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便利堂 美術絵はがきの歩み展

Posted by takumi suzuki on 16.2013 【今日のコロタイプ】    2 comments   0 trackback
KG+ KYOTOGRAPHIEサテライト展
明治の京都 てのひら逍遥
2013.4.23-5.5 GALERIE H2O

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会場風景

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 京都の街中、三条富小路に便利堂直営ショップ「美術はがきギャラリー京都便利堂」があります。明治の時代、この三条富小路には便利堂の店舗がありました。そのゆかりの富小路通で、便利堂が明治期に制作販売していた絵はがき約220点を紹介する『明治の京都 てのひら逍遥-便利堂 美術絵はがきの歩み』展を開催しました。会場はショップから2軒北隣のギャラリーh2o(エイチツーオー)です。この展覧会も京都グラフィーのサテライトイベント「KG+」に参加していました。店長の増尾さんに展覧会の内容を紹介してもらいます。

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ギャラリーh2oの入口 のれんをくぐり細い路地を入っていきます。

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店長の増尾です。

 明治33年、私製はがきの認可を皮切りに、各地で絵はがきの発行が盛んになります。当時は「便利堂書店」とも称して書店を開いていた便利堂も絵はがき制作を始め、斬新なアイディアと技術で多様な絵はがきを展開します。今回展示した絵はがきの中からコロタイプを中心にご紹介していきましょう(色刷のものはリトグラフないしは木版。モノクロのものはコロタイプです。手彩色で着色されたものもあります)。

【1.便利堂えはがきのはじまり】

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「帰雁来燕」 明治35年発行

 こちらは現存している便利堂製絵はがきの中でも最も古い明治35年発行の「帰雁来燕」と題された絵はがき帖で、リトグラフで印刷されています。見開きに画家・歌人である田中美風の歌と絵はがきを配した和綴本です。12枚入りの絵はがきは一枚一枚糸で四方を留められ、簡単に取り外して使用したり別のはがきに差し替えたりできるようになっており、絵はがきセットという形態も当時の京都では最先端でした。

【2.絵はがきブームと京都の画家たち】

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上より「時事漫画 非美術画葉書」、「西洋美人」と「嵐山」、「葵祭」 いずれも明治38年発行 絵:鹿子木孟郎  

非美術画葉書
「時事漫画 非美術画葉書」明治38年発行 絵:鹿子木孟郎

葵祭
「葵祭」 明治38年発行 絵:鹿子木孟郎

舞姿
「舞姿」 明治38年発行 絵:今尾景年、鈴木松年、竹内栖鳳、山元春挙 

ベースボール
「ベースボール」 絵:佐々木望 明治38年発行

松上鶴
「明治四十五年勅題松上鶴 百名家絵葉書」 明治44年発行
絵:右上より池田蕉園、冨田渓仙、神坂雪佳、左 富岡鉄斎
 

 日露戦争の頃には絵はがきブームが最高潮に達します。この頃便利堂が起用したのは京都画壇の大物、鹿子木孟郎。日露戦争の様子をポンチ絵風に描いた「時事漫画 非美術画葉書」シリーズは1~4輯まで発 表されました。著名人だけでなく、新鋭画家・写真家の育成にも絵はがきは一翼を担います。この頃絵はがきブームと共に新聞による懸賞も盛んに行われており、当選者の作品を絵はがきに仕立てて発行していました。

 コロタイプで制作された絵はがきでは、明治44年に年賀状用に企画された「明治四十五年勅題松上鶴 百名家絵葉書」があります。タイトル通り東西の著名画家100名に書き下ろしを依頼した絵はがき集で、竹内栖鳳をはじめ横山大観、冨岡鉄斎、神坂雪佳など、そうそうたるメンバーが名を連ねています。

【3.文学絵はがきと美人絵はがき】

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上より「不如帰」 明治37年発行、「浪さん」 明治38年発行 絵:上村松園、「夏子」 明治38年発行

