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法隆寺金堂壁画ガラス乾板保存プロジェクト①
昭和10年撮影のガラス乾板調査開始!

予備調査(平成24年2月27・28日実施)
【プロジェクト設立への経緯】
昨年6月に岩波書店から刊行された『原寸大コロタイプ印刷による 法隆寺金堂壁画選』の制作作業にあたり、原寸大乾板一式を約40年ぶりに法隆寺収蔵庫より借り出しました。その際、法隆寺様からこの乾板の保存についてどうしていったらよいかというお話もでていました。制作作業を終え、原板のご返却をしなければなりませんが、この40年前の保管状態のまま再び収蔵庫に戻してしまって果たしてよいものかという思いがつのることとなりました。この間一度も移動や開封されることがなかったことから、今回納めてしまえばまた相当長期間にわたり今の状態で留め置かれることは必至と思われるため、この機に何らかの出来うる限りの保存策を施すべきと考えて今回のプロジェクトを立ち上げるに至りました。⇒法隆寺金堂壁画と原寸大ガラス乾板について詳しくはこちら

ガラス乾板を法隆寺収蔵庫で40年ぶりに開封し確認したときのもよう
【プロジェクトの意義と目的】
昭和24年の法隆寺金堂壁画の焼損は、現行の文化財保護法制定の契機となった重大な出来事です。そして昭和10年に壁画を記録した便利堂撮影の原寸大分割原板をはじめとする一連のガラス乾板は、その焼損前の現物の姿をうかがい知ることができる「唯一無二」の貴重な文化的資料です。
しかしながら、これらは撮影からすでに80年近くが経過し、経年変化や保存環境による原板の劣化が非常に危惧される状況となっています。近年、写真や映画のフィルムを近代遺産・文化財として保存しようという動きはますます活発になっていますが、この金堂壁画原板も保存し後世に遺すべき貴重な文化財であることは言を待たないでしょう。また、文化財保護の原点となったシンボルとして次世代に受け継がれることの意義は大きいと考えます。
本プロジェクトは、この「法隆寺金堂壁画焼損前記録写真(仮称)」ガラス乾板について、よりよい保存継承のあり方を検討し実施することを目指すものです。
今回は担当の小鮒さんよりプロジェクトの取組みについて報告してもらいます。題して『小鮒ノート』です。
『小鮒ノート』 その1

プロジェクト担当の小鮒です
◎予備調査での発見(平成24年2月27・28日実施)
このプロジェクトは、ご専門である金子隆一先生(東京都写真美術館専門調査員)のご指導をいただき進めています。先生からは、まず原板の詳細な調査報告書の作成が必要とのご助言をいただきました。そこで、今年2月下旬に予備調査として金子先生に実際に原板の状態をご覧いただきながら調書作成に向けて調査内容の確認作業を行いました。
普段東京にいる私は、貴重な原板を実際に目にすることができる!とドキドキしながら新幹線に乗り込みました。本社の写真工房にずらりと並ぶガラス乾板の箱を見ただけでも気分が跳ね上がりましたが、2日間で行ったこの予備調査で、たくさんの発見をすることになりました。
保存対象となりうる一連の写真資料のうち、昭和10年に撮影したものは大きく分けて次の通りです。
1)原寸大分割撮影ガラス乾板(全紙)362枚
2)4色分解撮影ガラス乾板(全紙、半切)56枚
3)赤外線撮影フィルム(全紙)13枚 *今年原版庫より発見される
原寸大分割撮影原板は、撮影ガラス乾板の膜面部分をはがした後、裏返して貼りかえた「コロタイプ原版」になっています。事前に言葉では聞いてはいたもののうまく想像できず、本社で現物を見て初めて「こういうことか」と思ったのでした。金子先生にも私の言葉で伝えていたため、先生も現物を見てびっくりされていました。「撮影原板でもあり、印刷用の原版でもある」ものは、金子先生もこれまで見たことがなく、写真印刷技術史上類例を見ないものと言って良いのではないかとのことでした。
一般的に、ガラス乾板の厚みはカメラに入る1~2mmですが、この原板は厚さ5mmのガラス板に貼りかえてあります。ガラス乾板の膜面をはがすのは、傷つけるリスクなどから基本的にはしないそうで、複版を作る際に厚いガラスに貼り付けることはあるようですが、原板そのものを貼りかえているのは非常に珍しいそうです。当時から「割れないように」という意識のもとに、永久保存を考慮した重要なものとして扱われたことが想像できるという金子先生のご意見もありました。

