引き継ぎました。二代目となった弥左衛門は当初、絵葉書ではなく京都の風物の写真集などの出版を好んでやっていたようです。これは想像ですが、弥二郎に比べて弥左衛門は生真面目で慎重な人で、新しいものであった絵葉書ではなく、それまで続けていた書店や出版業を重視したのかもしれませんね。しかし、先に有楽社で絵葉書を成功させていた弥二郎の企画で、便利堂絵葉書第二弾となる『不如帰』を1904(明治37)年に共同で制作すると、手ごたえを感じたのか、その後多くの絵葉書を手掛けるようになり、翌明治38年にはコロタイプ工房を社内に開設し書店から絵葉書店へとシフトし始めます。」

「京名所百景」 明治38年~ 数百種類にわたる京都の名所写真がコロタイプされた当時のロングセラー絵はがき
―――ついにコロタイプが便利堂へやってきましたね。
「この移り変わりの時期は、振り返ってみると便利堂にとって非常に重要だったと思います。この時、弥左衛門が売り出した京都の名勝の写真が印刷された風景絵葉書「京名勝百景」は爆発的に売れました。それまでは弥二郎色が強い絵葉書が中心でしたが、ようやく弥左衛門が自分の形を見つけた。「絵葉書の便利堂」と呼ばれ始めたのは、この便利堂初めての代替わりのタイミングだったんです。」
―――絵葉書の向こうにドラマが浮かび上がってきますね。
「まさしく絵葉書ブームだったことがよくわかるのが、1905(明治38)年、大阪毎日新聞が一般の人に「絵を描いて応募してください」と呼びかけた絵葉書の懸賞です。いわゆるコンペティションは応募総数2308組という大盛況でした。便利堂では当選者のうち8名分の絵葉書を製作販売しましたが、これもまた爆発的に売れたそうです。また、当選作品を並べる陳列会では、便利堂主催で「絵葉書交換会」が催され人気を博しました。」

『明治の京都 てのひら逍遥 便利堂美術絵はがきことはじめ』
絵はがきの歴史や便利堂の当時の絵はがきを詳しく紹介。
監修/生田 誠 1200円(税別) ISBN978-4-89273-100-6
⇒ご購入はこちら
―――「絵葉書交換会」? 楽しそうな響きですね。
「システムはこうです。宛名は空白のまま絵葉書に手紙を書き、切手を貼って提出します。受け取った交換担当者が内容の合う2枚を選び出し、それぞれに宛名を書き込んで発送する。つまり参加者には、行ったこともない場所に暮らす、知らない誰かの言葉がつづられた絵葉書が届く…というわけです。ちなみに、当時絵葉書ブームが盛り上がるなかで、この交換会が全国各地で開催されましたが、日本で初めて「絵葉書交換会」を考案したのが、誰でもない有楽社を立ち上げた弥二郎でした!」
―――さすが弥二郎さん、アイデアマンですね! 絵葉書をめいっぱい楽しんでもらいたいという気持ちが伺えます。
「実は今回の展示を記念して、便利堂ではこの「絵葉書交換会」を行います! ギャラリーをごらんいただき、本店へお越しいただいた方にはお好きな絵葉書を一枚プレゼント。交換会へご参加いただけば、お手元には見知らぬ誰かからの絵葉書が届きます。「絵葉書の便利堂」での時間を心ゆくまでお楽しみいただきたいですね。」

明治時代の絵はがきを復刻した3種
左上:「舞姿」 今尾景年、鈴木松年、竹内栖鳳、山元春挙 明治38年 (下:復刻 4枚組セット 500円(税別)⇒ご購入はこちら)
左下:「ベースボール」 佐々木望 明治38年 (下:復刻 4枚組セット 1,143円(税別)⇒ご購入はこちら)
右:復刻版 京名所百景 (便利堂本店でのみ販売)
―――見ず知らずの人と繋がる時代、絵葉書を通じてというところが新鮮ですね。みなさまぜひご参加ください! そういえば便利堂の絵葉書には他にはない厚みがありますね。
「これは、便利堂が絵葉書の図版自体を「図録」として考えているからなんです。写真の色や質感にもこだわりぬいた、図録にも負けないくらいの品質なんですよ。」
―――だからこそ、昔も今も「絵葉書の」とお声がけいただくんですね。
「さらに便利堂ではカラーコロタイプの絵葉書も制作しています。絵葉書を企画する人間だけではなく、職人もまた、どこにも負けない絵葉書を作ろうとしています。一枚の絵葉書にはいろんな人の思いや熱意がぎゅっと詰め込まれているんです。」

明治・大正頃の作品を中心にしたコロタイプ絵はがき「季趣五題シリーズ」(1枚 350円(税別)⇒ご購入はこちら)
―――絵葉書の裏と表はどちらから見ても面白いものですね。知らないことばかりでした。
「今回の展示を通して、絵葉書にはいろんな歴史があること、そして今もなお、たくさんの人が関わって作っていることを知っていただけたらいいなと思います。それを知った上で絵葉書を見てみればきっと今までとは違う見え方がするんじゃないでしょうか。ご覧いただいた方に、絵葉書を誰かのために選んで送ってみようかな、という気持ちになってもらえたらうれしいですね。」

⇒便利堂の絵はがきに関する過去記事はこちら
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便利堂の絵葉書からみる「うらおもて」展
会期:2022年2月13日(日)~2022年4月1日(金)
時間:10:00-17:00 休廊日:土日祝日 ・全日12:00-13:00
※2/13(日)2/19(土) 2/20(日) Design Week Kyoto 2022参加のためOPEN
入場:無料
会場:便利堂コロタイプギャラリー(京都市中京区新町通竹屋町下ル弁財天町 302