浪さん
「浪さん」 明治38年発行 絵:上村松園

夏子
「夏子」 明治38年発行

花の京都
「花の京都」 明治38年発行 

 家庭小説と呼ばれる新聞連載の小説が流行した明治30年代にも、人気の小説を題材に数々の絵はがきが発売されました。明治38年にコロタイプで制作発行された絵はがきセット「夏子」は、大阪毎日新聞に連載されていた菊池幽芳の同名小説より、主人公夏子に扮した女性たちの写真入り絵はがきです。当時の新聞には絵葉書界空前の売行きであったと記されています。コロタイプに手彩色がされています。小説のシーンを演じる美しい女性たちを撮影したのはあの一力の女将。同年には一力をテーマにした絵はがきセットも発売されています。

【4.風景絵はがきとコロタイプ】

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無題
「京名所百景」 明治38年発行 

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「祇園の山鉾」 明治38年発行

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「雨の嵐山」明治38年 
黒川翠山や小川白楊などの新進写真家撮影による風景絵はがきも多く制作していた


 そして構図・種類・コロタイプの質、どれを取っても洗練されていた風景絵はがき「京名所百景」は実質100種類以上あり、今回の展示でも一部を紹介するに留まりましたが、まさに名所の数々が勢ぞろい。他にも嵐山や祇園祭など、京都を代表するテーマで絵はがきセットが制作されました。絵はがきの下部にタイトルが入っているデザインは、日本語と英語の表記がされており、海外からの観光客も視野に入れていた事が伺えます。

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 当時の絵はがきの定型サイズは、現在よりも一回りほど小さく、手のひらに収まる程度のものでした。展示ではコロタイプの他にもリトグラフや木版で作られた味わいのある絵はがきをご紹介しましたが、その一点一点をじっと見つめているといつの間にか明治の時代にタイムスリップした様な気分になります。来場された方は風景絵はがきの中に懐かしい思い出の片鱗を見たり、小説絵はがきの主人公に感情移入してしまったり、ポンチ(漫画)風はがきに爆笑、など様々に楽しんで頂けたようです。中にはご自身の便利堂絵はがきコレクションを寄贈して下さる方までいらっしゃいました。

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 便利堂が歩んできた絵はがきの歴史だけでなく、レトロな美しさの中に今も変わらずその精度を保つコロタイプの魅力をお伝えしたこの絵はがき展、好評のため東京での開催も予定しております。

絵はがき本
便利堂創業125周年記念出版『明治の京都 てのひら逍遥 便利堂美術絵はがきことはじめ』
展示された絵はがきを含め、明治期に便利堂が発行した絵はがき400点以上を掲載。⇒詳細はこちら


 今回の展示は、同時期に発売した書籍『明治の京都 てのひら逍遥 便利堂美術絵はがきことはじめ』にて監修頂いた絵はがき研究家の生田誠氏の所蔵するコレクションからも出品頂きました。有難うございました。

 展示は終了しましたが、上記の書籍に加え、美術はがきギャラリー京都便利堂では復刻版絵はがきを引続き販売しております。是非、この機会にお立ち寄り下さい。
・復刻版絵はがき第一弾「京名所百景」(6枚入り、コロタイプ、手彩色)税込1,200円
復刻版絵はがき第二弾「ベースボール」(4枚入り、リトグラフ)税込1,200円
復刻版絵はがき第三弾「舞姿」(4枚入り、オフセット)税込525円

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このような展示が行われていたのを全く存じあげず、見ておきたかった後悔の思いでいっぱいです。
次回、関西で展示が行われる事があるようでしたら、是非足を運びたいと思います。

『明治の京都 てのひら逍遥』購入させて頂きました。
ページをめくるごとに、興奮しながら読ませて頂きました。
2013.05.22 22:40 | URL | GARNET #vF6dOJDI [edit]
コメントありがとうございます。また書籍購入もしていただきありがとうございます! 近々東京方面では開催予定しております。また関西での開催も検討していきたいと思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。
2013.05.23 09:25 | URL | お名前 #- [edit]


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Author:takumi suzuki
【コロタイプの過去・現在・未来。創業明治20年の京都 便利堂が100年以上にわたって続けているコロタイプ工房より最新の情報をお届けします】
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