また、先生のお話しの中で印象に残っているのは、撮影原板の「板」と、コロタイプ原版の「版」の字を区別して使うということでした。「原板」は写真に使うための板、「原版」は印刷に使うための版と区別されますが、今回の場合は同じものを指して両方の特徴を持つものということになります。なんと名づければこのガラス乾板を指すものとなるか、これについてはもう少し考える必要がありそうです(この時は、例えば「撮影原板膜面返しコロタイプ原版-法隆寺金堂壁画原寸大-」という長くややこしい名前があがっていました)。
貼りかえる際に膜面を裏返していますが、コロタイプではネガをガラス版に焼き付けて印刷用の刷版を作るため、正像→左右反転像→正像となります。よって、コロタイプ原版は膜面側から見て正像になっている必要があるため、膜を貼りかえる際に裏返しているという特徴があります。コロタイプで印刷するからこその形となっていることが分かりました。

原板の状態は、思っていた以上に良好でした。しかしよく見ると、膜面の表面がテカテカしすぎていて銀塩の膜にしては不自然では?と金子先生のご指摘があり、弊社写真工房のカメラマンも同意見ながら、何故なのかはすぐに分からず・・・コロタイプ工房の職人に話を聞いてみると、全体にセロファンが貼り付けられていることが分かりました。コロタイプでは、製版作業を行う際に、フィルムに直接食紅を塗る等の手を加えるため、フィルムの上を一度セロファンで保護するやり方があるそうです。このセロファンは、四方をマスキングテープで留められています。「膜面裏返し」「セロファンによるカバー」「四方マスキング」を施していることが酸化を防ぐ結果となり、約40年間特別な保存環境ではなかったにも関わらず、基本的に良好な状態が保たれていると考えられます。
この予備調査をうけ、今後調査を進めるにあたり、調査内容を学術的客観的に審議し、保存方法について検討する委員会を組織することが必要と考え、有識者の先生方にご参画をお願いし調査委員会を発足しました。
◎第1回調査委員会(平成24年6月19日開催)
第1回調査委員会では、金子先生立ち会いのもと行われた事前調査の状況報告とともに、各先生方からのご意見をいただきました。様々なご意見、ご助言をいただく中で、写っている壁画の歴史資料としての価値はもちろんのこと(しかもそれが原寸大でもある)、写真技術を考えるうえでの価値、印刷技術史の中で捉えても価値のある資料であることを再認識しました。

第1回調査委員会(平成24年6月19日開催)
左手前より奥に右回りで、金子隆一先生(東京都写真美術館専門調査員)清水眞澄先生(三井記念美術館館長)鈴木嘉吉先生(本調査委員会委員長・元国立奈良文化財研究所所長)青柳正規先生(国立西洋美術館館長)有賀祥隆先生(東北大学名誉教授)
◎8月8日-9日の調査の様子
予備調査の後、調書のフォーマット作成など調査開始に向けて準備を進めてまいりましたが、いよいよ原板一枚一枚の調査を開始いたしました。1日目は金子先生に立ち会いをお願いし、調査の流れを再度確認しながら作業を進行しました。原寸大分割撮影のガラス乾板を例に取ると、大まかな作業の流れは以下のようになります。

カメラのセット
原版の状態を写真で記録するためヴューワーの上にカメラをセットします。原板をヴューワーにのせ、乳剤面とベース面をそれぞれチェックします。まずは乳剤面からイメージ(画面)の確認のため、透過光で壁画該当部分を印刷物と比較します。調書のチェック項目に従って透過光、反射光それぞれで詳細に見ていきますが、前述したように、原寸大分割撮影の原板は、撮影原板でもありコロタイプ原版でもあるという極めて稀な形から、調書の項目には特殊なものも含まれます。

採寸

採寸(厚み)
チェック項目として、寸法(縦、横、厚み)ガラス板の破損状態、イメージ部分への傷や異物の混入、シルバーミラーの程度、カビやシミの有無などともに、コロタイプ原版であるがゆえの項目として、膜面を覆うセロファンを止めているマスキングテープの裂け、及び裂け部分からの空気の入り具合のチェックが重要となります。また、セロファンで覆う作業にともなうスキージーの跡や、修正のために使用した食紅の跡が残っているかどうかなども併せてチェックしていきます。

シルバーミラー

シミ

セロファンの傷

カビ

テープの裂けによる空気入

食紅の乗っている部分(反射光)

同部分を透過光にすると画像の抜けている部分のためマスキングをしたことが分かる
この2日間では、原寸大分割撮影のガラス乾板のうち6号壁の41枚全点と、赤外線撮影の全紙フィルム12枚、4色分解撮影の全紙ガラス乾板6号壁4色分・4枚の調査を終えました。原板を傷つけないよう慎重に作業を進める中、厚みを測る際には特に集中が必要となりました。そのような中、コロタイプ原版作成時の痕跡がうかがえるのが、セロファンを貼る際のスキージーの跡ですが、6号壁の中でも中尊の阿弥陀様のお顔や、勢至菩薩様のお顔部分などは、スキージー跡がほとんどない綺麗な状態で、重要な部分には気合が入り、より丁寧な作業になるのだろうかと想像させる面白い発見もありました。
80年近く前に誕生した現物を目の前にし、この場に自分が巡り合わせたことは大変貴重なことであり、時代を越えて資料が遺るということは、当時そこに関わった人たちの思いを想像させるなど、単にものが遺るだけにとどまらないことを改めて感じました。引き続き、便利堂コロタイプ工房の職人、写真工房カメラマンを中心に作業を進めてまいります(本日時点で原寸大分割原版はほぼ調査終了いたしました)。今月には報告書としてまとめたいと思っています。
また今後は、調査作業の進行とともに、原寸大フィルムによるアナログ複写とデジタルカメラによる複写という両手法での画像保存について、ならびに原板そのものの保管方法についても検討も進めていく必要があります。調査委員会の先生方を中心にご助言、ご指導をいただきながら、最良の方法を考えていきたいと思っております。

予備調査(平成24年2月27・28日実施)
【プロジェクト設立への経緯】
昨年6月に岩波書店から刊行された『原寸大コロタイプ印刷による 法隆寺金堂壁画選』の制作作業にあたり、原寸大乾板一式を約40年ぶりに法隆寺収蔵庫より借り出しました。その際、法隆寺様からこの乾板の保存についてどうしていったらよいかというお話もでていました。制作作業を終え、原板のご返却をしなければなりませんが、この40年前の保管状態のまま再び収蔵庫に戻してしまって果たしてよいものかという思いがつのることとなりました。この間一度も移動や開封されることがなかったことから、今回納めてしまえばまた相当長期間にわたり今の状態で留め置かれることは必至と思われるため、この機に何らかの出来うる限りの保存策を施すべきと考えて今回のプロジェクトを立ち上げるに至りました。⇒法隆寺金堂壁画と原寸大ガラス乾板について詳しくはこちら

ガラス乾板を法隆寺収蔵庫で40年ぶりに開封し確認したときのもよう
【プロジェクトの意義と目的】
昭和24年の法隆寺金堂壁画の焼損は、現行の文化財保護法制定の契機となった重大な出来事です。そして昭和10年に壁画を記録した便利堂撮影の原寸大分割原板をはじめとする一連のガラス乾板は、その焼損前の現物の姿をうかがい知ることができる「唯一無二」の貴重な文化的資料です。
しかしながら、これらは撮影からすでに80年近くが経過し、経年変化や保存環境による原板の劣化が非常に危惧される状況となっています。近年、写真や映画のフィルムを近代遺産・文化財として保存しようという動きはますます活発になっていますが、この金堂壁画原板も保存し後世に遺すべき貴重な文化財であることは言を待たないでしょう。また、文化財保護の原点となったシンボルとして次世代に受け継がれることの意義は大きいと考えます。
本プロジェクトは、この「法隆寺金堂壁画焼損前記録写真(仮称)」ガラス乾板について、よりよい保存継承のあり方を検討し実施することを目指すものです。
今回は担当の小鮒さんよりプロジェクトの取組みについて報告してもらいます。題して『小鮒ノート』です。
『小鮒ノート』 その1

プロジェクト担当の小鮒です
◎予備調査での発見(平成24年2月27・28日実施)
このプロジェクトは、ご専門である金子隆一先生(東京都写真美術館専門調査員)のご指導をいただき進めています。先生からは、まず原板の詳細な調査報告書の作成が必要とのご助言をいただきました。そこで、今年2月下旬に予備調査として金子先生に実際に原板の状態をご覧いただきながら調書作成に向けて調査内容の確認作業を行いました。
普段東京にいる私は、貴重な原板を実際に目にすることができる!とドキドキしながら新幹線に乗り込みました。本社の写真工房にずらりと並ぶガラス乾板の箱を見ただけでも気分が跳ね上がりましたが、2日間で行ったこの予備調査で、たくさんの発見をすることになりました。
保存対象となりうる一連の写真資料のうち、昭和10年に撮影したものは大きく分けて次の通りです。
1)原寸大分割撮影ガラス乾板(全紙)362枚
2)4色分解撮影ガラス乾板(全紙、半切)56枚
3)赤外線撮影フィルム(全紙)13枚 *今年原版庫より発見される
原寸大分割撮影原板は、撮影ガラス乾板の膜面部分をはがした後、裏返して貼りかえた「コロタイプ原版」になっています。事前に言葉では聞いてはいたもののうまく想像できず、本社で現物を見て初めて「こういうことか」と思ったのでした。金子先生にも私の言葉で伝えていたため、先生も現物を見てびっくりされていました。「撮影原板でもあり、印刷用の原版でもある」ものは、金子先生もこれまで見たことがなく、写真印刷技術史上類例を見ないものと言って良いのではないかとのことでした。
一般的に、ガラス乾板の厚みはカメラに入る1~2mmですが、この原板は厚さ5mmのガラス板に貼りかえてあります。ガラス乾板の膜面をはがすのは、傷つけるリスクなどから基本的にはしないそうで、複版を作る際に厚いガラスに貼り付けることはあるようですが、原板そのものを貼りかえているのは非常に珍しいそうです。当時から「割れないように」という意識のもとに、永久保存を考慮した重要なものとして扱われたことが想像できるという金子先生のご意見もありました。

また、先生のお話しの中で印象に残っているのは、撮影原板の「板」と、コロタイプ原版の「版」の字を区別して使うということでした。「原板」は写真に使うための板、「原版」は印刷に使うための版と区別されますが、今回の場合は同じものを指して両方の特徴を持つものということになります。なんと名づければこのガラス乾板を指すものとなるか、これについてはもう少し考える必要がありそうです(この時は、例えば「撮影原板膜面返しコロタイプ原版-法隆寺金堂壁画原寸大-」という長くややこしい名前があがっていました)。
貼りかえる際に膜面を裏返していますが、コロタイプではネガをガラス版に焼き付けて印刷用の刷版を作るため、正像→左右反転像→正像となります。よって、コロタイプ原版は膜面側から見て正像になっている必要があるため、膜を貼りかえる際に裏返しているという特徴があります。コロタイプで印刷するからこその形となっていることが分かりました。

原板の状態は、思っていた以上に良好でした。しかしよく見ると、膜面の表面がテカテカしすぎていて銀塩の膜にしては不自然では?と金子先生のご指摘があり、弊社写真工房のカメラマンも同意見ながら、何故なのかはすぐに分からず・・・コロタイプ工房の職人に話を聞いてみると、全体にセロファンが貼り付けられていることが分かりました。コロタイプでは、製版作業を行う際に、フィルムに直接食紅を塗る等の手を加えるため、フィルムの上を一度セロファンで保護するやり方があるそうです。このセロファンは、四方をマスキングテープで留められています。「膜面裏返し」「セロファンによるカバー」「四方マスキング」を施していることが酸化を防ぐ結果となり、約40年間特別な保存環境ではなかったにも関わらず、基本的に良好な状態が保たれていると考えられます。
この予備調査をうけ、今後調査を進めるにあたり、調査内容を学術的客観的に審議し、保存方法について検討する委員会を組織することが必要と考え、有識者の先生方にご参画をお願いし調査委員会を発足しました。
◎第1回調査委員会(平成24年6月19日開催)
第1回調査委員会では、金子先生立ち会いのもと行われた事前調査の状況報告とともに、各先生方からのご意見をいただきました。様々なご意見、ご助言をいただく中で、写っている壁画の歴史資料としての価値はもちろんのこと(しかもそれが原寸大でもある)、写真技術を考えるうえでの価値、印刷技術史の中で捉えても価値のある資料であることを再認識しました。

第1回調査委員会(平成24年6月19日開催)
左手前より奥に右回りで、金子隆一先生(東京都写真美術館専門調査員)清水眞澄先生(三井記念美術館館長)鈴木嘉吉先生(本調査委員会委員長・元国立奈良文化財研究所所長)青柳正規先生(国立西洋美術館館長)有賀祥隆先生(東北大学名誉教授)
◎8月8日-9日の調査の様子
予備調査の後、調書のフォーマット作成など調査開始に向けて準備を進めてまいりましたが、いよいよ原板一枚一枚の調査を開始いたしました。1日目は金子先生に立ち会いをお願いし、調査の流れを再度確認しながら作業を進行しました。原寸大分割撮影のガラス乾板を例に取ると、大まかな作業の流れは以下のようになります。

カメラのセット
原版の状態を写真で記録するためヴューワーの上にカメラをセットします。原板をヴューワーにのせ、乳剤面とベース面をそれぞれチェックします。まずは乳剤面からイメージ(画面)の確認のため、透過光で壁画該当部分を印刷物と比較します。調書のチェック項目に従って透過光、反射光それぞれで詳細に見ていきますが、前述したように、原寸大分割撮影の原板は、撮影原板でもありコロタイプ原版でもあるという極めて稀な形から、調書の項目には特殊なものも含まれます。

採寸

採寸(厚み)
チェック項目として、寸法(縦、横、厚み)ガラス板の破損状態、イメージ部分への傷や異物の混入、シルバーミラーの程度、カビやシミの有無などともに、コロタイプ原版であるがゆえの項目として、膜面を覆うセロファンを止めているマスキングテープの裂け、及び裂け部分からの空気の入り具合のチェックが重要となります。また、セロファンで覆う作業にともなうスキージーの跡や、修正のために使用した食紅の跡が残っているかどうかなども併せてチェックしていきます。

シルバーミラー

シミ

セロファンの傷

カビ

テープの裂けによる空気入

食紅の乗っている部分(反射光)

同部分を透過光にすると画像の抜けている部分のためマスキングをしたことが分かる
この2日間では、原寸大分割撮影のガラス乾板のうち6号壁の41枚全点と、赤外線撮影の全紙フィルム12枚、4色分解撮影の全紙ガラス乾板6号壁4色分・4枚の調査を終えました。原板を傷つけないよう慎重に作業を進める中、厚みを測る際には特に集中が必要となりました。そのような中、コロタイプ原版作成時の痕跡がうかがえるのが、セロファンを貼る際のスキージーの跡ですが、6号壁の中でも中尊の阿弥陀様のお顔や、勢至菩薩様のお顔部分などは、スキージー跡がほとんどない綺麗な状態で、重要な部分には気合が入り、より丁寧な作業になるのだろうかと想像させる面白い発見もありました。
80年近く前に誕生した現物を目の前にし、この場に自分が巡り合わせたことは大変貴重なことであり、時代を越えて資料が遺るということは、当時そこに関わった人たちの思いを想像させるなど、単にものが遺るだけにとどまらないことを改めて感じました。引き続き、便利堂コロタイプ工房の職人、写真工房カメラマンを中心に作業を進めてまいります(本日時点で原寸大分割原版はほぼ調査終了いたしました)。今月には報告書としてまとめたいと思っています。
また今後は、調査作業の進行とともに、原寸大フィルムによるアナログ複写とデジタルカメラによる複写という両手法での画像保存について、ならびに原板そのものの保管方法についても検討も進めていく必要があります。調査委員会の先生方を中心にご助言、ご指導をいただきながら、最良の方法を考えていきたいと思っております。
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御拝読ありがとうございます! ガラス乾板調査のその後についてですよね? 現在、原寸大分割については調査を完了し、調査票および報告書にまとめているところです。近々にブログに報告あげさせていただきます!
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